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エクセルギーをしゃぶり尽くせ(3)シリーズ最終回です。前回はエクセルギーを考えることで編み出された自己熱再生法の絶大な効果を紹介しました。
エクセルギーの考え方を使うことで、どこでエネルギーを非効率に使っているかをあぶり出すことができ、それをエクセルギーを無駄にしない方法に変えることで、省エネを進めることができるようになりました。(1)で紹介した電気ストーブの例も(2)の自己熱再生もそれら単体はエクセルギーを使わなくても説明できますが、エクセルギーを使うことでそれらを含め他の様々な場面も同じように説明できます。
たとえばのちほど紹介する省エネ型石炭発電のエクセルギーチャートはこんな感じ。
エクセルギーを使うことで、どれだけ電力を取り出し、どれだけ再生し、どれだけ損失があるかということをチャート化することができます。このように革新的なエネルギー理論と技術体系が確立されたのです。
そもそも省エネをするということはその分燃料費が浮きます。製造の過程で省エネができればその分コスト競争力が上がります。省エネというとなにか我慢するようなイメージがありますが、そうではない攻めの省エネもあるわけです。
今時の省エネ状況については以前NHKクローズアップ現代で分かりやすくまとめられました。
眠れる熱エネルギーを活用せよ - NHK クローズアップ現代
特に印象的なのは次の日本とドイツを比較するグラフ。
常識的には、世界は左の日本のグラフのようにエネルギーを使えばつかうほどGDPが成長します。しかし、ドイツはエネルギー消費を増やさなくてもGDPを成長させることに成功しています。
今後日本でもこのような動きが出てくると見られます。すでに日本のグラフもそうなり始めているようにも見えます。
その中でも今回紹介したエクセルギー技術は、台風の目になることでしょう。現状でも5年で投資が回収できるあたりまで来ているそうで、今後3年で回収できるようになるそうです。それにしたがって、導入する企業がどんどん増え普及すると考えられています。大学の講義でも良く取り上げられているようですし、企業もエクセルギーがわかる技術者を求めているようです。
そしてなんといっても、省エクセルギーは日本発の技術です。ここでこの技術を一気に立ち上げれば有力な輸出産業になるでしょう。経済活性の一翼になるかもしれないのです。
省エクセルギーという言葉も広まるかもしれません。「省エク商品」が流行るかもしれないし、政府も便乗して「エクポイント」とかやりだすかもしれません。
さらに、再生可能エネルギーの固定価格買取制度や、前回紹介したバイオエタノールのコスト削減技術などが順調なら、再生可能エネルギーも普及し、化石燃料のエネルギー消費は抑えられます。
また、エネルギーの貯蔵技術も急速に進んでいます。ここでも圧縮空気を用いた貯蔵技術についてのブレークスルーを紹介しました。エネルギーの貯蔵技術が進むと気まぐれな再生可能エネルギーが使いやすくなり普及が進みます。
ドイツもエネルギー消費量が横ばいになったように日本もよこばいになりそうなことについては、すでに予測も立っています。たとえば日本総研の予想を示した次の記事では、
日本総研、2030年の電力需要-15%、CO2排出量-19%を予測
表題通り将来のエネルギー消費量は減少するとしており、推移を示したグラフでも足元から減少に入っています。
(「日本総研、2030年の電力需要-15%、CO2排出量-19%を予測」より)
また政府の予想である
「長期エネルギー需給見通し」のとりまとめ
でも3つあるシナリオのうちもっとも積極的に省エネが進む場合は、足元から減少していますし、中庸なシナリオでも増加はほとんどありません。
日本のエネルギー消費の増加傾向は完全に止まったのです。
これは衰退の兆しなのでしょうか。そんなに悲観することはありません。すでに増加が止まったドイツが衰退しているようには見えません。
あるいは、とあるグラフを見てみましょう。国土交通省の水の利用状況の工業用水使用量等の推移です。クリックすると元サイトで元サイズで見られます。
水の回収率が1950年代から1980年頃まで急速に進んだことによって、工業用水の使用量は大幅に伸びたものの、補給される水の量は遥か昔1973年をピークに次第に減っています。このときに水回収技術が高度に発展したことで、日本の水技術は世界トップレベルです。水の補給量が増えなかったからといって、経済の足をひっぱってなどいないでしょう。
今後省エクが急速に発展すれば、同じような展開になるでしょう。つまり化石燃料の消費量は減りますが、技術は発展し輸出産業に発展するという展開です。
日本にiPhoneは作れないかもしれませんが、こういうとこで世界を支えられたら、日本、充分かっこいくないでしょうか。
破滅的なエネルギー消費増加には別れを告げられ、しかも将来の産業も生まれそうです。省エク技術、今後目が離せません!!
エクセルギーの考え方を使うことで、どこでエネルギーを非効率に使っているかをあぶり出すことができ、それをエクセルギーを無駄にしない方法に変えることで、省エネを進めることができるようになりました。(1)で紹介した電気ストーブの例も(2)の自己熱再生もそれら単体はエクセルギーを使わなくても説明できますが、エクセルギーを使うことでそれらを含め他の様々な場面も同じように説明できます。
たとえばのちほど紹介する省エネ型石炭発電のエクセルギーチャートはこんな感じ。
(資料エクセルギーとコプロダクションの原理より)
エクセルギーを使うことで、どれだけ電力を取り出し、どれだけ再生し、どれだけ損失があるかということをチャート化することができます。このように革新的なエネルギー理論と技術体系が確立されたのです。
エクセルギーを利用した省エネ方法
エクセルギーの考えを元に省エネを進める方法は自己熱再生を含めたとえば次のような方法があります。い. 自己熱再生
前回紹介した圧縮で温度を上げる方法です。
ろ. 熱化学再生
例えばメタンをそのまま燃やすとエクセルギー損失が大きいので、メタンをよりエクセルギー損失の少ない水素に変換してから燃やします。メタンから水素への変換は排熱を利用することでエクセルギーを失うことなく行うことができるそうです。石炭火力発電の効率は現在40%強ですが、このような手法を駆使することによって将来65%くらいに高められるそうです。
1キロワットアワー当たりの発電コストに関する資料を見ると、石炭発電の発電コストは原子力のkwh あたり5.3円に次いで5.7円と安い方です。発電効率が良くなれば4円以下になるかもしれません。
は. コプロダクション
化学製品を作りながら電力を作るなど、エクセルギー損失を少なくなる組み合わせる手法です。従来電力を必要としていたエチレンプラントで逆に電力を供給できるようになった事例があります。
省エネが新たな局面に
このエクセルギーように革新的な省エネ技術が生まれる中、省エネは新たな局面を迎えています。省エネが俄然面白いのです。そもそも省エネをするということはその分燃料費が浮きます。製造の過程で省エネができればその分コスト競争力が上がります。省エネというとなにか我慢するようなイメージがありますが、そうではない攻めの省エネもあるわけです。
今時の省エネ状況については以前NHKクローズアップ現代で分かりやすくまとめられました。
眠れる熱エネルギーを活用せよ - NHK クローズアップ現代
特に印象的なのは次の日本とドイツを比較するグラフ。
常識的には、世界は左の日本のグラフのようにエネルギーを使えばつかうほどGDPが成長します。しかし、ドイツはエネルギー消費を増やさなくてもGDPを成長させることに成功しています。
今後日本でもこのような動きが出てくると見られます。すでに日本のグラフもそうなり始めているようにも見えます。
その中でも今回紹介したエクセルギー技術は、台風の目になることでしょう。現状でも5年で投資が回収できるあたりまで来ているそうで、今後3年で回収できるようになるそうです。それにしたがって、導入する企業がどんどん増え普及すると考えられています。大学の講義でも良く取り上げられているようですし、企業もエクセルギーがわかる技術者を求めているようです。
そしてなんといっても、省エクセルギーは日本発の技術です。ここでこの技術を一気に立ち上げれば有力な輸出産業になるでしょう。経済活性の一翼になるかもしれないのです。
省エクセルギーという言葉も広まるかもしれません。「省エク商品」が流行るかもしれないし、政府も便乗して「エクポイント」とかやりだすかもしれません。
さらに、再生可能エネルギーの固定価格買取制度や、前回紹介したバイオエタノールのコスト削減技術などが順調なら、再生可能エネルギーも普及し、化石燃料のエネルギー消費は抑えられます。
また、エネルギーの貯蔵技術も急速に進んでいます。ここでも圧縮空気を用いた貯蔵技術についてのブレークスルーを紹介しました。エネルギーの貯蔵技術が進むと気まぐれな再生可能エネルギーが使いやすくなり普及が進みます。
ドイツもエネルギー消費量が横ばいになったように日本もよこばいになりそうなことについては、すでに予測も立っています。たとえば日本総研の予想を示した次の記事では、
日本総研、2030年の電力需要-15%、CO2排出量-19%を予測
表題通り将来のエネルギー消費量は減少するとしており、推移を示したグラフでも足元から減少に入っています。
(「日本総研、2030年の電力需要-15%、CO2排出量-19%を予測」より)
また政府の予想である
「長期エネルギー需給見通し」のとりまとめ
でも3つあるシナリオのうちもっとも積極的に省エネが進む場合は、足元から減少していますし、中庸なシナリオでも増加はほとんどありません。
(資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し」より)
日本のエネルギー消費の増加傾向は完全に止まったのです。
これは衰退の兆しなのでしょうか。そんなに悲観することはありません。すでに増加が止まったドイツが衰退しているようには見えません。
あるいは、とあるグラフを見てみましょう。国土交通省の水の利用状況の工業用水使用量等の推移です。クリックすると元サイトで元サイズで見られます。
水の回収率が1950年代から1980年頃まで急速に進んだことによって、工業用水の使用量は大幅に伸びたものの、補給される水の量は遥か昔1973年をピークに次第に減っています。このときに水回収技術が高度に発展したことで、日本の水技術は世界トップレベルです。水の補給量が増えなかったからといって、経済の足をひっぱってなどいないでしょう。
今後省エクが急速に発展すれば、同じような展開になるでしょう。つまり化石燃料の消費量は減りますが、技術は発展し輸出産業に発展するという展開です。
日本にiPhoneは作れないかもしれませんが、こういうとこで世界を支えられたら、日本、充分かっこいくないでしょうか。
破滅的なエネルギー消費増加には別れを告げられ、しかも将来の産業も生まれそうです。省エク技術、今後目が離せません!!
この記事には、【馬車目線】からの解説