“法律家の卵”に保証料ビジネス
ローン大手オリコ独占 年約6万円天引き
司法修習生「貸与制」
司法試験に合格した“法律家の卵”の司法修習生に、給費制をやめて国がお金を貸す「貸与制」が導入されて1年余り。司法修習という法律家育成の場で、カードローン大手のオリコが独占的に“保証料ビジネス”を行っている実態があります。
司法修習生は、「修習専念義務」が課され、裁判の現場での実習など、約1年にわたるトレーニングが行われます。そのため、修習中のアルバイトは禁止されています。この間の生活費は仕送りや貯金などの自己資金か、お金を借りるしかありません。
多重債務張本人
貸与制は、修習期間中の生活費を国(最高裁判所)から“無利子”で借りる制度。申し込みには連帯保証人2人が必要です。
連帯保証人を立てられない修習生は、カードローン大手のオリエントコーポレーション(オリコ)に、保証料を払って保証してもらうのが、機関保証。実質的には、有利子の借金といえます。
給費制の復活を訴える種田和敏弁護士は「オリコは社会問題になった多重債務の張本人ですから、法曹に関わる者としては『ムムッ』とならざるをえないし、オリコにとっては、取りっぱぐれる危険が少ない、優良なビジネスモデルだ」と指摘します。
保証料は貸与額の2・1%。毎月23万円(基本額)を借りる修習生の場合、毎月4830円がオリコへの保証料です。保証料は、あらかじめ天引きされ、22万5170円が修習生に渡る仕組み。1年間で約6万円がオリコに入ります。
昨年11月からの新66期修習生のうち機関保証の利用者は297人(修習生の総数2035人)。新65期では302人(同2001人)が利用しており、オリコは毎年約1800万円の保証料を得ていることになります。
「機関保証までの手続きのほとんどを最高裁判所がやってくれるので、オリコの手間がほとんどかからないと思われるので、ぬれ手で粟(あわ)のおいしい業務だと思います」(種田弁護士)
保証拒否もある
また種田弁護士は「機関保証は、保証人がいないから申し込むのですが、契約書を読むと、オリコ側が機関保証をしたくないときは拒否できると書いている。給費がなくなった上に、貸与すら受けられない修習生が出る可能性もあります。貸与制自体が、法律家になる夢を砕く制度だと思いますが、機関保証は、それにとどめをさす制度といえます」と指摘します。
貸与制で借りたお金の返済は、5年の返済猶予の後、10年間で返済します。機関保証を受けた元修習生の返済が滞るとオリコが代位弁済をしますが、その際、オリコは元修習生に年6%の遅延損害金が請求できます。
選定過程に疑問も
オリコと機関保証 最高裁判所は2010年に企画競争の結果、機関保証の企業としてオリコを選定しました。企画競争に応募したのが、オリコともう1社だけ。どんな会社が参加したかは、非公表です。選定は最高裁の職員ら4人でつくる評価委員会で行われました。このうち1人が「金融機関の役員経験者」ですが、この委員の名前も明らかにしておらず、選定過程には疑問の声も上がっています。