民意に耳を傾けない、異論は切り捨てる―。安倍政権・自民党の強権体質が、はっきり現れました。自民党の会合(25日)で、同党若手・中堅議員や作家の百田尚樹氏から「マスコミを懲らしめる」「沖縄2紙をつぶせ」など、言論弾圧をあおる暴言が相次いだ問題です。

 「思い上がりに怒りを覚える」(朝日新聞)、「気に入らない言論を強権で押しつぶそうとする姿勢」(沖縄タイムス)など、厳しい批判の声が上がったのは、当然です。「言論の自由に対する乱暴きわまる挑戦」(日本共産党の志位和夫委員長)だからです。

“われ関せず”通用しない

 安倍晋三首相(自民党総裁)は一連の暴言について「党の正式な会合ではない」「そのことと平和安全法制がどういう関わりがあるのか理解が難しい」(26日、衆院安保法制特別委)などと述べ、“われ関せず”の態度をとっています。

 全く通用しません。安倍政権は、戦後最長となる95日間の国会の会期延長を強行し、与党の数に任せた可決もにらんで、戦争法案を押し通そうとしています。一方で、世論調査(共同通信)では法案に「反対」が58・7%に達し、わずか3週間で11ポイントも上昇。「時間をかけても違憲の疑いは晴れそうもない。法案は撤回すべき」(岩手日報)など異論が噴出するもとで、一連の暴言は飛び出したのです。

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設も強引に進めれば進めるほど、基地を許さない「オール沖縄」の結束はいっそう頑強になっています。世論調査でも県民の「反対」は66%に上ります(「朝日」などの共同調査)。

 思い通りにいかないメディアを「懲らしめ」「つぶせ」、そして歯向かう国民世論を封じよ―。一連の暴言は、二つの主要政策の行き詰まりをどう乗り切るか、安倍政権・自民党のむき出しの本音です。

首相支援の“お友達”集会

 暴言は、首相に近い自民党の若手・中堅議員らの会合で飛び出したものです。次期総裁選(9月)で「安倍再選」に向けた環境整備が狙いで開いた会合だとされます。安倍首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一総裁特別補佐ら政権中枢のメンバーも出席。いわば安倍政治をさらに続けようという決起集会のようなものです。

 そこで講師として招かれた百田氏は、「南京虐殺はデマ」などといった暴言の常連。2012年総裁選で安倍氏の「再登板」を求める民間有志の一人に名を連ね、首相自ら、同氏と対談した本の中で「近年、これほど楽しく対談したことは少ない」と述べるほど親密な間柄です。

 じっこんの作家と“お友達”議員らが、首相支援のために開いた会合です。そこでの暴言が、首相と関係ないわけがありません。

 首相は暴言について「遺憾」を口にしつつも、「内容は、外に出すということは前提にしていない中で話した」「その方に成り代わって勝手におわびをすることはできない」(26日)と述べ、発言者をかばいだてしています。暴言を暴言と正面から認めない姿勢は、それが首相の本心と無関係でないことを示しています。

 言論弾圧への危険な衝動を封じるカギは、安倍政権を包囲する圧倒的多数の国民世論です。

 (竹原東吾)