TPPに「聖域」なし
共産党の指摘 メディアが裏付け
「後発国は再交渉不可」/「米国ルール押し付け」
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題をめぐり、野田前民主党政権も安倍自民党政権も「守るべきものは守る」として、交渉しだいで「聖域」「例外」が可能かのようにいってきました。これに対し、日本共産党は、例外なしに関税も非関税障壁も撤廃することがTPPの原則であり、交渉で農業などが「聖域」扱いできるかのような宣伝はごまかしだと批判してきました。この日本共産党の指摘の正しさは最近の報道などでも裏付けられています。
東京新聞は7日付夕刊で、2011年11月にTPP交渉参加を表明し、12年6月に参加が承認されたカナダとメキシコについて、米国など交渉を始めていた9カ国から「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」など、不利な条件を承諾したうえで参加を認められていたと報じました。
交渉で守れない
日本共産党は12年11月に発表した総選挙政策でも、交渉9カ国が発表したTPPの「大要」では、「商品・サービス貿易や投資への関税や障壁を撤廃する」と明記され、後から参加したカナダ、メキシコは「すでに合意した条文はすべて受け入れる」ことが条件にされたと指摘。「『守るべきものは守る』交渉などありえません」として、交渉参加に絶対反対の姿勢を貫くことの大切さを訴えていました。
カナダとメキシコの交渉参加をめぐる極秘の「念書」問題は、当時話題となり、カナダ国内でも「完全な屈辱的参加」と批判が起きました。日本国内でも、例えば農業協同組合新聞が12年7月10日付で、メキシコとカナダに送付された書簡について、▽現行の交渉参加9カ国がすでに合意した条文はすべて受け入れる▽将来、ある交渉分野について9カ国が合意した場合、両国は「拒否権」を持たず、その合意に従わなければならない―などの中身を紹介。「TPPの本質は米国による自国利益のためのルールの押し付けである」と指摘しました。
日本政府も把握
日本共産党の笠井亮議員が8日の衆院予算委員会で追及したように、日本政府は交渉参加の条件を把握していました。昨年3月1日付で内閣官房、外務省、財務省、農水省、経産省は「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」という文書を公表しています。そのなかで、交渉参加国が「新規交渉参加国に求める共通の条件」として、「包括的で質の高い協定への約束(コミットメント)」「合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さないこと」「交渉の進展を遅らせないこと」の3点をあげています。カナダ、メキシコとの「念書」が特殊な事例ではないことがわかります。
また、同文書は「関税撤廃の扱い」について、「例外なき関税撤廃を実現し、種々のセンシティビティ(重要品目)への対応として7年から10年の段階的撤廃により対応することが、基本的な原則としてすべての交渉参加国で合意されている」など、各国の発言を紹介しています。
「守るべきものは守る」(安倍首相)といっても、関税ゼロへの“猶予期間”を設けることで重要品目を「守る」とか「聖域」「例外」を設けたと言い張るつもりなら、これほど関係者はじめ日本国民を愚ろうする話はありません。