「平和安全法制」とは名ばかりで、自衛隊の海外での武力行使を進める「違憲立法」であることが、衆院の論戦を通じて明々白々となった戦争法案―。
市田氏は与野党議員に向けて、「いま参議院は、違憲立法の成立に手を貸すかどうかが鋭く問われている」と問いかけたうえで、「政府・与党がどんなに耳を塞(ふさ)ごうとも、国民の声を遮ることは絶対にできない。国中に国民の声をとどろかせ、希代の悪法を廃案に追い込むために全力を尽くす」と力強く決意を表明しました。民主党の席からもたびたび拍手と「そうだ!」の掛け声が上がりました。
三つの違憲性指摘
米の無法な戦争にも
国民多数が反対しているのに、法案を強行採決した安倍晋三首相は、この間「PKO(国連平和維持活動)法や日米安保条約改定時も反対論があった」とのべています。こうした首相の言動について、市田氏は「“国民はいずれ怒りを忘却する”――あなたがそう思っているとするなら、これほど主権者国民を侮辱する言葉はない。独善の最たるもので、独裁への道だ」と厳しく批判しました。
そのうえで、憲法と相いれない戦争法案の危険な本質を三つの角度から指摘しました。
一つは、米国が世界のどこであれ、戦争に乗り出した際、これまで「戦闘地域」とされてきた場所にまで自衛隊がいって軍事支援―兵たんを行うことです。
二つ目は、形式上「停戦合意」がされても、なお戦乱が続く地域に自衛隊を派兵し、治安活動をさせることです。
三つ目に、これまで政府が一貫して「憲法違反」としてきた集団的自衛権の行使を容認したことです。
市田氏は「米国が無法な戦争に乗り出した場合でも自衛隊が参戦し、ひたすら米軍の手足となって武力行使を行うものだ」と厳しく批判しました。
これらの指摘に対して安倍首相は「後方支援は武力行使にあたらない」「米国の戦争に自衛隊が参戦することは決してない」などと従来の答弁をひたすら繰り返すだけでした。
9条の持つ重み
国際貢献の安全担保
「現行憲法が持つ70年の重みをもう一度かみしめるべきだ」と述べた市田氏。「戦後一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出さなかったのは日米同盟のおかげではない。憲法9条が存在し、平和を希求する国民の運動があったからだ」と語気を強めました。世界の紛争地で医療・生活支援の活動を行う多くの日本人ボランティアは「自衛隊は一発も外国人に銃弾を撃っていない。だから海外で活動ができる」と語っています。市田氏は「憲法9条が、国際貢献活動の安全の担保として機能してきたことを認めないのか」と首相に迫りました。
安倍首相は、多くの日本の非政府組織(NGO)関係者が「自衛隊が近くにいれば自分たちにも危険がおよぶ」と懸念を示していることを全く無視し、「ボランティアが危機にひんしたときに、近くにいる自衛隊が駆けつけて守ることができる」と強弁しました。
法体系破壊のクーデター
国民を危険にさらす
憲法9条のもと、歴代の政府は集団的自衛権行使を認めてきませんでした。今国会に参考人として出席した宮崎礼壹(れいいち)・元内閣法制局長官も「集団的自衛権の行使容認は、限定的と称するものも含めて、従来の政府見解と相いれない」と述べています。市田氏は「政府自身がこれまでの法解釈を覆す法案を国会に提出する。クーデターともいうべき法体系の破壊だ」と指摘。安倍首相が「(集団的自衛権は)戦争を未然に防ぐためのもの」だと話していることには「これほどの欺瞞(ぎまん)を私は知らない」と厳しく批判し、阪田雅裕・元内閣法制局長官が「進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない」と述べていることを突きつけました。
首相は、戦争法案が「憲法に合致したもの」と言いますが、その根拠として、横畠裕介内閣法制局長官でさえ「集団的自衛権行使は議論になっていない」と述べている1959年の最高裁砂川判決しか持ち出すことができませんでした。
軍事対軍事の悪循環
9条の精神で外交を
安倍政権は憲法解釈変更の唯一の理由に「安全保障環境が根本的に変化した」ことをあげています。市田氏は、北東アジアには北朝鮮問題や領土問題が存在しているが「軍事対軍事の悪循環に陥ることが最も危険だ」と強調。イラン核問題が外交交渉で解決されようとしていることなどをあげ「平和の環境をつくりだすための憲法9条の精神にたった外交戦略こそ求められる」と訴えました。