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magomeさん のコメント

岸端編集長、お忙しい中、夜分遅くの配信、本当にお疲れ様でした。小林師範、時浦師範代、前回のライジングで二つもの投稿をブログで取り上げてくれて本当にありがとうございました。私にとってこの上なく、感激した最高の気分でした。例え、ライジングで岸端編集長は感想を述べなくとも、よしりん企画の方々および師範方がそれぞれの視点で、投稿を読んでいるのだと解って、これからもますます、投稿内容に思考力を注いで奥の深いコメントをしようと思いました。これからも決して、自惚れることなく、気を引き締めてライジングの道場生や師範、師範代とともに気を引き締めて思考を高めていこうと思います。

 今回のライジングで「はだしのゲン」について、私も「はだしのゲン」は幼少のころに全巻を読んだ記録があり、その時に初めて広島、長崎への原子爆弾投下と原子爆弾の恐ろしさについて知りました。私は当時としては珍しく大東亜戦争時の日米の軍艦や戦闘機に夢中になっていて、それが戦争賛美へと繋がるのではと危惧した母親がこの本を読ませてくれたことを覚えています。最も印象に残っているのは家の下敷きになり、生きながらにして焼け死ぬ父、姉、弟、そして後日、焼け跡から掘り出される三人の遺骨と弟が大切にしていた軍艦の模型の残骸。腸を垂らしながらも歩き、水を求める被爆者の姿は祖母から聞かされた東京大空襲の体験談と重なりましたし、水を求めては水を飲んで死ぬ被爆者、そして治療のために人骨の粉を皮膚に塗るか飲む被爆者の場面は今でも頭から離れません。
そして、米兵に婦女暴行の被害を受けながらも生きなければならない女性被爆者や原爆症で次々と死んでゆくゲンの仲間、母、妹。原爆によって片目が失明し、手足も使えず、全身包帯で覆われるほどの重傷を負いながらも口に筆を加えてまで、原爆の惨状を記録に残そうと絵を描く画家。最後に東京に向かうゲンとゲンの回想にでてくるゲンの父親の「踏まれれば踏まれるほど強くなる麦のようになれ」という内容の台詞とともに終わる最終の場面が後半部分で一番印象に残っている場面でした。
当時は巻末に「第一部完」と記されていたので「第二部」の連載を待ち望んでいたのを覚えています。それからしばらくして私の周囲では「はだしのゲン」について話題には上りませんでした。しかし、「はだしのゲン」の内容は長崎の原爆資料館を訪れる時に大いに参考になったのを覚えています。原爆によって変形したガラス瓶や焼け焦げたレンガ、そして被爆した人々や馬、そして遺体の写真は「はだしのゲン」に描かれている以上に悲惨だったのを覚えています。また、原爆によるケロイドを模った人体模型は初めて、兵器の恐ろしさを教えてくれましたが、これも「はだしのゲン」を予め読んでいたからすんなりと学習することが出来たのだと思います。
所が、問題となった場面は私の知る限り、つい最近まで全くと言っていいほど覚えていませんでした。当時は幼少で政治的なことに関心が薄かったとはいえ、天皇陛下については今ほどではないにしろ、知っていましたので、名場面であるならば覚えているはずなのですが、全くと言っていいほど記録にありません。しかし、これら「反日、反天皇」とされる場面を再び目にするようになる日が最近になって訪れたのです。それは嫌韓騒動が始まった21世紀になってからのことです。それまではネットでは2chなどの匿名掲示板は今ほど、充実はしておらず、「はだしのゲン」の評価も「反日、親日ではなく、原爆による被爆という残酷な運命に晒されても逞しく生きていく若者たち」という評価が「はだしのゲン」のファンのHPを中心に大半を占めていました。しかし、日韓ワールドカップ直後の嫌韓騒動が盛んになってくると漫画でも韓国、北朝鮮の主張を鵜呑みにしているとされる漫画がネットで盛んに取り上げられ、「はだしのゲン」も朝鮮人強制連行について取り上げていたことから、この場面を筆頭に「はだしのゲン」の「反日、反天皇」の場面が盛んに取り上げられたのです。
試しに「『はだしのゲン』に見る朝鮮人」と検索してみますと、今回問題となった場面を取り上げたHPに連続して当たります。また、「『はだしのゲン』回覧制限」の問題の発端が嫌韓国、嫌朝鮮で動いている在特会の運動であることからも、この事態は解りやすいと思います。
また、ネットで嫌韓、嫌中運動が盛んなころに、この運動に合わせるかのように、「反日漫画の世界」という本が出版されます。この本では「はだしのゲン」のほかに、「反日、反天皇、親韓、親中」と見なされる漫画家とその作品がやり玉に挙げられ、この本でも今回問題となった場面が取り上げられています。
要するに、今回の問題は「はだしのゲン」をちゃんと、読んで思考した人々が起こした問題なのではなく、ネット上で発生した嫌韓運動の延長線上にあるとしか私は思えないのです。もし、違うのであれば、手塚治虫氏の「アドルフに告ぐ」や時浦師範代も指摘していた「タイガーランド」そして村上もとか氏の「龍 ron」も槍玉にあげられるはずです。しかし、そのようなことがないのは、嫌韓運動の一環である「反日漫画の世界」という著作で取り上げられなかったからにほかなりません。
 もし、これで「はだしのゲン」の騒動に終れば、次は間違いなく、「美味しんぼ」の作者である雁屋哲にその矛先が向うのではと思えてなりません。なぜなら、雁屋氏は代表作、「美味しんぼ」で盛んに韓国や中国について好意的に取り上げ、「反天皇」の著作まで出しているからです。これは「はだしのゲン」と見事に一致します。また、嫌韓派のHPでも盛んに雁屋氏と雁屋氏の著作である「美味しんぼ」が取り上げられています。「美味しんぼの嘘を暴け」と検索すればそのHPがすぐ見つかり、嫌韓運動の的となっています。「美味しんぼ」もその発行部数と内容から、著者である雁屋氏の「業」が出した名作であり、氏の近現代史観や食文化を始めとする文化に対する視点に違いはあるものの、その内容は「はだしのゲン」や「風立ちぬ」と同じく後世に残すべき名作であると、その知名度からして証明されているものと思います。
 これらが私怨に塗れた運動の犠牲になること自体、恐らく、一般常識を持った庶民も後世の人々も日本が日本であり続ける限り、納得しないと思います。この「はだしのゲン」の騒動といい、「ヤングマガジン葛西智美写真集」の騒動と言い、一般常識という我が國の価値観がイデオロギーという西洋の毒害によって破壊されつつあることになぜに、皆、気が付かないのでしょうか?
 作品を楽しんで、時には思考するというこれまで、当たり前にしてきた作品の楽しみ方ができない以上、これからは名作が生まれる条件がますます厳しくなり、時には不可能という事態に陥ってしまうと思います。そうなってしまうと、我々はTPPによって著作権の規制が厳しく制限されても、その制限を打ち破ってまで守りたい作品に恵まれずについにはこれまで築き上げてきた全ての作品が「はだしのゲン」の騒動のように闇に葬り去りかねません。
 「はだしのゲン」の騒動に加担した人々は紛れもなく、TPPによって支配された将来の日本人の姿です。
 「戦争論」「天皇論」「昭和天皇論」を「はだしのゲン」と同じ場所に、図書館で並べるのに賛成です。しかし、原爆について悲惨さを教える一方で原発をいまだに賛美している文科省の姿勢にはいまだに頭を傾げます。もし、「はだしのゲン」と同じ棚に小林師範の著作を並べるならば、私は「戦争論」、「天皇論」とともに「脱・原発論」「国防論」「差別論」を並べます。なぜなら、「はだしのゲン」に取り上げられている主題には戦争、原子力、国防、差別の四つが含まれていて、これらを主題から排除することは絶対にできないからなのです。

時浦師範代、今週もwiki直しお疲れ様です。新天皇論の欄もひどい残場で、私も小林師範の著作を主題に論争するときはwikipediaをまず使いません。また、使用した人は決まって無能な人であることが論争仲間では暗黙の了解となっています。

本日も長文失礼しました。次回のライジングが発表されるまでは、ここの皆様との意見のやり取りに従事いたしますのでよろしくお願いいたします。
No.25
129ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
第51号 2013.8.27発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※作品自体の評価や存在意義、作家の情念や業、子供への影響、表現とイデオロギーの問題…今週の「ゴーマニズム宣言」は『はだしのゲン』閲覧制限問題に結論を出す! ※最高に笑えると大好評の「よしりんウィキ直し!」。今回は「『討論番組』『その他』編」!ここまで来るともう、百科事典どころか単なる「雑記帳」と化していた!どこからツッコめば良いのやら!? ※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」。今回のお題はこちら!!みんなでお父ちゃまにツッコミ入れるぶぁい♪      【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第53回「『はだしのゲン』を図書館に置く条件」 2. しゃべらせてクリ!・第13回「お父ちゃまに突っ込もう!の巻」 3. よしりんウィキ直し!・第4回「『討論番組』『その他』編」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 読者から寄せられた感想・ご要望など 7. 編集後記 第53回「『はだしのゲン』を図書館に置く条件」  松江市の教育委員会が市立小中学校図書館に蔵書している漫画『はだしのゲン』を、倉庫などにしまって閲覧に制限をかける「閉架」扱いにするよう指示したことが大きな話題となっている。  新聞各紙の論調は、「閲覧制限はすぐ撤回を」(8月20日付朝日新聞)、「戦争知る貴重な作品だ」(同日付毎日新聞)、「彼に平和を教わった」(21日付東京新聞)といった調子で、『ゲン』を高く評価した上で、市教委の指示を批判するものが大多数を占めている。  そんな中で、産経新聞は8月22日付の阿比留瑠比記者の記事で『はだしのゲン』について「『閉架』措置うんぬん以前に、小中学校に常備すべき本だとはとても思えない」と非難し、その理由を以下のように挙げている。   「ゲン」では何ら根拠も示さず旧日本軍の「蛮行」が「これでもか」というほど語られる。  「妊婦の腹を切りさいて中の赤ん坊を引っ張り出したり」「女性の性器の中に一升ビンがどれだけ入るかたたきこんで骨盤をくだいて殺したり」…。  特に天皇に対しては、作者の思想の反映か異様なまでの憎悪が向けられる。  「いまだに戦争責任をとらずにふんぞりかえっとる天皇」「殺人罪で永久に刑務所に入らんといけん奴はこの日本にはいっぱい、いっぱいおるよ。まずは最高の殺人者天皇じゃ」  なるほど。無茶苦茶な嘘を描いていたんだな。  わしは『はだしのゲン』は「ジャンプ」連載中に読んでいたが、こんなシーンは全く覚えてない。  『はだしのゲン』は「週刊少年ジャンプ」昭和48年(1973)6月25日号から連載が始まった。既に読者アンケートによる人気投票至上主義が導入され、不人気作品は即打ち切りというシステムとなっていた同誌において、『ゲン』は一定の支持はあったものの決して人気作ではなかった。  しかし「アンケート至上主義」を導入した張本人である初代編集長・長野規(ただす)がこの作品を気に入り、人気に関わりなく連載を続けさせたのである。  連載は1年3カ月続いたが、『ゲン』を守っていたのは長野編集長だけだったようで、長野が編集部を離れると連載も終了となる。しかも集英社がその内容にクレームがつくことを恐れて単行本化を躊躇したため、単行本は汐文社という小出版社から発行された。  『はだしのゲン』の連載は1年後左派言論誌「市民」で再開されたが、同誌の休刊で再度中断。さらに1年後、日本共産党の機関誌「文化評論」に連載の場を移すが、原水爆禁止運動における共産党と被爆当事者の対立等の政治的混乱の煽りで打ち切られ、2年のブランクを経て日教組機関誌「教育評論」で連載が続行された。  単行本は全10巻で、そのうち第4巻までがジャンプに連載された分である。  そんな経緯があるので、おそらくジャンプを離れた後の『ゲン』は掲載誌に合わせて、共産党や日教組のプロパガンダ色が強くなり、上記のようなシーンも産まれたのだろうとわしは漠然と考えていた。  ところがスタッフの時浦が今回、全巻を確認して、レポートを出してくれたのだが、作者・中沢啓治は掲載誌に合わせて作風を変えるようなことはしていないという。ジャンプだろうが、共産党や日教組の機関誌だろうが、ほとんど同じ調子で描いていたというのだ。  反戦主義者であるゲンの父親は、ジャンプ連載第1回から「 軍部のやつらが金持ちにあやつられ 武力で資源をとるため かってに戦争をはじめてわしらをまきこんでしまったんだ 」と言い、その後も「 悪いのは軍部・資本家で庶民は被害者 」「 ただし騙されて戦争に協力する庶民も共犯 」「 職業軍人は単なる人殺し 」といった紋切り型の反戦思想の発言を繰り返している。  天皇批判的なセリフも最初から何度も登場しており、「朝鮮人強制連行」も当たり前の事実として語られているという。  そんなのを「週刊少年ジャンプ」で連載していたことが驚きだし、集英社が単行本化を躊躇したのも無理はない……と言いたいところだが、わしには『はだしのゲン』にそんなセリフがあったという印象が全然ない。  原爆投下直後の広島の地獄絵図の光景、皮膚が溶けて垂れさがったまま歩きまわる人々、全身にガラスの破片がつきささっている人、至るところにでき上がる死体の山、川に浮かんだ死体が腐敗してガスが溜まって腹が膨らみ、その腹が破れてガスが噴き出す場面などは鮮烈に覚えている。  戦後になり、飢えに苦しむ中、本人には何の落ち度もない被爆者が差別され、迫害されていく、人の心の酷薄さの描写も印象に強い。  そして戦後の混乱期の中、逆境に負けずにたくましく生き抜こうとするゲンたちの姿も心に残っている。  ところが、天皇批判のセリフとか、軍部や資本家批判のセリフとかは、一切覚えていないのである。  『はだしのゲン』は小学1年の時に広島で被爆した中沢啓治の自伝的漫画だが、中沢は最初から原爆漫画を描こうとして漫画家になったわけではない。むしろ差別を恐れて被爆者であることも公言せず、普通の娯楽作品を描いており、怪獣映画のコミカライズも手掛けている。  転機となったのは母親が死んで火葬した際、骨が残らなかったことだった。放射性物質の影響で骨がスカスカになっていたらしく、小さな骨の破片が点々としていただけだったという。  この衝撃に「ものすごい怒りが込み上げてきた」という中沢はそれ以来、「母の弔い合戦のつもりで」原爆をテーマにした短編を次々発表し、やがてそれが長野編集長の目に止まり、『はだしのゲン』の連載へとつながったのである。   つまり『はだしのゲン』は中沢啓治が作家として、どうしても描かずにはおれなかった「業」が叩き込まれた作品なのだ。  中沢は自分の思いを完全に伝えるため、週刊連載の間もアシスタントを一切使わず、一人で描き上げたという。  だからこそ、中沢自身が体験した被爆直後の惨状や、被爆者差別の過酷さの描写は決して他の誰にも描けない、魂の込められたものとなっており、読んでから40年も経つわしの記憶にもはっきり残っている。   ところが、「 天皇が戦争を始めた 」だの「 天皇が戦争を終わらせなかったから原爆を落とされた 」だのということが中沢に実感としてあるわけがなく(しかも事実として間違ってるし)、これは単にイデオロギーでしかない。  本人は原爆にも、天皇にも、同じように怒りをぶつけて描いたつもりだったろうが、この二つは決定的に違う。それは普通の読者なら無意識のうちに見抜いてしまうものである。  
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!