「この声国会に」と告発者
国民にも国会にも何の説明もなく暴走を続ける安倍内閣。秋の臨時国会を前に、暴走と対決するため走り出した日本共産党国会議員団の活動を追いました。
長時間労働やパワーハラスメントなどで若者を使い捨てる「ブラック企業」。参院選で躍進した日本共産党国会議員団は8月7日、「ブラック企業・雇用問題対策チーム」を立ち上げました。
今月8日夜、大阪市内で党大阪府委員会の対策チームが開いた、ブラック企業の告発者らとの懇談。NECや富士通、佐川急便などの実態を若者らが約2時間、口々に訴えました。
想定2倍の参加
「1日に15、16時間も働かされ、休みは日曜だけ。体調を崩した」「突然、『辞めろ。明日から来なくていい』と言われた」
発言者の半数は、うつ病などの精神疾患にも苦しんでいました。
発言をノートに克明にメモし、質問したのは、7月の参院選で初当選した辰巳孝太郎議員。国会議員団「対策チーム」副責任者の一人です。
「午前8時半から午後5時が定時。でも、10時、11時まで帰れなかった」と言うのは、昨年、新卒で昇降機の大手メーカーに入社した女性(23)。長時間労働によって8月末で退職に追い込まれたと、涙で声をつまらせました。残業代は未払いでした。同僚を心配し、今も退勤時間が改ざんされていると指摘しました。
支援する地域労組おおさか青年部書記長の北出茂さん(39)は、多くの相談事例を踏まえ、「ブラック企業は違法と合法との間の広範なグレーゾーンを活用している。立法によって規制してほしい」と要望しました。
懇談は、想定した2倍の約30人が集まり、会場は急きょ、大会議室に変えられました。
懇談後も、辰巳議員を囲むように30分ほど聞き取りが続きました。「この声が国会に届いて、少しでもプラスになれば。わらにもすがる思いです」(山内さん)
許さない世論を
若者らから「きょうはありがとうございました」と握手をされた辰巳議員は「共産党に期待し、『自分だけの問題ではない』と話をしてくれました。みなさんの期待に応える活動をして、ブラック企業を許さない世論を盛り上げたい」。
国会議員団「対策チーム」が発足した翌8月8日、厚生労働省はブラック企業対策として9月に、離職率が高い企業など約4000社に立ち入り調査すると発表しました。今月1日には電話相談も行われ、1042件の相談がありました。
「告発者、支援する労働組合やNPO、弁護士のみなさんのたたかいと、国会で真っ先に取り上げてきた共産党の躍進などによる成果です」。「対策チーム」責任者の山下芳生書記局長代行・参院議員は話します。
「ブラック」根絶へ新法案も
東京では14日夜、「若者・シゴト戦略会議」(日本共産党東京都委員会と民青同盟東京都委員会の共催)が再開しました。参院選後では初めてで、議題は「ブラック企業ゼロをどう実現するか」。7月の参院選で議員に返り咲いた小池晃副委員長(党国会議員団「対策チーム」責任者代理)と、戦略会議に当初から関わり、初当選した吉良よし子議員(同副責任者)が駆けつけました。
ここでも想定の倍の85人が参加。初めて来た人が多く、民青同盟都委員長の岩崎明日香さん(27)は「3分の1は知らない人です。関心の高さを感じます」。会合はインターネット動画サイト「ニコニコ動画」で配信し、過去最多の約2000人に視聴されました。
「みなさんの働きかけが政治を動かし始めた」と激励した小池議員。「ブラック企業根絶、安倍政権の雇用大破壊とのたたかいに頑張る。力をあわせよう」と呼びかけました。
「休日は眠るだけ。趣味も、家庭も持つなんて考えられなかった」。戦略会議に初めて参加した女性(31)は討論で訴えました。昨年末に退職したベンチャー企業の残業は月140時間。ディーセント・ワーク(人間らしい生活を営める、働きがいのあるまともな労働)を求めました。
吉良議員は「サービス残業を根絶すれば280万人の新しい雇用を生み出せます。一つひとつ、追求していきたい」と応えました。
会合後、並川さんは「勇気をもらった」と話しました。「共産党がいなかったら、お先は真っ暗です。唯一の光だと思っています。頑張ってほしい」
「対策チーム」は今後、違法・脱法行為で成り立つブラック企業の一掃を求める世論を広げようと活動を強化する計画。山下議員は「現行法での取り締まりと労働者の救済を要求しつつ、ブラック企業の手口に即して有効に規制するような新たな法案も提案したい」と言います。同時に、非正規雇用の拡大による大量の失業予備軍がブラック企業の基盤になっており、労働法制の規制緩和をただし、正規雇用への転換を求める考えです。
山下議員は語ります。「安倍内閣が進める労働法制の大改悪を許してはなりません。首切り自由、残業代ゼロ、非正規雇用の拡大などをやられたら、個々の企業にとどまらず、社会全体がブラック企業化してしまいます。ストップをかけなければなりません」(酒井慎太郎)