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たけまるさん のコメント

既出の内容であれば恐縮ですが、男系固執派らを論破する上で参考になる情報になりうる情報に接したので、投稿させていただきます。
要旨は2つ。
1)Y染色体は加齢で失われることがある
2)Y染色体がなくても男性になることがある
それぞれ情報ソースと共に、補足を記していきます。

1)について。
大阪公立大学の佐野宗一特任講師が、バージニア大学にて取り組んだ共同研究の成果を「後天的Y染色体喪失(mLOY)と心不全の因果性の証明」として論文を発表。
国際学術誌「Science」の2022年7月15日号に掲載されたというものです。
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-01481.html
(論文の概要が記されたプレスリリースも公開されています)

私はそもそもY染色体が失われるという現象(mLOY)そのものに驚いたのですが、このmLOY自体は半世紀以上前から知られていた現象なのだそうです。

佐野特任講師によると、
「血液細胞にのみ起こるもので、これで女性化することはない」
「70歳の40%・93歳の57%にみられる」
「mLOYが起こるメカニズムは不明」
「mLOYかどうかは検査をしないとわからない」
「なりやすいのは加齢・煙草・遺伝」
とのこと。
https://www.omu.ac.jp/omuom/articles/entry-00140.html
つまり、知らない間にY染色体を失ってしまっている男性は、一定数存在するようですね。

2)について。
北海道大学大学院理学研究院の黒岩麻里教授らの研究グループが、東京工業大学生命理工学院生命理工学系の伊藤武彦教授、梶谷嶺助教らの研究グループと共同で、Y染色体とSry遺伝子をもたないアマミトゲネズミという哺乳類が、Sry遺伝子なしにオスが決定される仕組みを解明しています(2022年11月28日「The Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載)。
要は、オス化を決定づけるSry遺伝子が無くともオス化が確認できた、という事例なのだそうです(世界初)。
https://www.titech.ac.jp/news/2022/065377
実はヒトにおいても、少数ではありますが、性染色体がXXでも男性化する例が報告されているとのことです。
その詳しいメカニズムまでは明らかになっていませんが、性分化を司るのがY染色体やSry遺伝子だけではない、生物のあらゆる営みは、人間が想像する以上に多様で柔軟なものなのだと考えることができます。
ちなみに黒岩麻里教授 によると、
「Y染色体の遺伝子数は減りつつある」
「Xの遺伝子数は約2000であるのに対し、Yはたったの50程度」
「ごく少数と思われていたXXYの男性というのも、実は相当数おられるのではないか」
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00139/

また、東邦大学のサイトにはこのような解説もありました。
「ヒトのX染色体の大きさはYに比べて非常に大きく、生命活動に必要な遺伝子を多く含むが、Yに個体の生命活動に必須な遺伝子は存在しない(女性はYを持たないが、個体の維持には何の問題もない)」
https://www.toho-u.ac.jp/sci/biomol/glossary/bio/sex_determination.html

ここまでで、大方の趣旨はご理解いただけたのではないかと思います。
即ち、学術的に見ても「Y染色体の継承にこだわることに価値は見出せない」「Y染色体を継承し続けること自体が非現実的である」。
男系固執派の理屈について述べるならば、彼らが崇め奉っている神武天皇のY染色体、とっくに途絶えている可能性の方が高い。
数十代にも渡る皇位継承の過程において、諸々の要因でY染色体が失われているという事態は充分に考えられます。
男系固執派のある政治家が、「昔の人はY染色体というものは知らなかったが、それを残すべきという感覚はあった。男系継承はそのための先人の知恵だ」みたいなことを言っていましたが、そんな感覚が存在するはずがないということも分かります。
目の前の男性が必ずしもY染色体を持っているとは限らず、その有無は検査しなければ分からないからです。
そもそも、後天的かつ偶発的に失われる可能性がある、極めて不安定なY染色体を、クニで最も大事な皇位継承の基準に据えるはずがありません。

長くなりましたが、補足終了。
今は「愛子様にトキメキたい!」「愛子様しか勝たん!」という庶民感覚を重視する流れになっているので、このようなY染色体にまつわる学術的な反論は、「理屈はもういい」よろしく、お呼びではないのかもしれません。
ただ、論破祭りを続けておられる公論サポーターの皆様方のご参考になれば幸いです。

それにしても、竹内久美子ってまがりなりにも生物学を研究していたはずなのに、事例として既に報告されていたmLOYとかXXの男性について全く無知だったんですかね。
八木秀次という、法学者にして生物学についてはど素人な人間が唱えた「Y染色体論」なんて、常識ある人間ならまず疑ってかかるものだと思うのですが。
No.66
10ヶ月前
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第493号 2024.1.30発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※「ゴーマニズム宣言」…今年に入ってから、日本は「サブカルしか勝たん!」ということを書いている。では、なぜ日本のサブカルは強いのか?それは、日本のサブカルは日本にしかないからである。実は、日本の「サブカル」は、欧米の「sub culture」とは全くの別物なのだ。欧米の「sub culture」と、日本の「サブカル」とでは、その成り立ちも性質も全然違うのだが、なぜかそれをきちんと解説したものがほとんど見当たらない。そこで、今回はこの点をはっきりさせておきたい。 ※茅根豪氏の特別寄稿…『日本の死角』(講談社学術新書、2023年)が売れているらしい。Amazonでは175個も評価がついている。この本のトップに収録されている論考「日本人は集団主義という幻想」が特に気になったので、同論考の元になる本を読んでみた。その本は『日本人論の危険なあやまち』(ディスカヴァー携書、2019年)である。果たして、日本人は本当に集団主義的ではないのだろうか? ※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…「福岡県民パンプアップ」と「福岡以外の人も『そうだったのか』と思える」を両立した動画「福岡どうでしょう」を作ろうと決めた。今回は福岡空港の話である。福岡空港は1945年5月に「席田飛行場」として完成するが、8月の敗戦で米軍に接収されて「米軍板付基地」となった。朝鮮戦争やベトナム戦争時にはここから戦闘機がバンバン飛んでいたのだ。1971年には当時のニクソン大統領の軍縮政策と、福岡の市民運動とが相まって基地の返還が決定。翌72年3月には板付基地は日本に返還され「福岡空港」となった。しかし実はこの返還運動は現在も続いているという!水面下で遂行されている米国の作戦と、福岡空港が抱える矛盾とは? ※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…「鬼太郎誕生・ゲゲゲの謎」の見方、これは邪道?先生の溢れるエネルギーはどこで培われたもの?「ジャンプ連載経験者でコロコロをぬるま湯と称した漫画家」が小林よしのりだという噂は本当?ソロモン諸島、ナウルと太平洋諸国が、台湾と断交し中国と国交を樹立していることに対して、これを阻止する手段をアメリカや日本は考えているの?死の間際に名乗り出て亡くなった桐島聡の人生とはなんだったのでしょうか?…等々、よしりんの回答や如何に!? 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第522回「日本のサブカルが強い理由」 2. 特別寄稿・茅根豪「日本人は本当に集団主義的ではないのか?」 3. しゃべらせてクリ!・第449回「命短し恋せよぽっくん! ブランコでむせび泣きぶぁい!の巻【前編】」 4. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第316回「福岡空港と米軍基地の矛盾」 5. Q&Aコーナー 6. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 7. 編集後記 第522回「日本のサブカルが強い理由」  今年に入ってから、日本は「サブカルしか勝たん!」ということを書いている。  では、なぜ日本のサブカルは強いのか?  それは、日本のサブカルは日本にしかないからである。   実は、日本の「サブカル」は、欧米の「sub culture」とは全くの別物なのだ。  欧米の「sub culture」と、日本の「サブカル」とでは、その成り立ちも性質も全然違うのだが、なぜかそれをきちんと解説したものがほとんど見当たらない。そこで、今回はこの点をはっきりさせておきたい。  まず、その前に予備知識として「カルチャー」の分類をしておく。  カルチャーは、大きく4つに分類される。  これまで述べた 「メインカルチャー」 と 「サブカルチャー」 に、 「ハイカルチャー」 と 「カウンターカルチャー」 を加えた4つである。  前回ざっくり定義したように、「メインカルチャー」とは世の中の大多数が認めている文化、「サブカルチャー」とは、世間の一部しか認めておらず、世の多数派、良識派からは白眼視されている文化をいう。  だが、この「メイン」「サブ」の定義は日本独自のもので、それが今回のポイントとなる。  一方 「ハイカルチャー」とは、一言でいえば「高尚な文化」 のことだ。高い芸術性や完成度を持つとされ、社会的に高い評価を受け、 教養ある上流階級が愛好してきた文化を指す。 狭義においては「文化」といえばハイカルチャーのみを意味する場合もある。  そして 「カウンターカルチャー」は、位置づけとしては「サブカルチャー」の一部だが、サブカルチャーの中でも特に反骨精神が強いものをいう。 その価値観や行動規範は一般の慣習から大きく逸脱し、しばしば反社会的なところまで先鋭化することがある。  ではここから「サブカルチャー」に焦点を当て、その成り立ちを見てみよう。  そもそも サブカルチャーというものが最初に成立したのは、1960年代半ばのアメリカ である。  50年代までのアメリカでは、若者文化としてロックンロールが登場し、世の大人が眉を顰めるようなことはあったが、それは「サブカルチャー」というムーブメントにまでは至らなかった。  戦後、アメリカは「黄金の50年代」と呼ばれる絶頂期を迎えた。第二次世界大戦に勝利して世界一の超大国となり、バラ色の時代を謳歌する風潮に満ちていたのだ。  わかりやすい例でいえば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で描かれた古き良き時代が「黄金の50年代」のアメリカである。   わしの子供の頃は、テレビで『奥さまは魔女』や『名犬ラッシー』などアメリカのドラマを数多く放送していたが、これらも「黄金の50年代」を舞台として、当時のアメリカ文化を描き出したドラマである。  そこには、家庭には頼りがいのあるパパと優しい専業主婦のママ、そして子供たちがいて、生活は豊かで、明るく希望のある世界が描かれており、それを見て敗戦国・日本の国民は大いにアメリカへのあこがれを抱いたものである。  だが、当時のテレビドラマには決して描かれなかったが、 その頃のアメリカでは、バスやレストランなどに「黒人専用席」が設けられるような差別が公然と行われていた。  差別解消を求める公民権運動は50年代半ば以降、マーティン・ルーサー・キング牧師らによって本格化していくが、特に南部ではこの動きに対する抵抗が強く、差別解消を訴えるのには命の危険が伴った。  公民権運動は1963年、キング牧師の呼びかけに応じて20万人が参加した「ワシントン大行進」で最高潮に達した。  この時にキング牧師が行った「I Have a Dream」の歴史的な演説は、アメリカ国内の黒人差別解消運動のみならず、当時まだイギリスやフランス、オランダなど白人諸国の植民地統治下にあったアフリカやアジアの諸地域における独立運動や、南アフリカなどの人種差別解消運動にも大きな影響を与えるものとなった。  こうして「黄金の50年代」には覆い隠されていたアメリカの影の部分が明るみに出され、それと同時に、それまでのアメリカの文化や価値観に対する強烈な異議申し立ての動きが沸き上がった。   その従来のアメリカ文化とは、要するに「キリスト教文化」のことである。  そこには 白人至上主義、家族尊重、男尊女卑、同性愛の否定 といった価値観が含まれていて、このような文化を否定し、これに代わる文化を打ち立てようというムーブメントが起こったのだ。  そして、 圧倒的多数のアメリカ人に浸透していた従来のキリスト教文化を「メインカルチャー」と位置づけ、これに対抗する「サブカルチャー」や「カウンターカルチャー」が登場してきたのである。  
小林よしのりライジング
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