小飼弾です。先月の奥歯、実はまだ直ってません。いよいよ直るというその日に炎症再発が発覚。ですが予告どおり、本号は一月待たずして発行いたします。

200 Any Questions OK

今号の質問は、こちら。

Q.日本の原子力に未来はあるか?

一つにまとめるとこうなりますが、「貿易赤字を止めるためにも原発は再稼働させなければならないと考えるのですが弾さんどう思われますか」と「福島第一原発すらまだ予断を許さない状態なのに原発再稼働なんてとんでもないですよね。弾さんどう思われますか」という両極の意見の板挟みになっております。

A. 他国の原発にあって日本の原発にないもの

まずは現況を再確認しておきましょう。下の図をご覧下さい。

これは資源エネルギー庁の「我が国のエネルギー情勢」(PDF)の24ページ目にある図ですが、震災直前の2011年2月には32%だった原発の発電比率が、2年後の2013年2月には2%まで落ち込んでいます。それによる燃料費増大は3.2兆円。一機5000億円とやや高めに見積もっても、原発が6機、福島第一原発がまるまる一つ作れそうな金額です。

しかし経常収支を見ると、それにも関わらず日本は未だ黒字。世界一の海外資産が貿易赤字分以上稼いでいるわけです。少なくとも経済面から見れば、「コストは上がったけど払えぬほどではない」というのが今の日本の事情。拙著「中卒でもわかる科学入門」では、ゆえに「原発再稼働は趣味の問題」と言っていますが、これは世界的には非常に恵まれた立場で、たとえばチェルノブイリ原発を抱えるウクライナにはそれだけの余裕はありません。ロシアからパイプラインでずっと安い天然ガスを買えるにも関わらず、むしろそれゆえソ連崩壊後は経済面のみならず安全保障面でも原発に頼らざるを得ないのが実情のようです。

日本にあって他国にないもの、それは燃料を買うだけの金ということになります。わずか2年で32%が2%になり、にも関わらず計画停電も避けられた日本の電力供給システムは、そうであるが故に「原発は必要である」という設問に対する反証となっています。原発再稼働を望む供給側にとっては不都合が真実と言えるでしょう。

A. 原子炉にしかできないこと

(原発は)ものすごい技術なのに、熱を出してそれで水を沸かし、タービンを回してるだけ。そしてその熱を水で冷やし続けなければならない稚拙な原理

加藤登紀子も対談で指摘しているとおり、この点においては原子力発電というのは「稚拙な原理」であることは否定しがたく、しかも「火を落としても」炉の冷却を止められないという意味においてその稚拙さは火力にも劣ると言われると、返す言葉が見つかりません。

それでは原子炉にしか出来ないことは存在しないのでしょうか?

実は一つ存在します。