志位委員長 福島第1原発を視察
汚染水増加 「収束」程遠く
東京電力福島第1原発(福島県双葉町、大熊町)が2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに伴う巨大な津波で史上最悪の原発事故を引き起こしてまもなく2年。日本共産党の志位和夫委員長らは9日、同原発を視察しました。壁面が崩れ落ち水素爆発の影響が生々しい4号機の原子炉建屋最上階や、敷地を埋める放射能汚染水をためた巨大タンク群、津波の爪痕がいまだに残る海側などを視察。視察を終えた志位氏は「『収束』には程遠い。事故の真っただ中にあるという状況で、とくに汚染水の問題が深刻だと痛感した」と述べました。
視察団は志位氏のほか、笠井亮、高橋ちづ子の両衆院議員、紙智子参院議員、党福島県県議団(神山悦子団長)ら。
視察団は楢葉町の作業拠点・Jビレッジをバスで出発。警戒区域内に入ると、車窓から荒れ果てた住宅や雑草が生い茂った畑が広がり、時間が止まったかのようです。
福島第1原発事故の復旧作業の拠点となっている免震重要棟の緊急対策室に入ると、志位氏は「過酷な条件のもとでの仕事に敬意を表します。非常に長く、多くの困難が予想されますが、健康と安全を第一に力を尽くしてください。私たちも国政にあるものとしてがんばります」とねぎらい、福良昌敏・第1原発ユニット所長らの説明を聞きました。
この後、視察団は全面マスクと防護服を着用し、バスで敷地内を移動。現在、1~3号機の原子炉内の溶融燃料を冷やす設備は総延長4キロメートルに及ぶホースで結ばれ、からまりあったホースが行く先々に見えました。とくに目立つのが、高濃度放射性ストロンチウムなどを含む放射能汚染水を貯蔵するタンク群。視察団は、高さ十数メートルある容量1000トンのタンクの前で降車。汚染水の量はすでに27万トンに上り、敷地内にタンクを設置できる限界が2年後に来るとの説明に、問題の深刻さを目の当たりにしました。
水素爆発で建屋の壁が崩壊した4号機では、使用済み燃料プール内の燃料取り出しのための建屋カバーが建設中でした。
志位氏らは、事故後に同号機の外側に据え付けられたエレベーターで最上階の5階に上りました。屋上の放射線量は毎時300マイクロシーベルトを記録。「3号機の影響です」との説明です。北側には、赤茶けてさびた鉄骨などが水素爆発で曲がり鳥の巣のような3号機原子炉建屋最上階が見えました。
1~3号機原子炉建屋は放射線量が高く人が立ち入ることができません。外観を見るためバスで通り過ぎると、3号機タービン建屋のそばでは、「1000マイクロシーベルト(1ミリシーベルト)以上」と説明がありました。
全原発廃炉に踏み切れ
視察後に志位委員長会見
日本共産党の志位和夫委員長は9日、東京電力福島第1原発の事故現場を視察した直後に記者団から現場の現状について問われ、「政府は『収束』といってきたが、収束とはほど遠い。事故はなお続き、その最中にある。そのことを現場を見て強く感じました」と述べました。
志位氏は、「とくに、汚染水の問題が非常に深刻です」と指摘。地下水が毎日400トンも流れ込み、汚染水が増え続け、一つあたり1000トンのタンクが2日半でいっぱいになるという状況であり、「仮にタンクを増やし続けても、あと2年で汚染水があふれる状況になる」との説明を受けたことを明らかにしました。
志位氏は「この問題一つとっても、事態は非常に深刻です。科学的英知を結集して打開と解決を図らなければなりません」と指摘しました。
さらに志位氏は、「4号機は燃料棒の取り出しにかかろうという段階だが、それ自体も非常に危険で困難な作業です」「1号機、2号機、3号機には(高線量で)近寄れず、バスで急いで横を通って見るだけでした」と述べ、瞬間の放射線量は毎時1000マイクロシーベルトにも達したことも紹介しました。
志位氏は「収束、廃炉の仕事は、福島の再生のために国の総力をあげてやりきっていくべき本当の大仕事だと痛感しました」と強調しました。
また志位氏は、事故収束の見通しも立たないなかで安倍政権が「新安全基準」で原発の再稼働をすすめようとしていることを批判し、「現場を見れば、収束もほど遠いもとでの再稼働など、まったく論外です」と指摘。いまだに第1原発の5、6号機や福島第2原発の廃炉手続きを進めていない東電の対応についても、「福島県議会でも全原発の廃炉を求める決議が全会一致で採択された。これは『オール福島』の声です。東電はその声にきちんと耳を傾け、全原発の廃炉に踏み切るべきだ」と強調しました。