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格闘技ファンから熱視線を浴びる格闘家集団「Team DATE」の名誉顧問・吉田かずお氏インタビュー!! 太気拳創始・澤井健一や「空気投げ」三船久蔵をよく知る人物だった! 武道を語るロングインタビューです!
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――Team DATE名誉顧問である吉田かずお先生は武道に精通してるだけではなく、ドンキーカルテットやザ・ドリフターズの一員として芸能界で活躍されてたんですね。
吉田 若い人たちはボクのことはご存じないと思うんだけどね。ドンキーカルテットというバンドやるその前には、カントリーウエスタンのほうもやっていて。こっちはね、いまでもやってるんですよ。今年2月にカントリーの連中が集まるイベントがあって、その司会をやることになってるんですけど。芸能活動よりも武道のほうが長いんですよ(笑)。
――太気拳の澤井健一先生のお弟子さんだったんですよね。
吉田 ボクは澤井先生の3番目の弟子になるのかな。
――3番目! かなり貴重な武道経験をされてるんですねぇ。
吉田 澤井先生にはいろいろと教わりました。でも、三船(久蔵)十段と稽古した時間のほうが長いんですよね。
――三船十段とは、あの「空気投げ」の三船十段ですか?
吉田 そうですよ(笑)。
――ええええ!? 伝説の達人を2人もよく知るなんて!
吉田 ボクは講道館少年部の頃から通っててね。三船先生とは家が近所だったから、講道館の行き帰りが一緒になったりして、毎日のように稽古してもらいました。現在ボクは81歳なんですけど、三船十段と乱取りしたことある人ってもういないと思う、世界中でも。ボクが大学生のとき三船十段はもう講道館に来られてなかったですから。そういう意味では貴重な経験はしてるよね。
――そもそも吉田先生が格闘技を始めたきっかけは?
吉田 ボクは小学生の頃から柔道をやっていたけど、当時は格闘技を始める理由はひとつしかなかったんです。ケンカに強くなりたい。
――ストレートな理由なんですね。
吉田 いまの若い人たちにはそういう考えではないんですよね? いまは柔道だってスポーツとしてやってるわけじゃないですか。空手やろうなんて人たちだってね、当時はケンカを強くなりたいという理由以外はなかったんですよ。当時はいまみたいに試合に出たりね、選手権に出るなんて機会がそうそうなかったですから。
――競技として試す機会があまりなかったと。
吉田 あの頃の柔道家は毎日のようにケンカしてたそうですよ。相撲取りを何人投げたとか。木村政彦なんかにしても柔道対拳闘というショーをやってから講道館を破門になっちゃったでしょ。そういう人たちがけっこう多かったんですよ。徳三宝なんかはさ、講道館の周りにいる野良猫を木剣で叩き殺して皮をはいで猫鍋をやってたり、酒の匂いをプンプンさせて稽古したりして。木村政彦もその中のひとりですけど、まだいいほうなんですよ。
――鬼の木村政彦でまだマシ(笑)。ケンカが強くなるために格闘技をやってた時代なんですね。
吉田 だからボクは柔道がオリンピック種目になったときに大反対した側なんです。これで柔道がスポーツになっちゃうし、柔道が武道たる意味がなくなってしまう。なぜかというとですね、当時は柔道って背の小さい人間しかやらなかったんです。
――嘉納治五郎や三船十段も160センチもなかったそうですね。
吉田 講道館に身体のデカイ連中が入ってくると、師範代が「アンタは柔道をやるより相撲に行きなさい」って追い返した時代なんです。昔から相撲取りは身体が大きくて力が強い人間がやるもんだったけど、小さい人間がデカイ人間を倒すには柔道や空手しかなかった。そのための技術がたくさん柔道にはあったんですが、いまだと「それは反則技」って言われるんですよね。
――柔よく剛を制すものではなくなってしまったんですね。
吉田 三船十段なんかはそういう技で身体の大きな人間を倒すのがもの凄くうまかったし、そういう技がないと柔道は成立しない武道だったんですよ。やっぱりでかい人間を投げ飛ばすのが柔道ですから、オリンピックのスポーツになるとそういう技術がなくなっちゃうから大反対したんですが、現実そうなっちゃいましたからね。今度は空手がオリンピックの種目に取り上げられるでしょ? これも大反対ですよ。
――吉田先生は空手もやってたんですか?
吉田 やってました。さっきも話したようにボクは講道館で柔道をずっとやっていて、高校のときは黒帯を締めてたんですけど、日大では空手部に入ったんです。柔道部でも空手部でもやれば推薦で入学できるぞと。
――えっ、そういうもんだったんですか(笑)。
吉田 受験は当然受けたんですけど、じゃあ空手をやってみようと。4月から入学なのに1月から大学の空手部に通ってましたからね。あとその頃からカントリーウエスタンが好きで米軍キャンプで演奏してて。カントリーは普通のサラリーマンより金がいいんですよね。ボクが日大が出た頃、大卒の初任給は13000円ぐらい。でも、米軍キャンプに1回行くと2000円もらえたんですよ。けっこうなお金ですよ。いまだと30000円くらいの価値がある。
――お金も稼げるし、バンドが面白くなっていったんですね。
吉田 そっのほうが面白くなっちゃってズルズルとね。新宿南口には、キャンプに行くカントリーウエスタンの人間が集まってるんですよ。ジャズの連中は東京駅って決まっていてね。そこで「トランペットがいないか?」ってメンバーを探して、7〜8人で木更津や横須賀の米軍キャンプに行くんです。そこでベースをやってた、いかりや長介さんと知り合ったんです。
――そこから芸能活動が始まって。
吉田 昔の芸能活動はメチャクチャ忙しかったですから。そこら中にクラブやキャバレーがあった時代でね、ボクは酔っぱらいの前でやるのが好きなんです。だいたいの客がストリップとか女の子目当てに来てるから、そういう連中に黙らせるには腕を問われるんですよ。
――酔っぱらいに絡まれませんでした?
吉田 灰皿が飛んできたこともありますけど、キャバレーのショーがつらかったと言ってる奴は、つまりウケてなかったということですからね。
――そのあいだも格闘技はやられていたんですか?
吉田 空手は大学3年の頃にやめちゃったんですよ。なんでやめたかというと、柔道と空手を一緒にやると両立できないんですよ。それで空手をやめて柔道に専念してたんですけど、カントリーウエスタンのほうが忙しくなっちゃって、いつ大学を卒業したのかわかんなくなっちゃったんですよ。そんなときに、あるところから「もの凄く強い人間がいる」という噂を聞いて。そのもの凄い人間というのは、澤井先生。
――どういう噂を耳にしたんですか?
吉田 たとえば、プロレス道場に変な親父が現れて、みんなぶん投げられたという話ですね。
――はあ〜。たしかに澤井先生の道場破りは有名でしたけど!
吉田 そんな話を聞いちゃったもんだから「ぜひ会わせてくれ」ってことで、ある人間を通じて会わせてもらったんです。その頃の澤井先生は2人くらいしか教えてなかったんですけどね。ひとりはね、澤井先生の息子さん。「明治神宮に来い」ってことで屋外で教えてもらうんですよ。
――伝説の稽古に立ち会っていたんですね……凄いなあ。
吉田 その頃はね、「気功」という言葉もなかったですから。ただ人間には「気」というものがあって、澤井先生いわく「気」とは何かというと電池なんだと。懐中電灯がふたつあって、ひとつは新品、もうひとつはボロボロ。どっちが使えるかと言えば、電池の入ってるほうの懐中電灯。充電するのが「気」なんだというわけです。
――吉田先生はそのお話に納得されたんですか?
吉田 いや、ピンとは来ないけど、強くなりたかったですから。その澤井先生がどうして強いかわかったかというと、「腹筋を固くしろ」と言われて澤井先生の手が自分のお腹に当てられて、気合いと共に背中に突き抜けられるようなイヤ〜な感じがしたんです。これは「寸勁」とか言われるものなんですけど。
――澤井先生の技を体感したんですねぇ。そこから明治神宮で教わることになったんですね
吉田 教わったのは「立禅」と「這い」。太気拳の基本動作だけです。澤井先生は「騙されたと思ってやれ」と。ボクが教わる前にも何人か弟子はいたんですけど、みんなやめちゃうんですよ。結局、手を組み合わせて動かしてるだけで強くなるかどうかはわからないですから。
――ああ、たしかに疑問も思っちゃいますねぇ。
吉田 でもね、凄く強くなったんですよ。あるときに空手の道場で組手なんかやってみると、相手は間合いに入り込んでこれないんです。逆にこっちが接近してるのに相手は入ってこれない。みんなビックリしますし、太気拳が凄いのはなんでも本能にするってことなんです。
――本能ですか?
吉田 たとえば回し蹴りが来たら、普通は後ろに下がってかわすでしょ。でも、太気拳は本能でフッと前に出るんです。いままでは後ろに下がるから相手の足の先がぶつかるけど、前に出ることで相手が吹っ飛すことができるんですよ。
――たしかに回し蹴りの最中ですから、相手は不安定ですね。
吉田 これは太気拳を相当やってないと、その動きはできない。瞬間的に前に出ることがなかなか難しいけど、本能にするとできちゃうんですよ。澤井先生が言っていた「気」というものは、土壇場になって出るんだと。ボクも土壇場に出たことがあるんですね。
――どんな場面だったんですか?
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話が凄すぎて疑わしいほどだが、おかしいことは言ってない。三船十段、澤井先生と組手した経験がある人間なんて、確かにもうこの世にいないだろう。今までこの人を知らなかったのが不思議なくらいだ