主張

みずほ暴力団融資

国民と利用者に説明すべきだ

 日本を代表するメガバンク(巨大銀行)のひとつ、みずほ銀行が暴力団関係者に巨額の融資を続け、金融庁から処分を受けた問題が拡大しています。みずほ銀行は当初、法令順守の担当役員止まりで経営トップに報告されていなかったと弁解しましたが、8日になって一転、当時の頭取が報告を受け、現在の頭取、会長も情報を把握できたことを認めました。暴力団など反社会的勢力への融資は銀行の社会的責任に反し、国民と銀行利用者を裏切るものです。みずほ銀行の説明はとうてい国民を納得させるものではありません。

金融機関の資質問われる

 数十万円、数百万円の住宅ローンや自動車ローンの融資でも、多くの書類を書かされ、審査が通るまで不安な日々を送らされる庶民からすれば、暴力団関係者が身分を隠し、審査らしい審査もなく融資を受けていたこと自体驚きです。しかもその銀行が、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行と並ぶメガバンクとなればなおさらです。

 みずほ銀行が金融庁の行政処分を受けたのは、系列の信販会社、オリエントコーポレーション(オリコ)と提携した貸し付けについてです。「提携ローン」は、融資先の審査はオリコに丸投げで、融資が焦げ付いても銀行は責任を負わないものでした。みずほ銀行が3年前ようやく融資先を調査したところ、約230件、2億円超にのぼる暴力団関係者への融資が発覚したのです。しかも、みずほ銀行はその後も2年以上、解約などの手続きを取らず放置していました。みずほ銀行の責任は重大です。

 みずほ銀行は当初、情報は担当役員止まりだったと報告し、記者会見でもそう説明しました。ところが処分から10日あまりたって初めて記者会見した佐藤康博頭取は、暴力団関係者への融資は当時の頭取に報告され、現在の頭取、会長も資料などで把握できる立場にあったことを認めたのです。担当者止まりというのは、経営トップの責任を回避しようとしたからではないのか―当時の頭取はもちろん現在のトップの責任も免れません。みずほ銀行の報告をうのみにした金融庁の責任も問われます。

 反社会的勢力である暴力団関係者との取引は、反社会的勢力を一掃するという暴力団対策法などの法律や銀行自身の倫理規定にも反するものです。違法な取引が発覚すれば、それ自体が銀行の経営に被害を及ぼします。預金者など銀行利用者の利益を保護し、金融活動を通じて社会に貢献するという銀行の社会的使命に反します。現在の経営トップである佐藤頭取をはじめ、歴代経営陣の責任はあいまいにすまされません。

反社会勢力との根を断て

 みずほ銀行はもともと、第一勧銀、富士、日本興業の合併で生まれた銀行で、それぞれの銀行がかつて暴力団関係者や「総会屋」など反社会的勢力との取引で指弾された過去を持ちます。しかも合併後は3行の出身者が交代でトップに就任する露骨な“たすきがけ”人事で、経営管理に問題があると指摘されてきました。

 みずほ銀行は、メガバンクとしての社会的責任を果たすため、いまこそ反社会的勢力との癒着の根を断つべきです。政府や金融庁は形ばかりの行政処分にとどめず、みずほ銀行をはじめ金融機関の責任を根本からただすべきです。