• このエントリーをはてなブックマークに追加

na85さん のコメント

 よしりん師範、時浦師範代、みなぼん編集長、スタッフの皆様、今週も執筆・編集・配信、ありがとうございました。

 「たとえ国家指導者が判断を誤って起こした『間違った戦争』だったとしても、それと命令を受けて戦地に赴く将兵の意識や覚悟に対する敬意とは全く別の問題である。あくまでも、自分の命を顧みずに、国家のためと信じて、任務を果たそうとする者には敬意をはらわなければならない」。この今回の「ゴー宣」のラスト数行を読んで、私は自分の以前の考えが間違っていたことを思い知らされました。
 以前当コメント欄で、airmanさんが「米国に引きずられて行った戦争で死んだ自衛官の死体は野ざらしでいい」というような意見を言われたとき、私は瞬時に反発して反論してしまいました。後にairmanさんが自衛官であることを知り、そう言いたくもなるよな、と大いに反省したものです。そのとき私が出した結論は、米国の間違った戦争に引きずられて行き、従って日本に正義も主体性もなく、戦前までの英霊たちとは明らかに性質を異にするはずであるため、その御霊は靖国神社に祀るわけにはいかないのではないか、それなら靖国境内に特別な招魂社をつくってお祀りするしかないのではないかというものでした。
 しかし、国家・為政者の臆病さに発した戦争参加の意志決定と、実際に戦地に赴く自衛官一人びとりの覚悟や決意とは無関係であるため、その御霊は靖国神社に合祀せねばならないと意見を変えました。米国に引きずられて行った戦争においては世界的な意義も我が国にとっての大義も非常にあやふやであり、その上国家による顕彰すら満足にされないとなれば自衛官の士気にも関わってきます。士気の低い軍隊にどういうことが起こるかは、イラク戦争に参加した米国将兵(移民と貧困層の志願が多い)や、ベトナム戦争に引きずられて行った韓国将兵が現地でどういう所業をしたかを見れば明らかです。日本の自衛官には米国発の戦争にあっても、せめて国家による顕彰の物語を付与せねばならないと考えた次第です。
 そして「自分の命を顧みずに、国家のためと信じて、任務を果たそうとする者には敬意をはらわなければならない」。だからこそ間違った戦争に承知でついていくような政権を野放しにしていてはいけない!という激烈な意思をこの一文に感じました。
 さてリバタリアニズム(絶対自由主義)についてですが、わしズム以来の読者にとっては副島隆彦氏の論考が混乱させる元になっているかもしれません。氏は米国の言論状況を分析して左翼のグローバリストに対し保守のリバタリアンを対置させるという方法を採りました。米国が英国からの独立を果たすとき内向きを志向しつつ内側では絶対自由というリバタリアンが保守となり、逆に経済や軍事で侵略的に外向きの行動をするため内側では国家による統制を強くするグローバリストは伝統から外れると氏は考えたわけです。さらにリバタリアンの自分は伝統保守だという言い方もしていましたが、米国ならいざ知らず日本にもそれを当てはめようとするから非常に違和感を持ちました。だって日本は歴史的に天皇のもとで国家が一つの共同体として機能するコミュニタリアニズム(共同体主義)じゃないですか。
 現在の米国では、国外に出ていくグローバリスト勢が弱小国に難癖をつけて戦争をふっかけたり、弱小国と不平等条約(2国間のFTA・EPA、NAFTA、TPP…)を結んでグローバル企業の利益を極大化させたりしていますが、国内では民間警備会社によって厳重に警備された高額納税者だけが住める自治体を独立させ、移民や貧困層を排除しているという状況です。つまりグローバリストがグローバル企業の富を極大化してくれるから、リバタリアンが壁の内側で自由を謳歌できるという最悪の補完関係ができているわけです。
 米国はこんな状況だからオバマがいくら叫んだところで国民皆保険など実現しません。腹いせに安定した共同体社会の日本をTPPで破壊してグローバル企業の食い物にしようと企んでいるのでしょう。日本の皆保険を潰してグローバル保険企業を進駐させ、あぶれた無保険の病人をグローバル製薬企業の治験モルモットにし、健康なあいだは軍(自衛隊)に志願させようというわけです。TPPで格差が極大化した後の日本はこんな状態でしょう。日本のグローバルな富裕層も米国のリバタリアン自治体のように壁の内側に安住したいのか?とニュースなどで経団連の面々の顔を見ていて思います。
 今回「ウィキ直し!」もいよいよ大詰めに来たなという印象を受けました。ウィキ記事の筆者は女性への敵対心を顕わにした男尊女卑論者であり、現代日本の男尊女卑構造を死守するためなら皇室など滅びても構わないと考える偏向者であることを炙り出しました。極左も執筆に手を貸しているのかもしれません。極左の世界も男尊女卑らしいですから。
 Q&Aで空の防人さんが神社界の男系固執について書かれていましたが、神社界は男尊女卑が特に酷いらしいですね。はたして日本には女性の宮司なんているの?というぐらい男性が占めているのではないでしょうか。これは日本の歴史上もっとも男尊女卑傾向が高まった明治期日本において、政府の設計主義的な神仏分離によって権威を付与された神社界の当然の帰結なのでしょう。そして神主の世界における最高位が祭祀王・天皇だと考えれば、神主たちが男尊女卑の構造というか既得権益を守りたいために、皇室が女系を含む直系継承を志向している現実など直視したくはないでしょう。靖国神社の現在の要職の方々がどういう認識なのかは知りませんが、近代の武人を祀る社だけに男尊傾向は強いかもしれません。

 靖国の物語を守りつつ旧弊も改める二正面作戦が必要か na85
No.39
127ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
第93号 2014.7.15発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※「ゴーマニズム宣言」…靖国神社をめぐる言論状況は刻々と変わっている。首相が参拝しさえすれば良いのか?安倍首相の靖国参拝に対して米国政府が「失望した」と表現した意味とは?そもそも靖国神社は何のための神社なのか?反知性主義がはびこる自称保守派への警告!保守も知らない靖国神社の真実を直視せよ! ※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!神社界が男系固執と聞いて参拝したくなくなった、でも英霊への尊敬の念は変わらずある…この気持ちどうすれば良い?大河ドラマ『軍師官兵衛』、信長と光秀の描き方をどう思う?AKB48の「恋愛禁止条例」ばかりがクローズアップされる現状をどう思う?幼稚園児の息子のバッグに女子からのラブレターが…!黙って見守るべき?「美尻」とはどんなもの?もし徴兵制が敷かれたら自分は耐えられそうにないし、今の日本の指導者に命じられても納得がいかない…自分のような弱い人間は、この問題をどう考えるべき?…等々、よしりんの回答や如何に!? ※ウィキペディアの記事を徹底的に添削しちゃう大好評「よしりんウィキ直し!」。今回は冒頭から想定外の爆笑に見舞われるこのコーナー。が、しかし!本題の『天皇論追撃篇』では男系固執論者の救いようのない「男尊女卑感情」が明白に!皇室を消滅に追いやる真の「売国奴」は誰なのか!? 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第94回「間違った戦争でも靖国神社に祀るか?」 2. しゃべらせてクリ!・第54回「女装家・ぽっくんが眩惑しちゃるぶぁい!の巻〈後編〉」 3. よしりんウィキ直し!・第24回「ゴーマニズム宣言⑭:『天皇論追撃篇』(新天皇論)⑩」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 読者から寄せられた感想・ご要望など 7. 編集後記 第94回「間違った戦争でも靖国神社に祀るか?」 『 保守も知らない靖国神社 』(ベスト新書)が発売された。  靖国神社をめぐる言論状況は、10年前と現在では全く違っている。それなのに自称保守論壇の頭脳は完全に硬直化していて、10年前の議論をそのまま繰り返し、「首相の靖国参拝に反対している国は中国・韓国だけであり、そんなものは気にせず堂々と参拝すればいい」とばかり言っている。  昨年末の安倍首相の靖国参拝に対して米国政府が「失望した」と、かつてない強い表現で非難したことの意味など、まともに考えようとはしない。  自称保守派の知性の劣化現象は目を覆うばかりで、もはや靖国神社が何のための神社であるかも知らず、安倍首相が何のために靖国に参拝したのかを意識することもなく、ただ首相が靖国を参拝したというだけで大喜びしている。  安倍晋三の参拝は、実は靖国神社を侮辱したものであるということになど気がつきもせずに。 『 保守も知らない靖国神社 』は、そんな自称保守派にはびこる反知性主義に対する警告として、現在の靖国神社を巡って考えておかなければならない論点を考え得る限り網羅した一冊である。  発売翌日には、早くもAmazonのレビュー欄に最初の書き込みがあった。ところが評価が☆1つだったため、またネトウヨが読みもせずに罵詈雑言を書き込んだかと思ったのだが、読んでみるとそうではなかった。 著者の靖国神社擁護論にはまったく賛同できないが、靖国の本質が「日本を戦争できる国にするための神社」であるという主張そのものは、完全に筋が通っている。著者の意図とは裏腹に、靖国神社が日本人にとっていかに危険な存在かを再確認させてくれる、ある意味で貴重な本である。  …と、主張そのものには「完全に筋が通っている」と認めた上で反対していたのである。  ただし「著者の意図とは裏腹に」というのは違う。ちゃんとわしが意図して「危険な存在」だと知らせたのだ。平和の施設ではないし、慰霊さえすればいいという施設でもないと。  さらにレビューはこう続く。 著者は、保守派とされる政治家が靖国に参拝して、「我々は二度と戦争はしません」と誓うことほど、英霊を侮辱する行為はないと憤る。なぜなら「靖国神社は、日本を戦争できる国にするための神社である」(191頁)からだ。 米国の戦没者遺骨収集事業を見るがいい。実に専門的、科学的、組織的、そして総合的に行われている。なぜそこまで熱心なのか。「それは、『次の戦争』を前提としているからである」と著者はいう。「若い兵士に対して、たとえいつどこで死ぬことになろうと、自分たちは決してあなたを忘れない、どこで死のうと、必ず骨は祖国に帰してあげるという態度を明確に国として示しておかないと、次の戦争ができないのである」(188-189頁)。この指摘は正しい。国家が戦死者を祀るのには、それなりの理由があるのである。 靖国神社も「次の戦争」のための神社であらねばならない、と著者は強調する(207頁)。そのためには、参拝者の増減で財政が左右される民間の宗教法人であってはならない。「やはり国営化しかない」(289頁)。靖国神社が国家による戦争を精神的に支える装置であるならば、そのような結論になるのは至極当然である。  きちんと読んで、内容を理解している。  だが内容を理解した上で、このレビューは結論において本書を否定するのだ。 もちろん著者の脳裏には、国家が間違った戦争に国民を駆り立てる可能性など、寸毫たりともよぎりはしないのだろう。もしあなたが国家指導者も誤りを犯すことを知っているならば、彼らが靖国の権威を高めようと躍起になるときは、用心したほうがいい。著者が教えてくれたように、靖国は戦争をするための神社なのだから。  おそらくレビュー筆者は『 保守も知らない靖国神社 』以外のわしの言論活動は知らないのだろう。 
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!