ごきげんよう。有料メルマガ批評家の渡辺文重です。7月9日(水)に行われた「“津田本”発売記念プレミアムイベント」(http://honto.jp/cp/ebook/2014/tsudadaisuke/event-entry.html)に参加しました。今回は、その中で印象的だったトークを紹介したいと思います。

2014-07-09 18.50.10





前回の記事では「第1回ウェブライタードラフト会議」について記しましたが、そのイベントの中で、私は中川淳一郎氏から、次のような質問をされました。

「津田大介氏のすごい点は何でしょうか?」

私にとって津田大介氏はクライアントの1人であるため、その点に関しては最大級のリスペクトを示しながら、次のように答えました。

「何がすごいのか分からないところがすごい」

津田氏が注目された理由の1つには、タイミングや運があったことは確かです。しかし、一度つかんだ運を離さずにいられることは、間違いなく、津田氏の努力のたまものだと言えます。そのため、津田氏が活躍している理由は「運だけ」あるいは「タイミングが良かっただけ」とは思いませんが、一方で、継続した努力の内容が説明しにくいことも事実です。

そうした前提を踏まえつつ、「“津田本”発売記念プレミアムイベント」の話となるのですが、この中で、登壇者の1人である川上量生氏は津田氏のことを次のように評していました。

「セルフプロデュースに特化した存在である」と。川上氏はネットの特徴を「セルフプロデュースがうまい人しか人気者になれない」と語っていたのですが、「その最たる」が津田氏であるという指摘です。この指摘には、私もうなずくしかありません。

今後、「津田大介氏のすごい点は何でしょうか?」と聞かれることがあったら、私も「セルフプロデュースに特化している点」と答えることにしようと思います。

なお、川上氏は、個人によるマネタイズの可能性についても語っていました。川上氏いわく「もともとタダなものに値段を付けていたのがコンテンツ産業である」とのこと。この発言だけを切り取ってしまうと、異論反論があるとは思うのですが、消費者側に立った場合、受け入れられやすい考え方ではないかと思っています。

また、川上氏は「希少価値を付加することがコンテンツ産業の基本」だとも話します。これはクリエイター側の考え方です。「コンテンツはタダ」だと思っている消費者に対し、どのように「出し惜しみ」をしてお金を引き出すかが重要だということです。例えば、こうした才能の1つが、津田氏の「セルフプロデュース」能力なのかもしれません。



トークショー全体の雰囲気としては「個人の有料メルマガは難しい」という印象を受けたのですが、その中には、有料メルマガで成功する「ヒント」も含まれていました。

私の頭の中に残ったキーワードを挙げていくと、次の通りとなります。

・ネットのコンテンツは玉石混交
・有料の電子書籍は情報の密度を上げなくてはならないが、玉石混交なネットの価値観に染まっている
・まとめサイトで時間をつぶした時の後悔は半端ない
・テキストに比べ、動画は得られる情報の濃度が薄い
・8時間ぐらい1対1で議論して、やっと相手のことが分かる

こうしたキーワードから導き出した答えは、「濃密な時間を提供すること」でした。

可処分時間には限界があるため、1対1で8時間ぐらい議論して理解できるようなことを、数分で読了できるテキストへと圧縮することに「価値」を見いだせば良いのです。個人の有料メルマガが、単純な情報量で勝負しても、新聞や無料で読めるネット記事に勝てないことは自明の理。そのため、情報量で勝負するのではなく、濃密な時間を提供できるかで勝負することが重要なのです。



イベント終了後、懇親会が行われたのですが、そこで、株式会社ドワンゴ代表取締役会長である川上氏に、「『有料メルマガ批評』というブロマガをやっています」と、あいさつをしてみました。すると、うれしいことに「読んだことがある」との返事をいただきました。非常にありがたいことです。

しかしながら、その後に続いて出た言葉は「オススメのアニメを紹介する記事とか面白いね」というものでした。何という既視感! 3日前にも、同じようなことを言われた気が……。(詳しくは、前回記事「第1回ウェブライタードラフト会議に飛び入り参加したったぞ」を参照のこと)

いや、アニメの話が出てくるということは、社交辞令ではなく、本当に読まれたことがある証拠なので、非常にうれしいのですが、「有料メルマガ評論家廃業」という軍靴の音が、日に日に大きく聞こえている気がしました。とほほ。

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