主張

解雇の自由化

安心して働ける土台を崩すな

 人が働きながら賃金を得て安心して生活するためには、安定した雇用が欠かせません。企業に労働者を自由に解雇できる権限を与えたら、安心の土台が崩れてしまうのは明らかです。安倍晋三政権のもとで検討されている解雇の自由化、正社員雇用の流動化などの規制改革は、企業に労働者を解雇する自由を与え「首切り自由社会」にするものです。「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすという安倍政権の経済政策(アベノミクス)の害悪が集中的にあらわれています。

解雇規制ルールが必要

 安倍政権の規制改革は、「企業活動を妨げる障害を一つひとつ解消」(2月28日、施政方針演説)するというように、企業支援の姿勢があからさまです。解雇の自由化と正社員雇用の流動化はまさに障害除去策です。新聞の対談企画で規制改革会議の議長代理である大田弘子氏は「成長分野への労働力のシフトはアベノミクスの基礎だ」といい、第1次安倍政権の経済財政諮問会議で民間議員だった八代尚宏氏は「解雇の金銭保障の制度化は雇用問題の一丁目一番地」と語っています。

 労働者の解雇自由化と雇用流動化は、いま日本が解決を迫られている「デフレ不況」をさらに悪化させる方向です。日本の労働者は、賃金が下がりつづけ、年収が200万円に満たない低賃金の非正規雇用が急増し、無法な正社員リストラ・退職強要が横行するなど、人間らしく働き生活する権利が軽んじられています。賃上げと雇用の安定こそが「デフレ不況」を打開する待ったなしの課題であることは常識になってきています。

 労働者の現状の深刻さは、小泉純一郎政権とそれを受け継いだ安倍政権時代の労働・雇用の規制緩和が原因です。この道の再来はあってはなりません。とりわけ解雇自由化は、労働者の生活をいっそう困難にします。「能力がない」などの口実で簡単に首を切られるような状態になったら、労働者は会社からにらまれないように長時間労働に耐え、低賃金に不満もいえずに働かざるを得なくなります。

 安心して働くために、いまむしろ必要なのは解雇規制のルールをつくることです。日本共産党は1996年に解雇規制の法案大綱を提案しました。このなかで「正当な理由なしに、労働者を解雇してはならない」という原則を明示し、正当理由の立証責任を企業に負わせました。リストラなど経営上の都合による解雇については、解雇の必要性や回避努力の有無など判例で確立している「整理解雇の4要件」を盛り込みました。

 退職、出向、転職の強要は禁止です。パートや派遣などの一方的な契約打ち切りを禁止し、契約を反復更新して1年以上になったら期間の定めのない雇用とみなすとしています。また労働者が解雇不当で争っているあいだの就労権を保障しているのは重要です。この方向に解雇を規制すべきです。

人間使い捨ての打開こそ

 金融緩和で株高や円安がおこっても、労働者の賃金と雇用が改善しなければ経済の立て直しは不可能です。大企業による一方的なリストラ解雇をやめさせ、非正規から正規雇用への転換をはかるなどの対策が重要です。「デフレ不況」の打開はすなわち「人間使い捨て」の打開でなければなりません。