「大義と争点がはっきりせず、自分の都合に合わせた選挙だと見られている」
21日、解散された衆院本会議場から出てきた自民党議員の一人がぼやきました。別の議員は「自民党内でも、(解散の理由が)ふに落ちないという人が大半だ」と述べます。「この道しかない」と解散した安倍首相ですが―。
大義のなさ示す
安倍晋三首相の解散表明直後に実施(19、20日)された共同通信の世論調査。解散について「理解できない」が63・1%を占めました。解散当日の「朝日」21日付世論調査も、解散理由に「納得できない」が65%の多数でした。同調査の内閣不支持が40%に跳ね上がって支持39%を上回り、第2次安倍内閣発足以来初めて支持・不支持が逆転しました。
安倍首相は解散直後の記者会見(21日)で、「この解散はアベノミクス解散だ」「私は(増税の)時期を明確にしている。(2017年4月から)確実に消費税を引き上げる」と述べました。確実に再増税を実施するかどうかが総選挙の「争点」ならば、真の解散名称は「増税解散」となります。
経済失政で追い込まれ、消費税率10%への引き上げを延期しつつ、選挙が終われば「必ず増税する」―。「先送り」というごまかし解散の大義のなさを批判され、焦った安倍首相の本音がますます明白になっています。
「首相はのんき」
他方、首相は今回の「延期」について「(再増税すれば)個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなる」(18日、解散表明の会見)と正当化していたのに、「(先送り後は)今回のような景気判断による再延期は行わない」(21日)というのも矛盾です。景気判断しないという“説明”の根拠は、「アベノミクス」を成功させるという願望でしかありません。
「肌感覚では厳しい。安倍首相は『うまくいっている』というが、消費の落ち込みで庶民の生活実感は違う」。前出の自民議員の一人は選挙情勢について語ります。経済失政の矛盾について「(首相は)のんきに言っているが、物価上昇は年寄りにはきつく、全体のパイは増えても個人のところに還流していない」と吐露します。
小選挙区制があり大政党に有利な選挙ですが、勝敗ラインを過半数に置く首相。別の自民党関係者の一人は、「選挙制度のために現象的には自民党が強く見えるが、政治的にはきつい。2年前に民主党から離れた票は『第三極』に行き、去年の参院選挙で『第三極』の崩壊がはじまり共産党が伸びたが、その流れが続く」と指摘します。(中祖寅一)