戦後はじめて国会に常設の秘密会「情報監視審査会」を設置する国会法改定案を自民、公明両党が提案し、今国会で成立を強行する動きを強めています。なぜ突然、国会法の改定なのでしょうか。
昨年末、国民の反対の声を無視して成立した特定秘密保護法の第10条は、政府・行政機関は「国会が秘密保全の措置をとらなければ特定秘密は提供しない」と規定しています。この秘密保護法に従い、国会議員が特定秘密を漏らさないようにするための厳格な秘密保全体制をつくるものです。
「情報監視審査会」は、委員8人で構成され、審議内容も会議録もすべて非公開。担当国会職員には「適性評価」(身辺調査)が義務づけられ、電波傍受を遮断する会議室まで設置されます。
強制力ない“勧告”
自公両党は「政府の特定秘密の運用を監視するため」といい、同審査会は、政府に秘密指定の運用改善を勧告し、政府が拒否した特定秘密の提出を勧告すると説明。しかし、いずれの勧告にも強制力はありません。
秘密保護法では、秘密指定した閣僚が「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある」と判断すれば特定秘密の提出を拒否することができます。国会がどんなに厳格な秘密保全の仕組みをつくっても、特定秘密を提出するかどうかは政府の判断次第です。
さらに、政府側が特定秘密を国会の秘密会に提出したとしても、秘密を知った議員が国会質問で秘密を公表した場合に懲罰の対象とし、除名処分までできるように国会規則を改定しようとしています。
秘密を知った議員は、国会外で秘密を漏らせば、秘密保護法で刑罰に処され、国会質問でとりあげれば除名処分となる仕組み。これは、憲法が保障する議員の発言の自由を制約し、国会から秘密が漏れないよう二重三重のしばりをかけるものです。政府監視とは正反対で、国会議員を監視するものです。
これでは、国会は、特定秘密の保全体制にお墨付きをあたえるばかりか、政府の秘密体制に自らとりこまれ、政府の秘密を国民の目から隠す共犯者になってしまいます。
「政府を監視」こそ
主権者国民を代表し、国権の最高機関である国会の第一の任務は、政府の監視です。憲法は、国会に国政調査権を保障し、国会の公開原則、議員の発言権保障を明記しています。国会は、国政調査権を行使し、政府に資料を要求し、日米安保の秘密をはじめ政府・行政の実態に迫るのが本来の役割です。
国会の資料要求に対し政府が「秘密」を理由に拒否するなら、その理由を内閣声明として明らかにせよというのが現行国会法です。しかし、内閣声明で拒否した事例は、1954年、造船疑獄での証言拒否の1件だけです。
政府が拒否する前に政府与党が、国会法に基づき正式に資料要求することを阻んでいるという実態があります。
国会に問われているのは、憲法が保障する国政調査権を本格的に行使し運用することです。そして、いまやるべきは秘密保護法の廃止です。国会を政府の秘密保護体制にくみこむことではありません。 (白髭寿一 党国会議員団事務局)