• このエントリーをはてなブックマークに追加

希蝶さん のコメント

 少し早めですが、感想を記します。

〇 ゴーマニズム宣言・第448回「森永ヒ素ミルク事件 後編」
 先にも記しましたが、やはり切ないです。もっと希望のある終わり方をしていたのか、と勝手に解釈していました。加えて、俄かに知ったこの事件について、知ったかぶりをしていたことを謝罪します。私もウィキペディアを参照することもあるのですが、そこまで読んでいなかったです
 でも、よく読むと、確かに、
「『守る会』に対して、 救済のあり方を問題視した被害者家族が『守る会』内で発言機会を奪われるという言論制限事件があったという報道がなされた。また、重症被害者の親によって『守る会』『ひかり協会』を相手取って人権救済の訴えが提起されているが、結果は申し立て棄却。さらにひかり協会や国、守る会、森永に対し損害賠償を提訴したが、ひかり協会らに非はないと棄却された。」
という文章がありました。あと、厚生労働省の職員が裁判関係の書類を一部紛失した、とも。この部分は読みましたが、相変わらず役所のすることはいい加減だ、と感じました。
 本文中にも、「岡崎哲夫」という名前は一度も登場していないです(脚注にはありますが)。そのことを不審に感じるべきでした。

 活動家が絡んで抗争が複雑化した話というと、成田闘争を思い出しました。詳しくは調べてはいないのですが、それでも子供心ながらにも、成田空港の開港が遅くなった一因として、三里塚の宮内庁下総御料牧場の強制的な閉場にあるのだとしても、過激派が介入したこと、成田開港直前に管制塔占拠事件が起こったり、スカイライナーの放火などがあったことを記憶しています。
 今まで牧場で生計を立て、暮らしてきた人々の日常を奪った国の責任も重いと思います。空港を建設するから、明日から別のところへ移転してくれ、と言われたら、たとえ代替地を用意されていたとしても「いったい何をいいやがるんだ」という気分にも私でもなるでしょう。空港ではなく、道路拡張とか新設の場合なら、よけいにあり得るケースだろうと思います。
 しかし、一部の大組織の横暴に対抗するため、反対組織を作ったはずが、気がついたら別の一派がはいりこんで組織そのものが乗っ取られており、四面楚歌だったというのも、その運動を始めた側からしてみれば、寝耳に水であろうと思うし、組織の本来の目的としてみれば本末顛倒であったのだろうと想像します。牧場で暮らしたい人はただ牛を育てていたいだけなのに、いつの間にか、国家への破壊的な活動にすり替わっている。そして、世間からはただ全体の利益を阻碍しているようにしか見られない。テロリズムそのものが目的化しており、日常の恢復という本来の目標がないがしろにされている。空港そのものには反対しているわけではないのに、空港の廃港が争点にされてしまっている。
 以上、成田闘争を例にしてみましたが、組織を運営するには活動資金が必要で、そのために利潤が生じるのだとすると、運動家の存在が生じるのは必然なのかも知れないです。それは体内におのづと宿り、死後、侵蝕してゆく有機物質のようなものかも知れない。だとしても、そんなものが現れていいものか、活動組織はその目的が終わった時点で綺麗さっぱりとその幕をひき、消滅し、飛ぶ鳥跡を濁さず、というふうにはできぬものか、と思いました。

 関係のない話をだらだら述べましたが、もっと分かりやすい例をあげると、今でも虫プロとかタツノコプロとかいうアニメ会社があったり、円谷プロという特撮の会社があるけれども、創業者の一族が閉め出されていて、別の大資本に乗っ取られているわけですよね。アトムとかレオ、ガッチャマン、キャシャーン、ハクション大魔王などのキャラクターが利益を生むわけで、それにつられて株式が乗っ取られてしまう。ガンダムで有名なサンライズも、そのガンダムが生み出す利益が原因で、今やバンダイの系列会社に成り下がっている。
 こういう話と、守る会やひかり会の話を関連付けるのも筋違いなのかも知れないけれども、これらは資本主義が抱える病理であり、それを排除するにはより強い権力のようなものが監視しなければならないのか、というふうにも思います。三権分立がそういうものであり、過去の人間の智慧の総意なのでしょう。あるいは、個人がその組織の設立主旨や目的について自覚的でなければならぬのか、とも。
 しかし、拝金主義が行き詰まりを見せるのも歴史の必然であろうと思います(なぜなら、既存のキャラクターなどを利益を生み出す商品としてしか見ていないから。新しい何かを生み出す気概に欠け、現状の商品の模造品しか生み出すことはないのだから。同様に、現状を維持しようとして大企業の不当さに対して生まれた運動に発展性や進展を与えることもできないし、イデオロギーによる運動の固定化や安定性しか求めていないから。また関係ない話を述べると、リメイク物や続篇が失敗するのも同じ理由によるのでしょう。訴訟対象となる大企業についても、前進してゆくことを怠り、現在ある利益のみを追究してゆくと同じ愚を犯すように感じます)。

 以上、下らないことをだらだら記しましたが、何とか森永砒素ミルク事件の場合においても、本来、何がしたくてその運動が始まったのか、そして、そのためには既にできあがってしまったものに対して、どう抗議し、どう変えてゆくか、あるいは更なる新しい反対組織を立ち上げ、既存の組織の虚偽を暴くようにしないといけない、そのためにもこういう過去の事件を風化させずに、繰り返し何度でも訴えつづけることをしないといけないのかな、と思いました。また同じことの反復になってしまう可能性もあるけれども、その時はさらに同じ対策をしてゆくしかない、と。

 駄文を長々とすみませんでした。本当にこの事件について、分かった気になっていたことを心より反省します。『脱正義論』、やはり名作だと思いました。

 ということで、木蘭さんの方はまた後廻しです。実はこれから詳しく読むところです。すみません。
No.52
36ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
第421号 2021.12.28発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※「ゴーマニズム宣言」…前回、前々回と「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史を見てきた。岡崎哲夫という、たった一人の人物が執念と理想と信念を捨てずに戦い抜いたことで、絶望的な状況を逆転し、世の中を変えることができたという実例は今後にも大きな希望となるし、ここで話を終えられれば本当に良かった。だが現実は、そうはいかないのである。「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史から得られる恐ろしい教訓とは何か? ※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…『週刊エコノミスト Online』に掲載された「『ワクチン格差』がある限りコロナ禍は終わらない」(2021.12.26)という記事がひどい。オミクロンによる感染拡大の要因は「ワクチン接種から時間がたち、予防効果が薄れてきている」ことであるとし、各製薬会社の発表を鵜呑みにしたワクチンや治療薬の宣伝が続くのだ。そんな製薬会社PRマンが目を反らすオミクロン株の実態、そしてワクチンブースター接種後の癌患者を襲った懸念すべき症例報告とは? ※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!多くの人がマスクを外せないのはマスクを外すことが「不道徳」だと考えられているから?性別適合手術は逆に「男らしさ」「女らしさ」に拘りすぎなのでは?学校に会社と同じ様な生理休暇を採用する事についてどう思う?おみくじってどれくらい信じる?「悪いことの全てを他人や時代のせいにするな」という美徳は思考停止を生んでいる?…等々、よしりんの回答や如何に!? 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第448回「森永ヒ素ミルク事件 後編」 2. しゃべらせてクリ!・第377回「しゃべクリアワード2021」 3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第242回「お薬業界のPRマンとブースター接種後の実態」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 編集後記 第448回「森永ヒ素ミルク事件 後編」  前回、前々回と「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史を見てきた。  岡崎哲夫という、たった一人の人物が執念と理想と信念を捨てずに戦い抜いたことで、絶望的な状況を逆転し、世の中を変えることができたという実例は今後にも大きな希望となるし、ここで話を終えられれば本当に良かった。  だが現実は、そうはいかないのである。  森永乳業は倒産の危機に瀕するほどの不買運動に遭い、刑事裁判で有罪判決が確定するに至ってようやく 企業責任を認め、被害者への恒久対策を行うことを約束した。 事件発生から実に19年もの歳月が経過していた。  娘がヒ素ミルクの被害を受け、「森永ミルク中毒のこどもを守る会」(被害者が全員成人したのに伴い 「森永ミルク中毒の被害者を守る会」 に改称、略称・守る会)を立ち上げて戦ってきた 岡崎哲夫氏 は、この機に長年勤めた社会福祉協議会(社協)を辞め、守る会の専従となった。  妻の幸子氏は社協の職に留まるべきだと意見したが、岡崎氏は社協の仕事には後任者がいるが、守る会の仕事は、立ち上げからずっと関わってきた自分にしかできないとして譲らなかった。  だが、ここは幸子氏の方が正しかったのかもしれない。  一生障害が残るヒ素ミルク被害者に対しては、一度限りの「損害賠償」ではなく、生涯の医療や生活を保障する「恒久対策」でなければならないというのは、岡崎氏ら被害者の親たちの一貫した主張だった。  これを長年の死闘によってようやく勝ち取り、 恒久対策を実施する「財団法人ひかり協会」 が設立されることは決まった。  しかし、実際に約束通りの恒久対策が行われるかどうかはこれからの問題だった。何しろ相手はこれまで19年間被害者を騙し、蔑ろにし続けてきた森永である。約束が反故にされ、対策が骨抜きにされるということは十分にありうる。  だからこそひかり協会を監視し、恒久対策を確実に実施させるために、被害者団体である守る会の存在が一層大事になるという岡崎氏の考えには、確かに一理あった。   だがその肝心の、自らが心血を注いだ守る会が変質してしまうとは、岡崎氏は夢にも思わなかったであろう。  森永ヒ素ミルク事件が社会的な関心事となって以降、守る会には支援と称して様々な人が入ってきた。そして その中にはイデオロギーに染まったプロ活動家がいた。   運動の一時的な勝利によって守る会には組織と金が生じており、プロ活動家はこれに「利権」として目をつけた。  岡崎氏は守る会において、特に重症者に対する手厚い救済事業の実施と、森永乳業に対する警戒心の保持を第一と考えていたが、このような方針はプロ活動家にとっては邪魔なものだった。 プロ活動家の目的はあくまでも運動の継続にあり、被害者の救済にはないからだ。   岡崎氏は変節を始めた組織を是正しようとするが、これに対してプロ活動家たちは岡崎氏や家族に対してまで、あらゆる誹謗中傷とプロパガンダを展開していったのだった。  これはもう、わしが薬害エイズ運動で目の当たりにした「HIV訴訟を支える会」とそっくりである。  薬害エイズが社会的関心事となり、運動が奇跡的勝利を達成したあたりから、それまでの苦しい闘いをしていた頃には見たことのなかったような人がどこからともなく現れるようになり、いつの間にか専従職員に収まったりしていた。そして、これからも運動の継続が必要だとか言って、運動に参加した学生たちを組織化しようとし始めた。  わしはそれに対して、あくまでも訴訟の支援運動なのだから、訴訟が終わった以上は解散しろ、学生は日常に帰れと訴えた。  そうしたら、わしに対してものすごい誹謗中傷が始まった。  わしは会を辞めたが、その後に会が作成した運動の歩みを紹介するVTRでは、薬害エイズ運動の中に「小林よしのり」という人物は一切存在しなかったかのように編集されていたそうだ。   守る会はプロ活動家に乗っ取られ、その機関紙には毎回岡崎氏に対する誹謗中傷が書き立てられ、それに対する反論は一切載せられなかった。  守る会はひかり協会に従属する存在となり、協会を監視して恒久対策の完全実施を要求していくという役割は失われた。  岡崎氏はこれを本来の形に戻そうとするが、古参の役員たちは次々排除され、 岡崎氏も昭和61年(1986)、守る会を除名されてしまった。   一方、被害者の親たちも決して一枚岩ではなく、守る会を乗っ取った活動家に洗脳される者や、森永におもねる者まで出てきて、個々に分断されて発言力はごく小さいものになってしまった。   こうなれば、もう圧倒的に森永に有利である。ひかり協会が実施する恒久対策には、森永の意向が強く反映されるようになっていった。  
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!