• このエントリーをはてなブックマークに追加

na85さん のコメント

 今週もみなぼん編集長は激務にもかかわらず日付を跨ぐ前に執筆・編集を完遂し、無事配信していただいたようで恐れ入ります。よしりん師範、時浦師範代、スタッフの皆様もありがとうございました。

 私は『はだしのゲン』を読んだことがありません。なので今回の「ゴー宣」に私はコメントを書く資格がないという気がします。ただ名作であることはよく判りましたのでそのうち大人買いして通読してみようという気になりました。読み通すのに非常にエネルギーが要りそうですが…。
 名作の条件はなんだろうと考えてみました。作家が「書きたい」「描きたい」という初期衝動のままにカキはじめ、絵や文章に情念を乗せていき、現代社会の一般常識や左右のイデオロギーに左右されることなくカキきり、作品に一般大衆が触れたとき心の深い部分で共振と反発が同時に起こるような作品ではないでしょうか。『はだしのゲン』の場合、被爆後何年も経ってから母の体を蝕み続けていたことが発覚した原爆というものに対する強い怒りが初期衝動となり、周りの様々な雑音も気に留めず絵に情念を叩き込み、残酷シーンも含めて描き切ったわけです。ただ原爆への怒りが強すぎたことと、常に締切に追われる週刊連載で正しい知識を得る暇がなかったことにより、溢れだした情念と怒りの放出口・矛先が戦前の日本国家と軍、天皇へも向かってイデオロギッシュな色合いを帯びたのだと思われます。これは反米とともに反戦・反日・反天皇が正義とされた60~70年代の風潮の中では仕方がなかったとも言えます。しかし絵に叩き込まれた情念の大部分が原爆そのものと被爆者を差別した戦後日本人に向かっており、反軍・反日・反天皇の主張部分には人々の記憶に残らない程度の情念しか乗っていなかったと思われます。また名作に触れても素直に感動するより先に左右のイデオロギーのフィルターを着けて見てしまうタイプの人も当然おりますが、その手合いにはそもそも『はだしのゲン』などのイデオロギッシュな色合い「も」含んだ名作を読む資格はないと思います。
 さて、まだ『はだしのゲン』を読んでいない私が言うのも変ですが、社会に溢れる毒や雑菌に早いうちから慣れるためにもこれは学校図書室に置くべきだと思います。そして反日ウソ知識へのカウンターおよび原爆への怒りを落とした米国に対して正確に向け直す意味で『戦争論』シリーズ、反天皇ウソ知識に対しては『天皇論』シリーズを同時に隣に置くというよしりん師範の解決措置は推奨すべき方法の第一だと思います。原爆への怒りをキッチリ米国に向けているという意味でなら、こうの史代先生の『夕凪の街・桜の国』も同時に隣に置いてほしいです。前半ラストで主人公の女性が原爆症で亡くなる直前に発する言葉「また一人殺せたよ…」は強く響きました。
 前述した私の勝手な名作の条件で言うとよしりん漫画は全て名作だと思います。描きたいという初期衝動のままに描きはじめ、絵と台詞に情念を乗せていき、現代社会の一般常識や左右のイデオロギーに左右されることなく描ききり、一般大衆が触れたとき心の深い部分で共振と反発が同時に起こるような作品ばかりだからです。よしりん漫画やそのキャラを好きな人と嫌いな人にクッキリ二分されるのは、読者の心の内で共振と反発のどちらが強く起こったかによると思います。また『ゴー宣』にはよしりん師範の作家としての情念の上に説得のための論理や学問的知識が詰め込まれているため、知識・情報だけを摂取する左脳秀才や、左右のイデオロギーフィルターを予め着けている人には情念部分を受け取れず正確な評価もできません。だから自分のフィルターに合わなくなって政治利用できなくなると敵視し始めるのだと思います。『ゴー宣』各論は「右も左も手放しでは賛成できないから名作だ」というのはこういう理由だと思います。ちなみに左脳秀才の多くは左右どちらかのフィルター(右:グローバリスト、左:左翼)をすでに装着済みでこれがA層、秀才でもなくフィルターだけ完備しているのがB層で、フィルターを外して情も理も受け取れるから騙されにくいというのがC層だと思われます。
 ところでジブリアニメはこれまで多くの人の心を捉えてきました。これはジブリ作品が名作ではないということではなく、設定が子供向けのファンタジーであることも手伝って視聴者の心に反発より共振を圧倒的に多く起こしたからでしょう。しかし『風立ちぬ』では設定が史実に近くなり、左右のイデオロギーフィルターにも触れやすくなったため、これまでのジブリ作品とは違った批判が起こってきたと思われます。
 『はだしのゲン』を見てないのにこんなに書いてしまいました(笑)。
 時浦師範代、「ウィキ直し」の「小林よしのり」編、お疲れ様でした。次は「ゴーマニズム宣言」編で、さらにアンチが跋扈する戦場に挑まれるわけですね。これからもウィキペディアを常用する人に集合恥・集合痴の無効を思い知らせてやってください。
 叩かれるキーの音で仕事の進捗が判るほどのみなぼんさんがそう仰るなら、よしりん師範はマエストロで間違いないですね。脳内ドーパミン放出量に比例していると思います。
 朝夕の風が少ずつ涼しくなり、空にいわし雲が描かれる日もあり、いよいよ身体も秋になり始める頃です。免疫弱体化を防ぐためにそろそろ冷たい飲食物は控えてください。免疫が弱ればドーパミンを放出する細胞も弱ります。エアコンのかかった部屋では暖かい飲食物を摂ることもお勧めします。

 作家の命脈とは集中してドーパミンを放出できる期間の長さか na85

 歌会参加者の皆様、今週の雷神宮歌会のメインテーマ(ライジングの内容に即した漢字一文字のお題)はどうしましょうか?『ゲン』未読の私が設定するのは気が引けます。
No.49
129ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
第51号 2013.8.27発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※作品自体の評価や存在意義、作家の情念や業、子供への影響、表現とイデオロギーの問題…今週の「ゴーマニズム宣言」は『はだしのゲン』閲覧制限問題に結論を出す! ※最高に笑えると大好評の「よしりんウィキ直し!」。今回は「『討論番組』『その他』編」!ここまで来るともう、百科事典どころか単なる「雑記帳」と化していた!どこからツッコめば良いのやら!? ※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」。今回のお題はこちら!!みんなでお父ちゃまにツッコミ入れるぶぁい♪      【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第53回「『はだしのゲン』を図書館に置く条件」 2. しゃべらせてクリ!・第13回「お父ちゃまに突っ込もう!の巻」 3. よしりんウィキ直し!・第4回「『討論番組』『その他』編」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 読者から寄せられた感想・ご要望など 7. 編集後記 第53回「『はだしのゲン』を図書館に置く条件」  松江市の教育委員会が市立小中学校図書館に蔵書している漫画『はだしのゲン』を、倉庫などにしまって閲覧に制限をかける「閉架」扱いにするよう指示したことが大きな話題となっている。  新聞各紙の論調は、「閲覧制限はすぐ撤回を」(8月20日付朝日新聞)、「戦争知る貴重な作品だ」(同日付毎日新聞)、「彼に平和を教わった」(21日付東京新聞)といった調子で、『ゲン』を高く評価した上で、市教委の指示を批判するものが大多数を占めている。  そんな中で、産経新聞は8月22日付の阿比留瑠比記者の記事で『はだしのゲン』について「『閉架』措置うんぬん以前に、小中学校に常備すべき本だとはとても思えない」と非難し、その理由を以下のように挙げている。   「ゲン」では何ら根拠も示さず旧日本軍の「蛮行」が「これでもか」というほど語られる。  「妊婦の腹を切りさいて中の赤ん坊を引っ張り出したり」「女性の性器の中に一升ビンがどれだけ入るかたたきこんで骨盤をくだいて殺したり」…。  特に天皇に対しては、作者の思想の反映か異様なまでの憎悪が向けられる。  「いまだに戦争責任をとらずにふんぞりかえっとる天皇」「殺人罪で永久に刑務所に入らんといけん奴はこの日本にはいっぱい、いっぱいおるよ。まずは最高の殺人者天皇じゃ」  なるほど。無茶苦茶な嘘を描いていたんだな。  わしは『はだしのゲン』は「ジャンプ」連載中に読んでいたが、こんなシーンは全く覚えてない。  『はだしのゲン』は「週刊少年ジャンプ」昭和48年(1973)6月25日号から連載が始まった。既に読者アンケートによる人気投票至上主義が導入され、不人気作品は即打ち切りというシステムとなっていた同誌において、『ゲン』は一定の支持はあったものの決して人気作ではなかった。  しかし「アンケート至上主義」を導入した張本人である初代編集長・長野規(ただす)がこの作品を気に入り、人気に関わりなく連載を続けさせたのである。  連載は1年3カ月続いたが、『ゲン』を守っていたのは長野編集長だけだったようで、長野が編集部を離れると連載も終了となる。しかも集英社がその内容にクレームがつくことを恐れて単行本化を躊躇したため、単行本は汐文社という小出版社から発行された。  『はだしのゲン』の連載は1年後左派言論誌「市民」で再開されたが、同誌の休刊で再度中断。さらに1年後、日本共産党の機関誌「文化評論」に連載の場を移すが、原水爆禁止運動における共産党と被爆当事者の対立等の政治的混乱の煽りで打ち切られ、2年のブランクを経て日教組機関誌「教育評論」で連載が続行された。  単行本は全10巻で、そのうち第4巻までがジャンプに連載された分である。  そんな経緯があるので、おそらくジャンプを離れた後の『ゲン』は掲載誌に合わせて、共産党や日教組のプロパガンダ色が強くなり、上記のようなシーンも産まれたのだろうとわしは漠然と考えていた。  ところがスタッフの時浦が今回、全巻を確認して、レポートを出してくれたのだが、作者・中沢啓治は掲載誌に合わせて作風を変えるようなことはしていないという。ジャンプだろうが、共産党や日教組の機関誌だろうが、ほとんど同じ調子で描いていたというのだ。  反戦主義者であるゲンの父親は、ジャンプ連載第1回から「 軍部のやつらが金持ちにあやつられ 武力で資源をとるため かってに戦争をはじめてわしらをまきこんでしまったんだ 」と言い、その後も「 悪いのは軍部・資本家で庶民は被害者 」「 ただし騙されて戦争に協力する庶民も共犯 」「 職業軍人は単なる人殺し 」といった紋切り型の反戦思想の発言を繰り返している。  天皇批判的なセリフも最初から何度も登場しており、「朝鮮人強制連行」も当たり前の事実として語られているという。  そんなのを「週刊少年ジャンプ」で連載していたことが驚きだし、集英社が単行本化を躊躇したのも無理はない……と言いたいところだが、わしには『はだしのゲン』にそんなセリフがあったという印象が全然ない。  原爆投下直後の広島の地獄絵図の光景、皮膚が溶けて垂れさがったまま歩きまわる人々、全身にガラスの破片がつきささっている人、至るところにでき上がる死体の山、川に浮かんだ死体が腐敗してガスが溜まって腹が膨らみ、その腹が破れてガスが噴き出す場面などは鮮烈に覚えている。  戦後になり、飢えに苦しむ中、本人には何の落ち度もない被爆者が差別され、迫害されていく、人の心の酷薄さの描写も印象に強い。  そして戦後の混乱期の中、逆境に負けずにたくましく生き抜こうとするゲンたちの姿も心に残っている。  ところが、天皇批判のセリフとか、軍部や資本家批判のセリフとかは、一切覚えていないのである。  『はだしのゲン』は小学1年の時に広島で被爆した中沢啓治の自伝的漫画だが、中沢は最初から原爆漫画を描こうとして漫画家になったわけではない。むしろ差別を恐れて被爆者であることも公言せず、普通の娯楽作品を描いており、怪獣映画のコミカライズも手掛けている。  転機となったのは母親が死んで火葬した際、骨が残らなかったことだった。放射性物質の影響で骨がスカスカになっていたらしく、小さな骨の破片が点々としていただけだったという。  この衝撃に「ものすごい怒りが込み上げてきた」という中沢はそれ以来、「母の弔い合戦のつもりで」原爆をテーマにした短編を次々発表し、やがてそれが長野編集長の目に止まり、『はだしのゲン』の連載へとつながったのである。   つまり『はだしのゲン』は中沢啓治が作家として、どうしても描かずにはおれなかった「業」が叩き込まれた作品なのだ。  中沢は自分の思いを完全に伝えるため、週刊連載の間もアシスタントを一切使わず、一人で描き上げたという。  だからこそ、中沢自身が体験した被爆直後の惨状や、被爆者差別の過酷さの描写は決して他の誰にも描けない、魂の込められたものとなっており、読んでから40年も経つわしの記憶にもはっきり残っている。   ところが、「 天皇が戦争を始めた 」だの「 天皇が戦争を終わらせなかったから原爆を落とされた 」だのということが中沢に実感としてあるわけがなく(しかも事実として間違ってるし)、これは単にイデオロギーでしかない。  本人は原爆にも、天皇にも、同じように怒りをぶつけて描いたつもりだったろうが、この二つは決定的に違う。それは普通の読者なら無意識のうちに見抜いてしまうものである。  
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!