主張
米生産調整見直し
需給と価格の安定は国の責任
安倍晋三内閣と自民党が、コメの生産調整(減反政策)の廃止に踏み出しています。農村の現場からは、「米価が暴落し、地域農業が崩壊してしまうのではないか」という不安とともに、生産者の声も聞かずに生産調整の即刻廃止を求める財界などの身勝手な行動に、怒りの声があがっています。
関係者を置き去りにして
コメの生産調整の廃止や水田農業にたいする各種施策・補助金の見直しは、政府・自民党がさきごろ示した「現行施策の現状と課題、論点整理を踏まえた中間とりまとめ」で明らかにしたものです。今月中には最終とりまとめを行う予定です。
その主な柱は、これまで政府が行っていた生産目標数量の配分は5年後に廃止する、コメの直接支払交付金も5年で廃止し、来年度から大幅に減らす、米価変動補てん交付金を廃止し、農家も拠出するコメ・畑作物の収入緩和対策に一本化する、交付金の支給は認定農業者、集落営農、認定就農者に限定する―などです。
コメの生産目標の配分の廃止は、現在百数十万戸が生産に携わっている米作について、コメをどれだけ生産するかの判断を農家の責任に押し付け、価格も市場まかせにすることを基本にするものです。主食であるコメの自給の維持も、農家の所得向上や安定した価格での供給といった国民的な課題も無視されています。
重大なことは、米生産調整の廃止・見直しが、環太平洋連携協定(TPP)参加によって外国産米の輸入が増えることを見越した措置であることです。
その廃止が農家経営に大きな打撃となるとみられるコメの直接支払交付金制度は、民主党政権が打ち出した戸別所得補償政策の柱の一つで、生産調整に参加したすべての農家に生産コストと販売価格の差額10アール当たり1万5千円を交付する仕組みです。米価の安定対策は行わないなど問題はありますが、低米価に苦しむ農業関係者に歓迎されてきました。
自民党や財界は戸別所得補償政策を「バラマキ」と批判、自民党は参議院選挙でその見直しを掲げました。急な変更は農業生産の現場に混乱を与えるとの批判が強く、政府もいったんは一定の時間をかけて検討する姿勢でしたが、経済同友会など財界団体が強く要求。安倍政権の産業競争力会議でも財界代表がコメ生産調整への国の関与を3年以内にやめるべきだと提案したことをうけ、急きょ作業が行われました。見直しが、生産農家や消費者の意見ではなく、財界主導で行われたことは明白です。
農家と国民の願い生かす
いま大切なのは、生産者と消費者、自治体関係者など広範な意見を聞き、安全なコメの生産と供給の安定、中山間地域もふくめた地域農業・農村地域の安定、自給率を向上させる農業生産の多面的発展をはかることです。
そのためには、日本農業を壊滅させるTPP交渉から撤退し、専業であれ、兼業であれ、大規模であれ、意欲のある農業者が安心して生産できる条件を保障することが必要です。コメの生産・価格の安定とともに、飼料穀物や麦、大豆の生産拡大、農地、水路など多面的機能を保障する直接支払制度の拡充など、国民的立場にたった政策こそ求められます。