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国民に背向ける首相の国会答弁
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国民に背向ける首相の国会答弁

2015-02-09 11:05

     通常国会は6日までに、衆参予算委員会での補正予算審議・集中審議が終わりました。「イスラム国」問題、安全保障、憲法、アベノミクス、米軍基地、社会保障、原発―どのテーマをとっても、安倍晋三首相の答弁の異常さが際立ちました。

    人質事件 「テロに屈せず」と検証拒否

     過激組織「イスラム国」による日本人殺害事件。日本共産党の小池晃参院議員が、「イスラム国」対策で2億ドル支援を表明したエジプトでの首相演説について、「拘束された日本人に危険をもたらすと考えていたのか」と質問(3日)したのに対し、安倍首相は「質問はまるでISIL(イスラム国)を批判してはならないような印象だ。それはまさにテロリストに屈することだ」と政府対応への疑問を「テロへの屈服」にすりかえ、異論をはねつけました。

    安全保障法制 地球上どこでも派兵

     加えてひどいのは、同事件を口実に、首相は「自衛隊の持てる能力を生かし、(海外の日本人の)救出に対応できるようにすることは国の責任だ」と、集団的自衛権行使容認を具体化する安全保障法制の推進姿勢を鮮明にしていることです。

     米国などの同盟国による先制攻撃をきっかけに集団的自衛権を行使する可能性についても、首相は「全ては(昨年7月の)『閣議決定』の3要件に当たるかどうかで判断すべきもの」と排除しない考えを強調。行使の地理的範囲について「どこだから当てはまらない、近くなら当てはまるということではない」と述べ、地球上どこでも派兵可能にすべきとの考えも示しました。

     首相は、自衛隊による米軍・多国籍軍の後方支援を可能にする海外派兵恒久法を制定する考えも提示。

     さらに、今回の案件は、秘密保護法の指定対象になること、また「スパイ防止法」も今後検討していくことを表明しました。

    沖縄・米軍基地 選挙の民意まるで無視

     「(普天間基地の)辺野古への『移設』は沖縄の負担軽減に十分資する」(1月30日)

     沖縄県民あげて反対している名護市辺野古への米軍新基地建設問題。民意を踏みにじり新基地建設に突き進もうとする安倍政権の姿勢をただした日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への答弁です。

     県民は、昨年11月に翁長雄志知事を誕生させた後、総選挙では、小選挙区で「オール沖縄」の候補者を全勝させ、新基地建設反対の明確な意思を示しました。“普天間基地の危険性除去”“他に道はない”との安倍政権のごまかしを見抜いたうえで下された判断です。

     それにもかかわらず壊れたレコードのごとく同じことを繰り返す首相。翁長知事との面会さえ言明せず、対話で打開する姿勢も示せません。

    憲法・歴史認識 改憲に強い執念示す

     シリアでの日本人殺害事件をめぐる質疑のなかで、次世代の党の和田政宗参院議員が「外国で拉致・拘束された日本人をいかなる場合でも救出できるよう、憲法9条を改正すべきだ」と求めたのに対し、首相は、待ってました、といわんばかりに、自民党改憲草案の実現に強い執念を示しました。

     戦後70年談話をめぐっても、植民地支配と侵略に反省とおわびを表明した村山富市首相談話(1995年)を「全体として受け継ぐ」といいながら、「国策を誤り」などの談話の核心をなす文言をかたくなに口にしようとしません。

    アベノミクス 大企業のもうけ最優先

     「われわれはトリクルダウンを期待している政策を行っているわけではない」

     首相は、大企業優先の政策を続けながら、それをごまかす答弁を繰り返しています。しかし、首相自身が“大企業がもうかれば国民にもおこぼれがある”というトリクルダウン理論にしがみついているのは明らかです。

     日本共産党の井上哲士参院議員は「史上最高利益を上げている大企業に減税しても賃上げには回らず、内部留保や株主配当に回るだけだ」と批判。首相は「企業が収益力を高めより積極的に賃上げに取り組むように促す」と、相変わらず大企業優先の経済政策に固執しています。

    社会保障 手当たり次第に削減

     首相は「財政再建」を口実に社会保障への攻撃を強めています。今夏に策定する「財政健全化計画」に関して、「歳出の最大の項目は社会保障分野だ」と社会保障をやり玉にあげ、「社会保障の自然増を含め、聖域なく、徹底的な重点化、効率化を図っていく」と述べました。(1月29日、衆院予算委員会)

     2015年度予算案では70~74歳の医療費自己負担増をはじめ、介護報酬削減、年金の実質削減など手当たり次第に負担増と給付減を盛り込んでいます。

     介護報酬の削減については、全国で140万人を超える削減反対署名が寄せられているにもかかわらず「全体としてみれば、施設側がマイナス改定に耐えうると考えた」と強弁。現場の訴えに耳を貸さない姿勢です。

    原発 福島の苦しみ 人ごと

     発生からまもなく4年になる福島原発事故。今でも収束の見通しはたたず事故原因の究明はされていません。

     しかし首相は「原発ゼロと言うわけにはいかない」「地元の理解を得ながら再稼働を進める」(1月27日、衆院本会議)と明言。国民多数の反対の声に背を向けています。

     日本共産党の高橋千鶴子衆院議員が福島県内の原発全基廃炉について「福島の声だ」として迫りましたが、首相は「事業者が判断を行うもの」と人ごとのような冷たい答弁。自身が福島で行った総選挙での第一声で、原発に全くふれなかったことを問われると「時間の関係がある」と述べ、事故に苦しむ県民の願いに応える姿勢をみじんもみせませんでした。

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