今日、TPP,原発、オスプレイ、増税などを見ると、我々国民の側の騙される責任をひしひしと感ずる。この問題については第2次大戦後、伊丹丹万作氏が指摘し、何人かが引用している。極めて貴重な発言なので、共通の財産として皆で知っておきたい。底本:「新装版 伊丹万作全集1」筑摩書房 初出:「映画春秋 創刊号」1946(昭和21)年8 入力:鈴木厚司、 校正:田中敬三: 青空文庫作成ファイル

多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。みながみな口を揃えてだまされていたという。私の知つている範囲ではおれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。ここらあたりから、もうぼつぼつわからなくなつてくる。多くの人はだましたものとだまされたものとの区別は、はつきりしていると思つているようであるが、それが実は錯覚らしいのである。たとえば、民間のものは軍や官にだまされたと思つているが、軍や官の中へ