主張

労働者派遣法改悪

不安定な働き方増やすだけだ

 安倍晋三政権が今国会で成立をめざす労働者派遣法と労働契約法の改悪案が明らかになりました。

 労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に示された派遣法改悪案は、企業が派遣労働者を受け入れることができる3年の上限を事実上撤廃するなど、派遣など非正規雇用をいっそう拡大し、正規雇用も不安定にするものです。労働契約法改悪案は有期雇用で働く労働者の無期雇用への転換権を奪うものです。不安定な働き方を増やすだけの派遣法など労働法制の改悪は、絶対に許すわけにはいきません。

増え続ける非正規雇用

 先週発表された政府の労働力調査によると、2013年を平均した非正規雇用の労働者は1906万人と前年より93万人も増え、役員を除く雇用者5201万人の37%を占めています。正規雇用の労働者は3294万人で、前年に比べ46万人も減りました。

 政府や財界は非正規雇用が増え続ける原因を国民が望んでいるからのようにいいますが、非正規で働く理由は男性が「正規の仕事がないから」が30・6%と最も多く、女性は「家計の補助・学費等が得たいから」が26・8%を占めます。安定して働ける場を求める国民の願いは切実です。

 増え続ける非正規雇用は労働者全体の賃金水準を押し下げ、国民の所得を減らして消費を冷やし、経済悪化を長引かす原因です。昨年1年間の勤労者がきまって支給される給与は3年連続で減り続けており、非正規の拡大が景気回復にとっても障害になっているのは明らかです。「アベノミクス」で大企業のもうけを増やせば雇用も賃金も改善するという安倍政権の口実は破綻しています。

 安倍首相は国会答弁で、労働者派遣法を改定しても、派遣で働く人を「増やすべきだとはまったく考えていない」と発言しました。派遣など非正規雇用で働く人の増大が無視できなくなっていることを認めたものですが、派遣法を改悪しても「派遣は増えない」というのは真っ赤なうそです。

 派遣法は、「臨時的・一時的な働き方」だからと派遣労働を合法化しました。改悪案は「臨時的・一時的」の原則を形骸化しています。専門業務の指定(26業種)を撤廃し、同一事業所での使用期間制限(原則1年、最長3年)も人さえ替えれば延長できるようにするものです。一般労働者との「均等待遇」は、「配慮」を求めただけです。労働契約法を改悪する法案(特別措置法)も、有期雇用で5年間働いた労働者が無期雇用に転換するよう求める権利を奪うものです。

 こうした改悪がまかり通れば、企業が安上がりでいつでも首の切れる派遣労働者を増やし、非正規雇用をいっそう拡大するのは目に見えています。正規雇用の労働者を含め、雇用の安定性をいっそう脅かすことになります。

安定して働けるルールを

 安倍政権が進める雇用政策の改悪に対し、全労連や連合など労働組合だけでなく日本弁護士連合会や自由法曹団など、各界からも反対の声があがっています。

 本来雇用は、働く意欲のある全ての人々がその能力を発揮し、安心して働き、安定した生活を送ることができるべきものです。労働法制の改悪を許さず、安定して働けるルールづくりに向け、力を合わせることが重要です。