「仮設から移れない」57% 生業の再建困難63%
「次の住まいの見通しはたたず、仮設から出られない」―。多くの人々の命と生活の基盤を奪った東日本大震災から3年。避難者は全国で約26万7000人で、9万7000人の被災者がいまだに仮設住宅暮らしを余儀なくされています。本紙は岩手、宮城、福島の3県で「被災者300人実態調査」を行い、暮らしの状況や要望を聞きました。震災3カ月以来6回目となる調査ですが、住まいや生業(なりわい)・雇用の再建はほとんど進まず、事態が悪化、深刻化している実態が浮かび上がりました。(東日本大震災取材班)
実態調査は、記者が仮設住宅、借り上げ住宅、仮設商店街などを訪ね、被災者300人に直接聞き取りました。内訳は岩手県98人、宮城県103人、福島県99人。
8割以上の被災者が仮設を出る見通しが立たないことが明らかになりました。今年中に仮設を出て次の住まい(自宅再建や災害復興公営住宅への入居など)に移れるかとの質問に、「移れない」57%、「わからない」27%が計84%に上りました。
移れない理由は、公営住宅建設の遅れが37%、自宅再建資金の不足が14%などでした。
宮城県南三陸町で被災し、仙台市の仮設住宅で暮らす女性(77)は、「公営に入りたいけど今年中に完成せず、入居できません。抽選なので入れるかどうか」と心配そうに話しました。
生業と雇用の再建も遅々として進んでいません。就労状況は「失業中」が依然として32%。生業再建は「めどがたたない」63%、「あまり進んでいない」15%で合わせて78%です。
自宅兼店舗を津波で失い、仮設商店街で書店を経営する岩手県釜石市の男性(60)は、「もとの土地に再建したいが、市のかさ上げ計画が進まず、気力もうせてきた。今度オープンするイオンに市内最大の書店ができる。影響は避けられない」と語ります。
住宅や生業の再建に対し、「個人財産の形成になるから支援しない」とする国の姿勢を転換し、公的支援を復興の原則にすべきと思うかとの問いに、「おおいに思う」60%、「少し思う」26%が計86%に上りました。
岩手県山田町の仮設住宅で暮らす女性(59)=パート=は、「被災者が家を建てられなければ結局は国や県が困るのでは。つまらないものを建てるより、国はこういうところにお金を出してほしい」と訴えました。