しかし、「基本的な考え方」を引き継ぐなら、戦後70年という節目で、談話の核心部分を再確認するのが当然です。「引き継ぐ」といいながら「書かない」と断言するのは大きな矛盾です。
「村山談話」の継承を否定する発言を繰り返し、「慰安婦」の強制性を事実上否定してきた安倍首相が、結局、「村山談話」のキーワードを「書かない」ことに固執すれば、「歴史偽造」そのものと受け取られるのは当然です。
安倍首相は22日からのバンドン会議60周年記念首脳会議に出席したのち、26日から訪米して29日に米上下両院合同会議で演説する予定です。そこで安倍首相が、歴史問題にどんな姿勢を示すのかが世界の注目を集めています。
米紙ニューヨーク・タイムズ20日付社説は、安倍首相の訪米を前に、戦時の歴史に対し首相が「どれくらい誠実に向き合うかにかかっている」と指摘。安倍首相は公式に侵略に対する反省を表明してきたとしつつ、「首相がコメントに曖昧な限定を付け加えていることは、真剣な反省をせず、歴史をごまかすのではないかという疑いを呼び起こしている」と批判しています。
元外務省高官の一人も、「『全体として引き継ぐ』とか『基本的に』という曖昧さを残す言い方は、村山談話を薄めるもので非常に問題がある。疑義の余地なくそのまま明確に引き継ぐのでなければ混乱を引き起こすだけだ」と指摘。「韓国は『植民地支配』、中国は『侵略』、そして両方とも『反省と心からのおわび』を求めてくる、一部を削れば収拾がつかなくなる。米国は『パールハーバー(真珠湾)』と、フィリピンで米兵らを虐待した『バターン死の行進』の記憶を求めるが、アメリカ向きに、そこだけ触れてアジアへの謝罪を消すのはばかげたことだ。仮に米議会演説を乗り切れても、批判とブーイングが巻き起こるだろう」と述べます。
戦後70年の節目にアジア侵略に対する明確な反省に背けば、安倍政権への国内外での批判で行き詰まりを深めることは必至です。