主張

関電大飯原発停止

「原発稼働ゼロ」を原発ゼロへ

 国内で2基だけ稼働していた関西電力大飯原発(福井県)の3、4号機が相次いで定期点検のため停止し、「原発稼働ゼロ」が再び実現しました。東京電力福島第1原発の事故後、昨年春いったん「稼働ゼロ」が実現し、7月に大飯原発の2基の再稼働を強行してから約1年2カ月ぶりです。

 原発が「稼働ゼロ」になっても、電力供給に不安はありません。むしろ、漏れ続ける汚染水など原発事故の深刻さを直視すれば、再稼働を持ち出すこと自体非常識のきわみです。「原発稼働ゼロ」を「原発ゼロ」に進める、政府の政治決断が急務です。

取り返しのつかない事故

 原発が大飯原発の2基しか動いていなくても、異常な猛暑になったこの夏の電力供給に問題はありませんでした。昨年再稼働を強行するさい政府や電力業界は「電力不足」を言い立てましたが、今回はそうした声が出る余地さえありません。原発が停止していても節電が普及し、電力の融通や火力発電の一時稼働などで賄えているからです。「電力不足」がどんなにでたらめだったかは明らかです。

 「原発稼働ゼロ」でも電力が賄える以上、このまま原発を廃止し、「原発ゼロ」を実現したほうがいいと考えるのは自然です。

 なにより原発が技術的に未完成で、いったん事故を起こせば取り返しのつかない大惨事を引き起こすことは、福島原発の事故で多くの国民が痛感しました。事故から2年半たっても原子炉の中がどうなっているかさえわからず、放射能の被害を恐れて15万人もの福島県民が避難したままです。

 放射性物質で汚染された汚染水は建屋の周辺からも、一時貯蔵用のタンクからも漏れ続け、地下水や海洋を汚染しています。安倍晋三首相は国際オリンピック委員会(IOC)総会で「コントロールできている」と発言しましたが、当事者の東電が「できていない」といいだすありさまです。原発からの撤退こそ急ぐべきです。

 重大なのは、福島原発のような事故は、全国どこの原発でも起こりうることです。政府は原発事故のあと新しい「規制基準」をつくり、北海道、関西、四国、九州の四つの電力会社の原発について再稼働に向けた審査を進めていますが、福島原発の事故の原因もわからないのに、「基準」を満たしたからといって「安全」な原発が実現するはずはありません。

 原発は動かしたとたん、行き場のない危険な“核のゴミ”がたまり続けます。環境を汚染するだけでなく原爆の材料にもなります。核兵器の拡散の危険を許さないためにも、原発の再稼働は進めるべきではありません。

エネルギー政策の転換へ

 国民の多くは原発事故の現状を心配し、原発に依存しないエネルギー源を切望しています。先日発表されたNHKの世論調査では、国がいまもっとも力を入れて取り組むべき政策課題として、「原発への対応」が一気に10ポイントも上がって27%とトップに躍り出ました。安倍政権は原発の再稼働を推進するのではなく、原発からの撤退を決断し、「原発稼働ゼロ」を「原発ゼロ」へ進めるべきです。

 「原発ゼロ」の一日も早い決断こそ、エネルギー政策を転換し、原発に代わる自然エネルギー開発の道を広げることにもなります。