主張
15年度軍事予算案
国を危うくする異常な拡大だ
自民・公明の与党が衆院通過を強行した2015年度政府予算案の重大問題の一つは、5兆円を突破した軍事費(防衛関係費)です。安倍晋三政権が進める「海外で戦争する国」づくりや沖縄での米軍新基地建設を財政的に裏付けるものであり、参院での徹底審議とともに、その具体化を許さないたたかいがいよいよ大切です。
安倍政権の暴走凝縮
15年度の軍事費は一般会計計上分でも4兆9801億円に上りますが、「東日本大震災復興特別会計」計上分の329億円を加えると、総額は5兆130億円に達します。当初予算ベースで文字通り初の5兆円超えであり、02年度の4兆9560億円という過去最高額を13年ぶりに更新することになります。異常な軍事突出です。
額の大きさに加えて重大なのは、その中身です。「海外で戦争する国」に向けた安倍政権の数々の暴走が凝縮されているからです。
安倍政権が決定した自衛隊増強計画である「中期防衛力整備計画」(中期防、14年度~18年度)は、「島しょ部に対する攻撃への対応」として「本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備する」ため「水陸機動団」を新設することを打ち出しました。海外侵攻も可能になる“日本版海兵隊”の創設です。
中期防2年目に当たる15年度は、「水陸機動団」創設に向け、垂直離着陸機オスプレイ(5機516億円=契約ベース、以下同じ)や水陸両用車(30両203億円)の調達を盛り込んだ上、強襲揚陸艦の導入をにらんだ海外調査も行おうとしています。県営佐賀空港を自衛隊オスプレイ部隊(全17機)の常駐基地にするため用地取得費などの経費(106億円)も計上していますが、地元の反対意見を無視したもので許せません。
“日本版海兵隊”の創設は、最新鋭のF35戦闘機(6機1032億円)や無人偵察機グローバルホーク(一部構成品154億円)の調達などとも合わせ、周辺諸国との軍事緊張を高め、東アジアの平和の環境づくりに逆行するものであり、中止すべきです。
憲法の平和原則に背き防衛省・自衛隊の組織改変を合わせて行おうとしていることも重大です。
防衛省の外局として新設を計画している「防衛装備庁」は武器の輸出や国際共同開発・生産への参加の推進が大きな狙いであり、安倍政権が強行した「武器輸出禁止原則」の廃止に基づくものです。
自衛隊の作戦行動の迅速化を図るため、防衛省内部部局の運用企画局をなくし、部隊運用に関する業務を統合幕僚監部に一元化するなどの計画は、憲法が規定するシビリアンコントロール(文民統制)の支柱となってきた「文官統制」の撤廃が狙いです。自衛隊を「海外で戦争する軍隊」にしていく危険な動きは許されません。
新基地埋め立て費も
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で護岸工事や埋め立て土砂購入費などの経費(1736億円)を計上しているのは民意を踏みにじる暴走そのものです。同県東村高江へのオスプレイ着陸帯の建設費も盛り込まれています。
国民には消費税増税や社会保障費圧縮を押し付ける一方で「海外で戦争する国」づくりや米軍新基地建設を強権的に進める安倍政権に対し、「ノー」の国民世論を広げていくことが必要です。