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かわら版 3号 2013.01.02
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かわら版 3号 2013.01.02

2013-01-02 23:30

    もくじ

    1.HOTトピックス

    • ざっくり紹介:なるか、銃規制――「文化」が政治や企業に利用される時
    • フォーカス:レナード・ペルティエとアメリカインディアン運動
    • トリビア:エイミーのほろ苦い初めての就活

    2.DN大好き:EUノーベル平和賞に「ジョーク」続出
    3.書籍&映画:映画「アパルトヘイトへのロードマップ」
    4.コラム

    • 監獄それとも楽園? ハバナの革命広場から -斉木裕明

    5.字幕スクリプト付き動画:誰がチェを殺した? CIAの完全犯罪
    6.DNコーパス アクティブ市民のための英語



    HOTトピックス



    Democracy Nowから最新のトレンドを抽出してざっくり紹介。ニューヨークを中心に、米国の良識派や進歩的文化人やアクティビストが、いま注目している話題をお届けします。字幕では古くなってしまう事件、気になる事件のフォローアップ、トリビアなどのコーナーも有り


    なるか、銃規制――「文化」が政治や企業に利用される時



    コネティカット州の小学校で12月に発生した銃乱射事件を受けオバマ大統領は銃規制強化に向けて積極的に取り組む姿勢を見せています。これまでも米国での銃規制は、大統領の命、あるいは乱射などによるおびただしい死傷者の命と引き換えにようやく大統領や議会が重い腰をあげる「やっかいな力仕事」でした。1934年の連邦銃器取締法(National Firearms Act of 1934)、1968年の銃規制法(Gun Control Act of 1968)、その修正版である1993年制定のブレイディ法( Brady Handgun Violence Prevention Act)の3つはフランクリン・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガンという各大統領の暗殺あるいは暗殺未遂事件をきっかけに生まれたものです。

    ブレイディ法は1981年に起きたレーガン大統領暗殺未遂事件で車椅子生活を余儀なくされた当時の大統領補佐官ジェームズ・ブレイディが夫婦で規制達成の悲願を捨てずに運動を続けた結果、事件から十数年後のクリントン政権下でようやく成立しました。連邦政府のライセンスをもつディーラー、メーカー、輸入業者から銃を購入する人の身元調査を義務づけ、特定の条件の人々(重罪犯罪歴、精神疾患、麻薬中毒、不法滞在の外国人、未成年者など)への銃の販売を禁止しましたが、銃の展示即売会などライセンスを持たない人からは身元調査なしに銃を買えるという抜け穴ができてしまいました。また1994年に10年間の時限立法として制定された「アサルト・ウェポン規制法」は、セミオートマティックライフルなどの「アサルトウェポン」と、装弾数11発以上のマガジンについて、輸出用・軍用・法執行機関用以外での製造・所持を禁止しましたが、規制反対派のブッシュ(息子)大統領が延長の手続きを行わなかったため、2004年に失効してしまいました。

    一概に銃文化というけれど

    米国の人口は3億1千万人、市民が所有する銃は3億挺程度とみられており。国民1人頭1挺の計算になります。一方で米国で実際に銃をもつ人の総数は過去40年間にわたり減少しているともいわれます。つまり、銃をもたない人の割合が増える一方、一人でいくつもの銃器をもつ人が増えているのです。支持政党別にみれば、民主党支持者で銃を所有している人は25%なのに対して共和党支持者は60%にのぼっています。また、都市部に比べ農村地帯の方が銃をもつ人の割合が圧倒的に高くなっています。ハンティングやターゲット射撃など、子供の頃から銃のある暮らしがあたりまえという環境で生まれ育つ人もいれば、銃に一度も触わることなく生涯を終える米国人も、もちろんどっさりいるわけです。

    憲法修正第2条――自己防衛のための武装の権利

    英国の圧政に対して武器をもって立ち上がった市民の革命戦争によって独立を勝ち取った米国。憲法修正第2条は「自由な国家の安全にとって、規律ある民兵が必要であるから」という前提のもと「人民が武器を持ち、携帯する権利」を保障すると謳っています。けれども、銃規制派と規制反対派との間で、修正第2条の解釈は異なっています。銃規制派は、「民兵(すなわち現在の州兵)に加わった時だけ、市民は武器を所持できる」と言っているのだと考えます。規制反対派は、「市民が武器をもつのは、連邦政府の専制化を防止し、自由を守るための市民の不可欠な権利」と考えます。2008年の連邦最高裁判決で憲法は「自己防衛目的での銃の所持を禁止できない」とし、この論議に決着をつけました。このような市民が銃をもつ権利を「なんと野蛮な」とみることもできますが、たとえば1960年代などに暴力的な差別に抗して権利を求めて闘ったマイノリティの運動の中には、法や当局が差別を許容し、マイノリティの運動に対して暴力的な危害や脅威を与える相手に加担する時、自己防衛のため武装する権利が残されていることは、実際に武力を行使するかどうかとは別に、自らを解放していく運動の大きな支えになったらしいことも、知っておいて良いことかもしれません。

    ウォルマートで飛ぶように売れるアサルトウェポン

    アサルトウェポン規制法が失効してしまったいま、銃規制の焦点のひとつは、アサルトウェポンです。現在、オバマが意図している規制は、兵器なみに殺傷力の強いアサルトウェポンや高性能弾倉の販売禁止、銃の購入希望者の犯罪歴や病歴の確認など身元調査の強化などを軸にしていくのではないかとみられています。

    コネティカット州の小学校銃乱射事件が起こる前、感謝祭あけの2012年11月26日付けのニューヨークタイムズ紙にこんな記事が出ています。「2年連続でブラックフライデー(感謝祭の翌日の超割引ショッピングデー)の銃購入者は記録破りの数にのぼると見られている」。しかもぞっとするのは、銃と銃弾の売り上げが全米最大の小売店は、ごく普通の人々向けのスーパーマーケット「ウォルマート」だという事実です。コネティカット州の乱射事件の主要な凶器となったセミオートマティックライフル「ブッシュマスター223」は、ウォルマートの今年のブラックフライデーセールの目玉商品でした。米軍が戦闘のために使用する自動小銃M16を市民にも売れるようにアレンジした製品だといわれています。そんなアサルトウェポンが射撃好きに人気らしいのです。また護身用にも「アサルト・ウェポンがあれば恐くない」と思う人が多いのか、オバマが新たな銃規制をほのめかした途端に、真っ先に規制されそうなこの手のタイプの銃の売り上げが各地で一挙に急騰しました。バージニア州のある銃器店の店主は、「売り上げが4倍に増えた。売り上げの4割は女性とシニアです」と述べています。お年寄りがアサルトウェポンを手元におかないと安心して暮らせない社会?マジに?誰かが、わざわざ恐怖をあおってはいない?

     
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