主張
JR北海道の処分
国の責任に踏み込んだ解明を
レールの異常を放置するだけでなく検査データの改ざんまでしていたJR北海道にたいし国土交通省が事業改善命令と監督命令の二つの命令を出しました。前例のないきびしい行政処分です。鉄道事業者としての同社の資格が根本から問われています。いままで何度も監査を行いながら問題を見抜けず、抜本的な対策を講じてこなかった政府・国交省の責任も重大です。安全・安心のJR北海道にするために、国の責任にまで踏み込んだ徹底的な原因解明と検証、本格的な対策が必要です。
繰り返された重大事態
JR北海道への行政処分は今回が初めてではありません。2011年5月、負傷者79人を出した石勝線トンネル内の特急列車脱線火災事故を引き起こしたとき、国交省は鉄道事業法にもとづく事業改善命令を出して安全確保措置を求め、同社も安全基本計画をつくって改善に努めるはずでした。
ところがトラブルは後を断たず、昨年9月にレールの異常放置が原因とされる函館線での貨物列車脱線事故が発生しました。それをきっかけにレール異常の放置が全道各地に広がっていること、検査データの改ざん・隠ぺいなど、安全をなにより優先すべき鉄道会社として絶対に許されない事態が横行していたことが次々と判明しました。
今回の処分が事業改善命令に加え、経営体制の改善まで迫ることができるJR会社法による監督命令を出したことは、問題の根深さを浮き彫りにしました。この間の国交省の監査や処分が、核心に迫るものでなく、安全対策を“JR北海道まかせ”にしていたことを裏付けるものです。
処分発表の際、国交省は「企業体質、組織文化を含めて構造的な改革が必要」ときびしくJR北海道を批判しましたが、その安全軽視の「体質」「組織」を放置してきた国交省の監督責任をあいまいにしていることは重大です。
国交省は、第三者による安全対策監視委員会の設置などの対策を打ち出しました。しかし、その実効性を保障するためには、これまで国交省が見逃してきた要因にメスを入れることが不可欠です。
JR北海道の慢性的な赤字経営、人員削減と効率化優先の姿勢は、安全確保に必要な措置を後回しにすることを常態化させています。保線に必要な資材確保を求めても「予算がない」と資材を削られ、新規職員の採用抑制で機関車のエンジン整備の技術伝承に困難が生じるなど現場からは深刻な声が上がっています。こんな事態を即刻改善するために、国の責任による財政的な措置、人員の増員・配置をはかるべきです。
鉄道事業よりも商業施設整備や不動産事業に傾斜している経営もただすことが必要です。
分割・民営化の検証を
1987年の国鉄分割・民営化で発足したJR北海道は当初から独立した会社として存続することの困難さが指摘されていました。いま引き起こされている問題の根源にある「分割・民営化」の検証と見直しが求められるときです。
年間のべ1億3千万人の住民、観光客が利用するJR北海道は、地域の生活と経済を支える動脈です。安全・安心の公共交通機関を保障するための政治の役割が求められます。