ラーマガ限定「NAKED」#006
麺や七彩 東京駅『鶏と小麦のかけ』
実食インプレッション
麺とスープだけで美味いと唸る一杯。究極の「かけラーメン」に人気ラーメン店が毎月月替わりで挑戦する、ラーマガ限定「NAKED」。通算第6作目を提供するのは『麺や七彩 東京駅』。阪田博昭さん、藤井吉彦さん両氏が作り出した一杯は、調味も薬味も一切無しの正真正銘、麺とスープだけのNAKED。
スープは上質な鶏だけで取った濃厚な鶏白湯。麺は小麦と水以外の要素を極力排した自家製平打ち麺。唯一許されている薬味は添えず、味付けもせずに麺とスープだけの味を楽しんで欲しいというコンセプト。別皿で添えられた醤油と塩は自分のタイミングで入れるスタイル。
鶏の旨味と小麦の旨味をただひたすら追求した一杯は、これまでの七彩のスタイルが昇華した一つの形になっています。
北島秀一
「麺とスープと薬味」と言うこの企画のレギュレーションを決めた時、まさか自ら条件を更に厳しくしてくるお店があるとは思っていなかった。それだけ味に自信が無いと出来ない事だが、いろんな意味で非常にアグレッシブなラーメンに驚いた。
その驚きの最たるものは、やはり鶏白湯スープだろう。調味料を全く加えず生(き)の状態で提供した例は幾つかあるが、ネギなどの薬味すら無いと言うのは私が知る限りは初。口に含んだ瞬間は一瞬無味かと思うが、一呼吸置いて鶏の旨味、香りがどっと押し寄せてくる。調味料が無い為か、分厚くありながらも水墨画のような単色に近い感覚で、鶏そのものがもつ味わい、生命力をストレートに表現している。
これに合わさるのが、太めでエッヂの立った麺。しっかり茹で上げられつつも歯ごたえと存在感を残している。普通こう言うスープだと細麺を柔らかく茹でて、スープとの絡みをより強めそうな物だが、敢えて強い麺にする事で「小麦」と言うテーマを際立たせている。ここもまた本当に攻め込んで来るなあ。
さすがにこのスープでラーメン一杯分の麺を食べさせるのはやや単調でもあり、途中から添付の塩と醤油を加えると、今度は調味料の役割が際立ってくる。単色に感じた鶏の旨味、香りなどの粒子に塩と醤油が色彩を加えたように、モノクロの味わいが一気に鮮やかになるその変化は圧巻だ。もともと生のスープを味わう為に感覚が鋭敏になっているんだろう。わずかな調味料で驚くほど感覚が刺激され、あとはフィニッシュまで一気である。
もともと難問であるNAKED企画を、更に条件を絞り込んでこそ実現したこの味の世界。残りわずかになってしまったが、是非確認していただきたい。
山路力也
この「NAKED」の企画を考えた時に、必ずや「麺や七彩」にはお願いすることになるのだろうと思っていた。阪田氏、藤井氏のお二人ならば、きっとこのコンセプトを面白いと思ってくれるに違いない。そして、他の店とはまったく違ったアプローチで取り組んでくれるに違いない。これはもうかれこれ十年以上の付き合いによる「確信」であったわけだが、見事なまでにそのものズバリの衝撃的なNAKEDを現出させてくれた。
素材そのものの味を突き詰めていくと、結果としてどんどん要らないものが取れていく。これはNAKEDそのものの考え方そのものでもあるのだが、しっかりとしたスープを引けば調味料すら邪魔に感じるという領域。さらに小麦の味を受け止めようとするならば、極力鹹水や他のものも排していくという意識。ここまでは私の中でもある程度想定の範囲内ではあった。しかし麺とスープだけを純粋に楽しむには薬味すら邪魔になる、というところまではたどり着けなかった。「鶏」と「小麦」ががっぷり四つに組んだこの一杯は、ただそれだけをひたすら楽しみたいと思わせる。ネギなどがあったらおそらく興醒めしたことだろう。これこそ究極のNAKEDの形と呼べるのではないだろうか。
深淵なる鶏の旨味をしっかりと受け止める存在感十分の麺。小麦の旨味広がる麺を優しく鶏の旨味でコーティングする鶏白湯。別皿で添えられた醤油と塩は、個人的には蛇足かなと思わなくもないが、これらを加えることでラーメンにおける調味の重要性や意義がクッキリと浮かび上がってくる。一つまみの塩が入るだけで、これほどまでにラーメンの味が変わるのか。ラーメンというものを新たに見つめ直すきっかけにもなる一杯ではないかと思う。
山本剛志
喜多方ラーメンのあっさり醤油味や稲庭中華そばなど、様々な味の引き出しを見せてくれる「七彩」。今回のNAKEDでは、シンプルな鶏白湯スープをシンプルな形で提供してくれた。
スープは通常よりもグレードの高い鶏を丁寧に煮出したそうで、それだけでも美味しいからと、そのままそれだけで提供してきた。これまでも限定で「鶏白湯煮込みつけ麺」などで、鶏白湯については定評のある七彩だが、今回の味は更に深く、切れ味があって唇にしつこさを残さない。
通常ラーメンに入れるタレも入らない。別皿に用意したのは、「タレ」にあたる醤油と塩。醤油は少し味付けを加えたそうだが、塩は店で使っている「ホンカオの塩」そのまま。これを入れるかどうかは食べ手の選択に委ねられているが、使わなくても物足りなさは全くない。レンゲにスープをとり、醤油と塩を少しずつ加えてみると分かりやすさが少し加わる。
NAKEDのかけラーメンで使用できる「薬味」すら使わず、ひたすらに鶏のうまみを舌に残させる逸品。麺とスープだけでどこまで行けるか、その実力を全力で発揮してくれた七彩の阪田・藤井両店主に心から感謝したい。
【NAKED #006】
麺や七彩 東京駅(東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅一番街 東京ラーメンストリート内)
「鶏と小麦のかけ」(950円)
一日10杯限定(11:00〜17:00のみの販売/東京駅限定)
販売期間:3月1日(土)〜31日(月)
(ラーマガ有料会員ではなくても注文が可能です)