主張

小選挙区「1票の格差」

「違憲」繰り返さぬ抜本改正を

 小選挙区の「1票の格差」が2・43倍だった昨年12月の総選挙は「法の下の平等」に反すると訴えられた裁判で、各地の高等裁判所が2件で「違憲で選挙は無効」、12件で「違憲だが選挙は有効」、2件で「違憲状態」と判決しました。裁判は今後最高裁判所で審理される予定ですが、「違憲」に加え、選挙自体が「無効」と判決されたのは重大です。小手先の「定数是正」でお茶をにごすのではなく、小選挙区制を廃止し、比例代表制を中心に、抜本的な選挙制度改革に踏み出すべきです。

「無効」判決の重み

 衆院の選挙制度のうち小選挙区制について、最高裁はすでに2011年3月、09年8月の総選挙に対して「違憲状態」と判決しています。今回の高裁判決は、その後抜本是正されることなくさらに格差が拡大して昨年12月の総選挙が行われたため、全国各地で弁護士などが訴えたものです。

 各地の高裁が相次いで「違憲」と判決したのは最高裁の「違憲状態」判決をさらに進めたものです。これまでの選挙でも高裁が「違憲」と判決することはありましたが、その場合も混乱を避けるなどの理由で選挙が「無効」とされることはありませんでした。今回二つの高裁が「無効」と判決したのは、小選挙区制のもとでの「1票の格差」が一刻も放置できない段階にあることを示すものです。

 もともと憲法は、「すべて国民は、法の下に平等であって」「政治的、経済的または社会的関係において、差別されない」(14条)と定めています。「1人1票」が原則の民主主義の根幹といえる選挙制度で、1人の有権者が2票以上の権利を持つなどというのが許されないのは当然です。格差が2倍を超えていた先の総選挙が「違憲」と判決されるのは当たり前です。

 「違憲」判決を免れるため、昨年の総選挙当時与党だった民主党と自民、公明両党は、解散時に小選挙区の300の定数を「0増5減」することを決め、近く区割りを変更する法案を提出するとしています。しかし「0増5減」では格差は縮小しても解消しません。

 もともと全国を300の選挙区に細分化する小選挙区制は、人口が変動すれば選挙区ごとの格差が拡大することになり、小選挙区にこだわる限り新たな「違憲」状態が生まれることになります。「違憲」や「無効」を判決した高裁判決はそろって「0増5減」案は「格差是正とはいえない」と厳しく批判しています。民・自・公の責任は重大であり、判決を真剣に受け止めるなら、当面「0増5減」の区割り案の成立を急ぐなどという態度は改めるべきです。

比例代表中心の制度に

 選挙制度にとってもっとも重要なのは、国民の意思が議会の議席に正しく反映されることです。大政党に有利で議席に結びつかない「死に票」が多い小選挙区制は、選挙制度にふさわしくないと導入前から指摘されてきたことです。

 もっとも民主的な選挙制度は、得票によって議席が配分される比例代表制です。小選挙区と比例代表を並立する現在の衆院の選挙制度で、比例代表の定数を削減し小選挙区のゆがみを激しくするなどというのは論外です。比例定数削減の策動はきっぱり中止し、比例代表を中心とした選挙制度への抜本的な改革を進めるべきです。