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骨法離脱の真相が明かされ、大きな反響を呼んだ船木誠勝の『1984年のUWF』インタビュー。しかし本人の証言が当てにならないのがプロレス史の難しさ。というわけで、80年代末期に骨法に在籍していた漫画家の中川カ〜ル氏に話を聞いてきました! 骨法で何が起きていたのか?(聞き手/ジャン斉藤)




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オリジナルの骨法Tシャツで取材に臨んだ中川先生!これは欲しい!!


――今回は中川カ〜ル先生に船木誠勝インタビューの裏取りをさせていただきたいと思ってます! じつは昨日船木さんを取材してきたんですけど、2003年に出版された自伝に書いてあった記述を否定してたんですよ(笑)。

中川 それは凄く船木さんらしいですよね(笑)。船木さんとは骨法のときに一緒だったんですが、船木さんって嘘はつかない人ですからね。誰かに気を遣ったりしないで正直になんでも言っちゃうから勘違いされちゃうんですよ。

――だから自伝すらも否定してしまう、と。中川さんは『1984年のUWF』に登場していますけど、どういう経緯で取材を受けたんですか?

中川 もともと柳沢さんとは知り合いで。それで前田日明のレガースを作成していた当時の話をしたんです。

――『1984年のUWF』を読んでどう思われました?

中川 メチャクチャ面白かったと思うんですけど、怒ってる人が多いでよね……。そんなに怒るようなことなのかって。

――なぜ怒ってると思います?

中川 なんなんですかね? 前田(日明)さんのことでしょ、要は(笑)。

――まあ、そうなんでしょうね。

中川 そんなに酷いことは書いてないと思うんですけどね。

――主に修斗方面からUWFを見れば、ああいう書き方にはなるとは思うんですね。

中川 だから前田日明を叩くために組み立てていったわけじゃないと思いますよ。中井(祐樹)さんの目を潰したゴルドーや、怪しげなビジネスをやってる神社長が信用ならないという声もありますけど、それって新生UWFとは関係ない話ですし。

――「ここは間違ってるけど、あそこの部分は資料として信用できる」という見方でいいと思うんですけど、「この本を認める・認めない」という極端な空気になってますね。

中川 塩澤幸登さんの『U.W.F.戦史』に怒るんだったらまだわかるんですよね。あっちのほうが酷いし。

――『1984年のUWF』の1984倍酷いですよ、あの本は。それでも前田日明さん推薦図書なんですけど(笑)。

中川 俺も前田日明は好きですけど、『1984年のUWF』で前田日明の価値は落ちないですよ。落ちると思ってるファンはいままで前田日明の何を見てきたんですかね? ちょっとオタオタしすぎですよね。

――歴史的事実と歴史的評価は決して切り離せないものですが、それにしてもゴッチャに捉えてる方が多いんですね。フミ斎藤さんのインタビューで聞き手のボクが「前田日明は競技をやったことがない」という事実を言っただけで、前田日明を評価していないと受け取ったのか「あれはヒクソンが逃げたんだ!」みたいなコメントが飛んできたり。「競技をやってない」と「ヒクソンが逃げた」には何の繋がりもないし、そもそもヒクソンが逃げたということにしても検証が必要になるんですけど。

中川 フミ斎藤さんはあのインタビューで「柳沢さんはプロレスを利用している」と言われてましたけど、そんなことはないと思うんですね。柳沢さん、プロレス大好きですし、俺もよく一緒にプロレスを見に行ったりするし。新生UWFは熱心に見てないから、前田日明や新生UWFが盛り上がっていく過程は過去の資料を追っていくしかなかったと思うんですけどね。べつにプロレスを利用しているわけではないですよ。

――中川さんは新生UWFをリアルタイムで目撃してたんですよね。

中川 旗揚げ戦とNKホール大会以外は見に行ってるんですよ。当時『闘翔ボーイ』を連載していた竜崎遼児先生のアシスタントをやってたんで、取材も兼ねてついていって。

――『闘翔ボーイ』はUWFや骨法とかを取り入れて描いていた格闘漫画でしたね。

中川 でも、新生UWFはつまらなくてしんどかったですねぇ。お客さんは入ってたんですけど。

――なぜつまらなく感じたんですか?

中川 単純に試合自体がつまらなかったです。あと雰囲気も気持ち悪くて……。旗揚げ戦以外でも後楽園ホールで前田と山崎一夫がシングルをやってるんですけど、2人の頭がぶつかって山崎が流血してそれで試合が終わったんです。前田が「これはスポーツだから……」みたいに言ったら観客が拍手して。その光景が凄く気持ち悪かったんですよ。ドクターが止めるならまだいいですよ。格闘家が自ら「やめましょう!」なんて言わないじゃないですか。

――船木さんが戸惑ったスポーツプロレスの気持ち悪さ。

中川 船木さんと鈴木(みのる)さんが入ったことで、つまらないUWFをなんとかしてくれないかなとは思いましたね。

――新生UWFは最初から格闘技ではないとわかってました?

中川 そうですね。竜崎先生はガチンコだと思ってましたけど。

――中川さんが「これは格闘技ではない」とは言わなかったんですか? 

中川 言っても聞かないんですよ。あの頃ってプロレス自体もボンヤリしていた時代だったじゃないですか。

――UWFが「こっちが本物である」と主張し始めて「普通のプロレスは本物じゃないんだ」って空気になってましたね。

中川 前田日明は「UWFはガス燈時代のプロレスをやりたかった」なんて振り返ってましたけど、後付けですよね(笑)。新生UWFは格闘技という打ち出しをしていましたよ。

――中川さんはどこで新生UWFはプロレスだと見極めたんですか? いまならともかく当時はその判断がけっこう難しいですよね。

中川 俺は旧UWFをガチンコだと思って見てたんですよ。でも、コスチューム屋でプロレスの仕事を始めたときに「UWFはガチンコだから大変ですよね」って言ったら「何を言ってるの?」ってバカにされて(笑)。「あ、違うんだ」って。

――業界人に教えてもらったんですね。

中川 前田がニールセンと戦うときのレガースを作る現場にいたんです。レガースって中身は発泡
スチロールなんですけど、そのときは前田日明側から旭化成の特殊な素材を持ち込まれて。上から卵を落としても割れないみたいな。ダメージを吸収する効果にどんな意味があるのかイマイチわからなかったんですけど(笑)。

――蹴られたほうに都合がいいかもしれない(笑)。

中川 あの頃って新生UWF側もマスコミに対してけっこう油断してたというか。名前は出せないですけど、ある有名スポーツジャーナリストから前田vsゴルドー戦のリハーサルの話を試合当日に聞かされてたんですよ。「前田の目が腫れているのはリハーサルでやっちゃったんだよね」って。

――
リングスの頃は内部の関係者ですら判断がつきにくいものになっていたのは、その反省からかもしれないですねぇ。

中川 新生UWFは最初はガチンコでやるのかなって思ってたんですけど、「あ、やらないんだな」って感じで。あと、どっちかいうと佐山サトルのほうが好きだったのでシューテイングも見てたんですよ。

――ああ、それなら違いがわかりますよね。


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