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「戦略」とは敵とのコラボで創るArtである。|THE STANDARD JOURNAL 2
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「戦略」とは敵とのコラボで創るArtである。|THE STANDARD JOURNAL 2

2016-01-19 12:39


    おくやま です。

    日本人が戦略を学ぶときに、決して忘れてはいけないことがあります。
    それは、「戦略とは、相手との相互作用である」ということです。

    なぜ私がこのことを口を酸っぱくしながら
    言い続けなければならないのか、それにはわけがあります。

    なぜなら、日本のいわゆる「戦略」に関する議論の根底には、

    「自分の相撲をとるだけです」
    という、どちらかといえば「自分だけがうまくやれば成功する」
    という考え方があるように思えてならないからです。

    もちろんこれは間違っておりません。
    たしかに自分のスキルを磨くことは重要ですし、
    我の組織をうまく状況に順応させ、
    不測の事態に対応できるようにしておくのは極めて重要でしょう。

    それでも、それは全体の半分だけの話です。
    自分が、自分の組織ががんばる、というのは、
    戦略の全体の半分、つまり50%の話でしかないのです。

    たとえば今年に入りまして、
    東シナ海の尖閣諸島周辺がきな臭くなってきております。
    以下のニュースを一部引用してみますと、

    ===

    海上警備行動
    尖閣に海自派遣も…中国に伝達

    http://mainichi.jp/articles/20160113/k00/00m/010/085000c

    毎日新聞2016年1月12日 21時20分

    菅義偉官房長官は12日の記者会見で、
    沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に中国軍艦が侵入した場合、
    海上警備行動を発令して自衛隊の艦船を派遣する可能性があるとの認識を示した。
    そのうえで、政府が既にこうした方針を中国側に伝達したことを示唆した。

    政府は、平時に外国軍艦が領海に侵入するようなグレーゾーン事態への対応を強化してきた。
    昨年5月には、外国軍艦が安全を害しない限り他国の領海を通過できると定めた
    国際法上の「無害通航」に該当しない場合、海上警備行動を発令して海自を派遣し、
    退去要求する方針を閣議決定した。

    菅氏は会見で「昨年11月に中国海軍の情報収集艦が
    尖閣諸島周辺を反復航行した際には、
    外交ルートを通じて関心を表明している」と指摘。
    中国公船の領海侵入が後を絶たない現状が
    海上警備行動の発令対象になり得ることを明確に示し、中国側をけん制した。

    政府は「尖閣諸島に関する日本の領有権を認めることにつながるため」(防衛省幹部)、
    中国が無害通航を主張することはないとみて、
    中国軍艦が尖閣の領海に入った時点で海上警備行動を発令する構えだ。
     昨年11月の情報収集艦のケース以外にも、
    同12月下旬に領海侵入した中国海警局の公船に関しては、
    防衛省が「機関砲を装備しており、
    中国海軍のフリゲート艦を改造している」と分析し、警戒を強めている。

    ====

    ということになります。
    下手すると軍艦同士のにらみ合いになってしまうわけですから、
    かなり緊張感がただよってきますよね。

    さて、これに対してわれわれは
    「戦略的」にどのように考えればいいのかというと、
    普通の日本人的な発想であれば、
    「日本も自衛隊の強力な船を出して抑止力を高める」
    という考え方になると思います。

    ところがこれだけだと、どうしても「こちらがどうすればいいのか」
    という考え方が中心にあるだけで、
    「相手がこちらの反応に対してどのようなリアクションをしてくるのか」
    という考え方にまで至っておりません。

    わかりやすくいえば、これだけだと
    「ボールは相手のコートに入ったから次は相手のお手並み拝見だ」
    という考え方、つまり「自分の相撲をとるだけ」なのです。
    ところが戦略というのは、相手があってナンボのものです。

    いやむしろ、戦略というのは、
    いわば「敵である相手と共につくりあげていく芸術作品(アート)である!」
    という風にとらえる必要があります。

    これを考える上で極めて参考になるのが、
    戦争を相手との「カルタ遊び」や「レスリング」や「決闘」になぞらえた、
    クラウゼヴィッツの『戦争論』の中の考え方です。
    実は、そのはるか前に、そのような考え方を、
    自然界の物理法則から導き出していた戦略家がおりました。それが孫子です。

    孫子は「兵法」の最初の章である「計篇」において、
    戦争を行う上で最初に検討する要素として
    「五事」という五つの要素を挙げているわけですが、
    一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。
    という言葉で表現しております。

    最大の問題は、ここにある「一に曰く道」というもの。
    これは一般的には「君主と国民との意思統一」
    のような意味で捉えられているわけですが、
    実際はもっと深い意味が込められております。

    それは孫子が生きた時代に出てきた「タオ」という考え方。

    そしてこの「タオ」は陰陽によって構成されており、
    それはいわば二つの要素の対立・循環的な構造をあらわしております。
    これがわかると、孫子の戦略における「世界観」もわかります。
    なぜなら孫子は戦争を、

    「相手と自分の、いわば陰陽(タオ)の関係」

    という風にとらえ、その成り行きをダイナミックなものとして見ていたからです。

    そして戦略がダイナミックなものであるということがわかると、
    上の尖閣の問題も、日本側だけ、そして中国側だけの話ではないことがわかります。
    戦略は、二者の動きのある関係によってつくられていくものだからです。

    このような戦略の不可思議な点について、
    孫子のCDで詳しく解説しております。ご興味のある方はぜひ!

    ( おくやま )



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