総選挙を受けたNHKの政党討論番組が15日夜、行われ、各党の党首クラスが、選挙結果、経済政策、社会保障、集団的自衛権行使問題などについて議論をかわしました。日本共産党からは志位和夫委員長が出席しました。司会は解説委員の城本勝氏でした。

選挙結果

安倍政権と対決、経済でも外交でも対案示す姿勢が、評価をいただいた


 選挙結果について、民主党の岡田克也代表代行は「厳しい結果」と指摘。維新の党の江田憲司共同代表は「9月末に結党した新党で2カ月もたたないうちに解散」と言い訳し、8月に結党した次世代の党の平沼赳夫党首も「もう少し時間があれば」と悔やみました。

 志位氏は、城本氏から「共産党は、『自共対決』を前面に打ち出され躍進しましたが」と問われ、こうのべました。

 志位 日本共産党は、今度の総選挙で、比例代表で606万票をいただき、小選挙区でも沖縄1区で赤嶺(政賢)さんの勝利を勝ち取ることができまして、21議席で議案提案権を獲得できました。まず、ご支持、ご支援いただいたすべてのみなさまに心からの感謝を申しあげたいと思います。

 選挙を振り返ってみまして、安倍政権の、国民の民意そっちのけの暴走に対する不安感といいますか、「この道は危ないぞ」という、これは非常に強いです。

 そのなかで、私たちが“安倍政権の暴走ストップ”と正面から対決の姿勢を打ち出しました。対決と同時に、たとえば、経済の問題でも外交の問題でも、別の選択肢を、対案をきちんと示しました。この姿勢が評価をいただいたのかなと思っています。

 それから、もう一点、沖縄では四つの小選挙区すべてで、“辺野古新基地建設反対”で共闘ができまして、全部で勝利できました。これは非常に画期的な成果だと思います。ぜひこの民意は、安倍政権、しっかり重く受け止めてほしいと思います。

経済政策

大企業の内部留保の活用がカギ――暮らしを守るルールをつくって


 経済政策では、民主・岡田氏が「アベノミクス」について、「できれば一緒にやりたいという部分はある」と歩み寄り、自民・谷垣氏も「お知恵があればお借りしたい」と歓迎。維新と次世代の両党首も評価しました。

 番組は「一部の大企業や一部の人だけアベノミクスの効果を実感している、国民のほとんどは負担ばかり」などの視聴者の声を紹介。志位氏は次のように発言しました。

 志位 私は、「アベノミクス」といわれる経済政策の考え方が根本から違っていると考えています。

 (党首討論などで)安倍首相ともずいぶん議論したんですが、結局、安倍さんがおっしゃるのは、「大企業がまずもうけをあげれば、いずれは国民の暮らしに回ってくる」ということでした。しかし、待てども待てども回ってこないわけです。実質賃金は16カ月マイナスですし、「雇用が増えた」といっても非正規の方であって、正社員は減っています。ですから、首相は「この道しかない」とおっしゃいますが、私は「この道に先はない」と思います。

 やはり、大企業応援から暮らし応援にかじを切り替えるという政策転換が必要だと(思います)。カギになってくるのは、大企業が抱えている285兆円まで膨れ上がった内部留保を活用して、国民の暮らしに回るようにすることです。

 政府が企業に「命令」して「出せ」というわけにはいきません。ただ、国民の暮らしを守るルールをつくることで、内部留保が暮らしに回るようにすることはできます。たとえば、非正規から正規への(流れをつくる)ルールをつくっていく。あるいは最低賃金の引き上げのルールをつくっていく。あるいは(中小企業の)下請け単価を適正なものにするルールをつくっていく。長時間労働を規制するルールをつくっていく。このことによって、285兆円の内部留保が暮らしに回るようにしていく。これを政治の責任でやっていくということが、いま本当の意味での経済の好循環をつくるカギだと思っています。

自民・谷垣幹事長――「内部留保の活用という発想は共通のところも」


 志位氏のこの提起について、城本氏は「内部留保の活用ということは、共産党だけでなく、他にもそうした主張があると思うが」とのべ、自民・谷垣氏に質問しました。谷垣氏は「賃上げに結び付けていくことは必要」「手法はいろいろと志位さんのところと同じかどうかわかりませんが、内部留保を活用する意味では大きな発想は共通のところがあるかもしれません」とのべました。

社会保障財源

消費税10%は中止、「消費税に頼らない別の道」での具体的な財源提案


 消費税10%増税について、公明党の山口那津男代表は「谷垣さんも私たちも野党のときに、民主党の提案に応じて3党で合意した」と指摘。民主・岡田氏は、増税の先送り実施を決めた安倍晋三首相の対応を「われわれに何の相談もなく先送りを決めた」と批判するだけでした。維新・江田氏は「社会保障の財源等にあてる増税は否定しない」と語りました。志位氏はつぎのようにのべました。

 志位 私たちは消費税10%への増税は中止すべきだという立場ですが、社会保障の財源、あるいは財政再建のための財源は、「消費税に頼らない別の道」で確保すべきだという具体的な財源提案を出しております。

 二つありまして、一つ目は、富裕層と大企業に対する応分の負担を求めること(です)。特権的な不公平税制がありますから、これを正して、応分の負担を求める税制改革を行い、そして、政党助成金などを廃止することを含めて無駄の一掃とあわせて、新たに20兆円ぐらいの財源をつくることを考えております。

 もう一点は、さきほどいった大企業の内部留保を活用して国民の所得を増やす経済改革をやる。このことによって、税収が上がってきます。すぐには上がりませんが、だいたい10年後には20兆円ぐらいの新たな税収増を考えています。

 私たちのプランでは、両方をあわせますと40兆円ぐらいの財源がつくれますので、これで消費税に頼らず、別の道で社会保障をよくする、財政再建をすすめていく。これをぜひやろうじゃないかと(主張しています)。政治の姿勢を変えればこうした道があるということをおおいに主張しているところです。

集団的自衛権

問題の本質は「海外で戦争する国づくり」――平和の外交戦略こそ必要


 集団的自衛権行使容認の「閣議決定」をめぐり、自民・谷垣氏が「日本を取り巻く環境はかなり厳しい」「武力行使の新3要件を設けきわめて限定された枠内でやるので、日本が戦争に向かっていくというのは明らかに誤解です」と発言。これについて志位氏はズバリ批判しました。

 志位 安倍さんとは、国会でも党首討論でも議論したのですが、結局、2001年のアフガン戦争、2003年のイラク戦争のような戦争をアメリカが起こしたさいに、従来の「戦闘地域」まで行って自衛隊が行動することになると首相も認めたわけです。そうしますと、「相手から攻撃されたらどうするのか」と詰めますと、「武器の使用をする」というところまでくるわけですよ。そうしますと、やはり戦闘になってくる。「国連の活動」への「後方支援」だといっても、そこで戦闘が起こる、戦争になる。ですから、この問題の本質というのは、「海外で戦争する国づくり」だというふうに私たちは考えておりますし、「閣議決定」の撤回を強く求めています。

 先ほど、谷垣さんが“安全保障環境”ということを言われました。私は、北東アジアの平和的な環境をどう築くかは非常に大事な問題だと思いますが、もっぱら軍事で構えるということになりますと、相手も軍事になる。軍事対軍事のエスカレーションになるのが一番まずい。

 私たちは、「北東アジア平和協力構想」というのを提唱しておりますが、ASEANの国々がやっている東南アジア友好協力条約のような、紛争の話し合いの解決の平和な枠組みを北東アジアにもつくろうと提唱しています。そういう大きな外交戦略こそいま、日本には必要です。憲法9条を生かした平和な外交戦略が必要だと思っています。

 民主・岡田氏は「志位さんもおっしゃったように、戦闘行為に巻き込まれる可能性は現実には出てくる」とのべました。

武力行使の「新3要件」

経済上の問題で武力行使――「限定的」というが無限定になる


 また、自民・谷垣氏があげた「新3要件」について、志位氏は次のようにのべました。

 志位 (武力行使の)「新3要件」ということが問題になりました。これも党首討論で議論になったのですが、一つ問題になったのは、ペルシャ湾の機雷の掃海ということでした。安倍総理が、結局、国際法上の停戦合意ができていなくても、事実上の停戦合意があれば(機雷の)掃海はあり得るんだと、そういう発言をされたのです。こうなってきますと、事実上の停戦合意があったとしても、国際法上の停戦合意がなければ機雷掃海は国際法上、武力の行使になるわけです。ですから、石油が断たれるという大問題であったとしても、経済上の問題で武力の行使にまでいってしまうということになれば、「限定行使」とおっしゃいますが無限定になるのではないかということが党首討論でも大問題になった。

 自民・谷垣氏は「現実の問題では、掃海艇は木とプラスチックでつくってあり、危険性のあるところにもっていけるようなものではない」などと弁明。志位氏は、重ねて次のように批判しました。

 志位 現実の問題をうんぬんではなく、要するに国際法上の停戦合意がないところに掃海艇を出せば、そして掃海をやれば武力の行使になるわけです。それを経済上の問題が深刻だからといってやってしまったら、それを「限定行使」とはいえないじゃないか、無限定になるじゃないかということを、党首討論でもずいぶん問題になったわけです。

政治にのぞむ基本姿勢

安倍政権に国民は白紙委任を与えていない――国民との協力で政権を包囲する


 討論の最後に、今後の政治にのぞむ基本姿勢について問われ、民主・岡田氏は「野党陣営も、政権の受け皿になれるようにお互い協力して、なるべく一つのかたまりをつくっていく努力をしなければならない」と表明。維新・江田氏は「肝心なことは基本政策の一致。今回、すみわけをいろいろやったが、『そんなものは選択肢として認めない』というのが国民の審判だ」と指摘しました。志位氏は次のように答えました。

 志位 私がまず、安倍政権、自公政権に求めたいのは、今度の選挙の結果で示された民意に真剣に向かい合う必要があるのではないかということです。

 たしかに自民党、公明党が(議席で)多数を占めたのは事実ですけれども、(大政党有利に民意をゆがめる)“小選挙区効果”もずいぶんあったと思うのです。決して国民の多数が白紙委任状を与えたのではない。

 たとえば、沖縄では、四つ、全部の選挙区で、自民党候補が県民への公約を裏切ったということで、退場の審判が下っているわけです。“新基地建設反対”と、島ぐるみの民意が示されている。こういう民意に対して、謙虚に正面から受け止めるという姿勢が必要ではないか。

 国会のなかでは与党は大きいですけれど、国民のなかでは、(安倍政権が)今からやろうとしている消費税10%、集団的自衛権、原発再稼働、沖縄の新基地、どれもが国民の多数――5割、6割が反対している問題ですから、おおいに国民との協力で安倍政権を包囲していきたい。

 もちろん、国会運営での民主主義をきちんと貫かせる問題などは、野党間の協力をはかっていきたいと考えています。