na85さん のコメント
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(号外 2014.09.23発行) ゴーマニズム宣言 「『吉田調書』朝日バッシングの影に隠れた重大問題」 よく飽きもせず、という感じで朝日新聞バッシングは継続中だが、その論点はもっぱら慰安婦問題の方に集中している。
9月11日に行なわれた朝日新聞の木村社長の記者会見は、福島第一原発事故の「 吉田調書 」に関する誤報記事の取り消しと謝罪が中心で、慰安婦問題の謝罪はついでという感じだったのだが、逆に「吉田調書」の方にはあまり関心が向かないような状況になっている。
だが吉田調書報道については、あまり語られていない重大な問題がある。
朝日が吉田調書を読み間違え、事故発生当時に約9割の所員らが吉田昌郎所長の命令に違反して撤退したとする誤報を出してしまった理由は、やはりVol.98で検証したとおりだった。
木村社長は記者会見で「 思い込みや記事のチェック不足などが重なったことが原因 」と語ったが、なぜその「思い込み」が起きたかといえば、それは朝日が「脱原発」をイデオロギー化していたからなのだ。
「脱原発」にせよ「原発推進」にせよ、イデオロギー化すると、情報を自分の都合のいいように捻じ曲げて解釈したり、都合の悪い情報は隠蔽したりする。「原発推進」のメディアが、原発なしでこの夏は乗りきれないと毎年のように宣伝したのも、イデオロギー化によるプロパガンダだった。
そもそも吉田調書には、もっと注目すべき重大な箇所があったのに 、朝日新聞の大チョンボによって、誤報問題ばかりが注目され、慰安婦問題の陰に隠れてしまっている。由々しきことである。
公開された「吉田調書」では、吉田元所長は事故当時の菅直人首相についてボロクソに言っている。
「逃げたと言ったとか言わないとか菅首相が言っているんですけども、何だ馬鹿野郎というのが基本的な私のポジションで、逃げろなんてちっとも言っていないではないか。注水とか最低限の人間は置いておく。私も残るつもりでした」
「『撤退』みたいな言葉は、菅氏が言ったのか誰がいったか知りませんけども、そんな言葉、使うわけがないですよ。テレビで撤退だとか言って、馬鹿、誰が撤退なんていう話をしているんだと、逆にこちらが言いたいです」
「アホみたいな国のアホみたいな政治家、つくづく見限ってやろうと思って」
さらに、菅氏が首相辞任後、東電が逃げるのを自分が止めたかのような発言をしたことに対しては、
「辞めた途端に。あのおっさん(菅氏)がそんなの発言する権利があるんですか。あのおっさんだって事故調の調査対象でしょう。そんなおっさんが辞めて、自分だけの考えをテレビで言うのはアンフェアも限りない。事故調としてクレームつけないといけないんではないか」
と批判している。
さらに、菅政権が設置を決定した政府の事故調(事故調査・検証委員会)の初会合で菅氏が「私自身を含め被告といったら強い口調だが」と発言したことについては、
「私も被告ですなんて偉そうなことを言ってい たけども、被告がべらべらしゃべるんじゃない、馬鹿野郎と言いたいですけども」
と怒りを顕わにしている。
そして、「 あのおっさん 」「 馬鹿野郎 」「 アホみたいな国のアホみたいな政治家 」…と、あまりにもストレートに心情を吐露したこれらの発言を根拠に、菅元首相への批判や責任追及の声が再燃する事態となっている。
だが、吉田調書だけを根拠に、これを絶対視して誰かを批判したり、責任追及をしたりするようなことは、決してやってはいけないことなのである。
そもそも、吉田調書を作成した政府の 事故調 というものは裁判や審判とは違い、当事者の責任を追及するための機関ではない。
航空事故や海難事故などの調査・検証委員会と同様、事故原因を究明して、将来の事故を防ぐための知恵と教訓を得るために設置されるものなのだ。
菅氏は事故調の初会合で「私自身を含め被告」と言っているが、つまり菅氏も「事故調」とはどういうものなのかをよく理解していなかったことになる。
事故調が検証の過程で得た調書などは「絶対非公開」が大原則である!
発言に責任が問われず、非公開であるからこそ関係者は誰をはばかることもなく、何でも差し障りなく発言することが可能となる。
そうして集めた証言や資料を照合、分析、検証して事故原因を特定し、未来への教訓にしようというのが「事故調」というものなのだ。
よって、 最終的に得られた事故調の検証結果は開示されなければならないが、 検証過程の聴取記録は「免責かつ非開示」 というのが世界標準の普遍的な原則である。
吉田氏が暴言気味の言葉まで用いて菅氏を批判しているのも、「絶対非公開」が前提だからだ。
また、吉田氏が、菅氏がテレビで自分の考えを話したことに憤っていたのも、事故調の調査対象者は非公開で証言し、事故調によって他の証言と照合する等の検証を受けなければならないからである。
吉田氏を始め他の対象者は皆そのルールを守っていたのに、菅氏だけがテレビで自分の考えを話したことが「アンフェアも限りない」からであり、こんな行為には事故調がクレームをつけなければならないはずだったからである。
しかも吉田氏は生前、もともと非公開が原則なのに、さらに念を押して公開を望まないという上申書を提出している!
吉田氏が公開を望まない理由は二つあった。
一つは、
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!
政府事故調の吉田調書という、現場を最もよく知る人の証言においては、「東日本壊滅」が実感としてあったという1点こそが、最も重視されなければならなかったと思われます。それなのに、事故の被害を過小評価したい原発推進派は当然のことながら、大々的に原発の危険性をアピールしても良さそうな脱原発派の朝日までが、単に読売にダメージを与えられる材料ぐらいにしか考えず全く重要視していなかったことが浮き彫りとなる内容でした。
朝日をはじめとするマスコミ人には、イデオロギーのプリズムを通してしか資料を見ないという長年の習性がついているため、自分たちにとって都合の良い資料かどうか、論敵にダメージを与えられる材料かどうかにしか目が行かず、この社会にとって何が最も大切なことかという公の視点が欠けていたり、本来公開してはならない調書を公開するというルール違反を見落としていたり、資料を読み間違えて大誤報を出してしまったりするわけです。
これに対して、事故直後は市井の民の方がまともな直観を働かせることができたように思います。文化人ではありますが、坂本龍一氏のほうが「東日本壊滅」を直観し、まともな意見を言っていました。「麗しき日本の国土を汚し、未来を担う子どもたちの健康を害しているものに対して、なぜ日本人はもっと怒らないのか」「皇室になにかあったらどうするんですか」「これが幕末なら、僕は脱藩浪士になって、桜田門の変を起こしていましたよ」と。
しかし、市井に暮らす人々もイデオロギーに毒されたマスコミとネット住民が流す大量の情報に曝露しているうちに徐々に直観が鈍り、吉田調書に触れても「ツッコむとこ、そこ?」という読み方をしてしまい、マスゴミやネトゴミと同じような意見に染まってしまうのでしょう。ちなみにネット住民が自ら情報発信し始めるときには、多くはすでに何らかのイデオロギーに毒された状態で発信を開始しており、その上閉鎖も強いためマスコミ以上に空気に流されやすいと思われます。
毎日大量に発信されるマスコミ報道に触れてもネット情報に触れても、自分の感覚を研ぎ澄ませて判断することが今ほど求められている時代は無いと思われます。
今回もとても勉強になりました na85
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