大ヒットすると漫画家は孤独になる?
昔、大手出版社の年末の立食パーティーで友人と歓談していた時。自分達の後ろに「あだち充先生」がいた。
あだち先生は1人でいて、僕らの話をニコニコと聞いていたのだ。
小学館を支える巨匠なのに実に「普通の人」で、それが逆に凄いと感じた。
【漫画家のパーティー】
漫画家が集まる年末の大パーティー(謝恩会)に来る漫画家にはパターンがある。
アシスタントや取り巻きを沢山引き連れて来る「親分系」
モデルやタレントなんかを連れて全身ハイブランドで固めた「業界系」
自分の漫画に類するコスプレ的格好で独自のスタイルを貫く「カリスマ系」
さっきまで修羅場の仕事場でペン入れとかしてたであろう「抜け出してきた系」は適当な感じの普段着で1人で来る(ベテランに多い)
そんな「いつもの感じのベテラン」の中に初めてやってきた感じの「色紙持ち込み系」の新人漫画家がドキドキしながら混ざっている。
「漫画家パーティー」に最初に連れてってくれたのは江川達也師匠だった。
僕は藤島康介らと「江川一派の若い衆」としてその「漫画業界の奇妙な宴」に乗り込んだ。
【見えてくる孤独】
新人として飛び込んだ漫画家パーティーは、憧れの漫画家が溢れる夢のような世界に見えた。
エレベーターでは石ノ森章太郎先生と一緒になり、紅白ボーダーでキメた楳図かずお先生とすれ違う。
漫画のままの島本和彦先生が大声で喋っている。
ミスマガジン出身のアイドルがステージに上がる。
「去年は斉藤由貴がいたのになあ」とかいう声が聞こえる。
当時は「ただのお客」として入っていただけなので本当に気楽だった。
やがて自分も漫画家として連載を持ち、漫画家の友人も増えてくると、色々と内実もわかってきた。