主張

安倍首相施政方針

語るべきことをなぜ語らない

 安倍晋三首相の、通常国会開会にあたっての施政方針演説を聞き、怒りがわき上がってきます。

 演説が“総花的”で多弁なわりに中身が乏しいのは昨年の施政方針演説と同じですが、秘密保護法の制定強行にせよ、消費税増税にせよ、国際的非難を呼んでいる靖国神社参拝にせよ、国民が聞きたいこと、説明してほしいことにはほとんどふれていないのです。語るべきことを語らないで、自らの思う政治を押し通すのは独裁的な暴走です。通常国会の論戦とともに、安倍政権の暴走に立ち向かうたたかいの正念場です。

秘密保護法にふれず

 なにより驚かされたのは、昨年末の臨時国会で成立を強行した秘密保護法について、一言の言及もなかったことです。

 安倍首相は、昨年10月の臨時国会の開会にあたっての所信表明演説でも秘密保護法の制定に一言もふれなかったのに、突然、「国家安全保障会議(日本版NSC)」設置法と一体で秘密保護法を持ち出し、国会内外の反対を押し切り、強行に次ぐ強行で成立させました。国民と国会を軽視するあまりの暴挙に、昨年末には首相自身「説明不足」を認めていたのに、施政方針演説で一言もふれないというのは一体何なのか。通常国会開会の日も国会を包囲する行動が全国で巻き起こっています。安倍首相には、国民への最低限の説明責任を果たす気さえないのか。

 安倍首相は施政方針演説で、4月から実施を予定している消費税増税についても、「4月から消費税率が上がりますが」云々と、まるでひとごとのようにふれただけです。消費税の負担が増え、くらしが脅かされ、経済の先行きにも懸念をつのらせている国民へのこころ配りは、まったくありません。

 安倍政権の、再稼働推進と輸出促進の態度が国民の不安をつのらせている原発問題でも、「責任あるエネルギー政策を構築します」などというだけです。安倍政権は、原発を「基盤となる重要なベース電源」とする新しいエネルギー基本計画を決めようと議論を呼んでいますが、そのことについても一言の説明もないというのはなにごとか。決めて従わせさえすればいいというのはまったく論外です。

 安倍政権は昨年末「日本版NSC」で「国家安全保障戦略」や「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を決め、軍拡と軍事同盟強化の路線を突き進んでいます。日本が攻撃されなくてもアメリカとともにたたかう「集団的自衛権」行使のための憲法解釈の変更を、今度の通常国会中にも決めるといわれます。にもかかわらず施政方針演説には懇談会の報告を踏まえ「対応を検討」などとあるだけで、踏み込んだ説明はありません。国民に隠して「戦争する国」への道を突き進むなどというのは絶対に許されない憲法違反の暴走です。

外国では、こびる演説

 国民と国会の前にその年の政治の基本方針を明らかにする施政方針演説での安倍首相の語るべきことを語らない態度は、とうてい民主政治とはよべません。その首相が直前に出席したスイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)での演説では「外国の企業が最も仕事のしやすい国になる」などとこびてみせているのは、国民不在で屈辱的です。安倍政権に対する国民のたたかいがいよいよ重要です。