主張

日本版NSC発足

「戦争司令部」いらない政治を

 安倍晋三内閣とその与党の自民・公明両党が、日に日に広がる国民の反対の声に背き、国会での満足な審議もないまま、国民の「知る権利」を奪う秘密保護法案の採決を強行しようとしていることに、怒りと抗議が高まっています。

 そのさなかの4日、安倍政権は秘密保護法案と一体で持ち出し、今国会で設置法案の成立を強行したばかりの国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させました。秘密保護法で国民の目、耳、口をふさぎ、日本版NSCを「戦争司令部」に、海外で「戦争する国」へ突き進むのは許されません。

秘密保護法案と一体

 日本版NSCは、アメリカのNSCなどと情報を共有し、軍事や外交などの事態に対応することをねらった、まさに「戦争司令部」です。安倍政権は、日本版NSCがアメリカなどから秘密情報を受け取るには秘密保護法が必要だと、文字通り一体で、両法案の今国会成立を目指してきました。

 日本版NSCは、首相、官房長官、外相、防衛相の「4大臣会合」を中核に、国家安全保障担当の首相補佐官や「国家安全保障局」を置くなどして、首相が平時から有事まで、重要な外交・軍事政策を主導的に判断し決定できるようにするものです。アフガニスタンやイラクで戦争していたブッシュ前米政権が日本により大きな軍事的役割を担わせるため、第1次安倍政権でもちかけたものです。

 発足した日本版NSCは、年内に初の「国家安全保障戦略」(NSS)を決め、軍拡の基本計画となる「防衛計画の大綱」も決め直します。安倍首相がうちだした「積極的平和主義」を看板に、これまで政府が「基本的な方針」としてきた「専守防衛」などの原則も投げ捨て、自衛隊が海外でアメリカといっしょに戦争する政策の具体化をはかることになります。

 来年の通常国会には安倍首相が第1次政権時代からねらってきた、これまでの憲法解釈を変更する「集団的自衛権」の行使にふみだし、それを容認する「国家安全保障基本法案」の成立まで狙っています。まさに日本版NSCの発足で軍拡をいっそう進め、日米軍事同盟を強化して、海外で武力行使する道を開くねらいです。二度と戦争を繰り返さないと決意した日本国憲法の精神を根本から踏みにじる、危険な方向です。

 安倍首相はこうした軍拡と軍事同盟強化の方針を、東アジアの「安全保障環境の激化」に対応するためと合理化しますが、日本が軍事力を強化し、「戦争する国」への道を進むことこそ、地域の緊張を激化させ、平和を破壊することになります。日本が過去の侵略戦争を反省し、憲法の平和原則を守って、軍事ではなく外交で平和を実現する努力を強めてこそ、地域の平和に貢献することもできます。

9条を守り抜いてこそ

 いま日本がやるべきなのは「戦争への道」を進むのではなく、「戦争司令部」も秘密保護法もいらない政治を進めることです。

 国際的な人権団体やジャーナリストをはじめ、国連の人権高等弁務官までが秘密保護法案の「法制化を急ぐべきではない」と批判しています。「戦争する国」をめざす安倍政権の策動は国際的に通用しません。「戦争する国」の策動をやめさせ、憲法9条を守らせることこそ急務です。