主張
嘉手納以南の基地
「県内移設」絡めぬ返還が当然
安倍晋三首相が沖縄県中部にある嘉手納基地から南の米軍基地返還計画を明示するため、米政府と交渉をすすめています。
米軍が不当に奪った基地を返還するのは当然ですが、名護市辺野古に新基地を建設し、普天間基地を「県内移設」するために、県民の怒りをそぐことを狙っているのなら重大です。島ぐるみの県民の反対を押し切って「県内移設」を強行するのは民主主義をふみにじる暴挙です。安倍首相は嘉手納基地以南はもちろん、普天間基地を含めたすべての基地を無条件で返せと米政府に迫るべきです。
約束くりかえしても
昨年4月の日米合意は、嘉手納基地以南の五つの基地を段階的に返還するとうたっています。しかしこれらはもともと、1996年の沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)でも合意され、2006年の米軍再編合意でも「07年3月まで」に返還計画を「作成する」と明記されているものばかりです。
何度も約束した嘉手納基地以南の基地がいまだに返還されていないのは、日米両政府がこれまで普天間基地の「県内移設」を条件にしていたからです。現在は使われておらず完全に遊休化した基地さえ返還していません。嘉手納基地以南の基地返還に、県民が反対している「県内移設」を絡ませ、返還を不可能にしてきた安倍首相を含む歴代政府の責任は重大です。
日米両政府は昨年の合意で普天間基地の「県内移設」と嘉手納基地以南の基地返還や沖縄駐留米海兵隊のグアム移転などを切り離すと持ち出しました。県民の反対で「県内移設」が進まないためです。日米両政府の都合でくっつけたり切り離したりするのは、県民をばかにした話です。
普天間基地も嘉手納基地以南の基地も、アジア・太平洋戦争でアメリカが沖縄を占領したさい米軍が県民から奪ったものです。不当に奪った土地は返せというのが県民の要求です。にもかかわらず日本政府は県民の願いに背を向け、基地の重圧を押し付けたままです。1972年の祖国復帰以降40年以上にもなるのに、国土面積の0・6%にすぎない沖縄に米軍専用基地の74%を集中させているのは異常そのものです。
不当に奪ってつくった基地を返すのに、代わりの基地を差し出せとか、空いたら返すというのは、まさに占領者意識丸出しの米軍支配そのものであり、尋常ではありません。アメリカの勝手な言い分につき従って、県民要求をふみにじる日本政府の売国性をうきぼりにするだけです。
普天間基地は米本国へ
いま直ちにやるべきは、普天間基地の撤去であり、辺野古への「移設」をやめることです。1月末に沖縄のすべての自治体の首長や議会議長などが安倍首相につきつけた「建白書」をみても県民総意に揺らぎがないのは明白です。
安倍首相は「普天間基地の固定化は許されない」といいながら、沖縄振興策や嘉手納基地以南の基地返還を絡めて、新基地建設や「県内移設」を押し付けようとしています。しかし県民の要求は、沖縄から危険な米軍基地をなくすことです。「固定化」を許さないというなら、普天間基地をただちに撤去し、本国に持ち帰れと米政府に迫るしか道はありません。