主張
「介護」負担増の夏
国民の願いにどこまで逆らう
介護保険制度で8月から新たな利用者負担が始まります。一定額以上の所得がある高齢者のサービス利用料負担が1割から2割に倍増するほか、特別養護老人ホームなどの利用者の負担軽減措置が大幅に縮小されます。いずれも利用者と家族に大きな打撃です。経済的負担の重さに耐えられず、必要な介護サービスを使うことをあきらめる人たちが、さらに増加する危険が生まれています。安倍晋三政権は、安心の介護を求める国民の願いにどこまで逆らうのか。
多くの利用者が頭抱える
「私も負担増とは…」。8月から負担増になる知らせを自治体から受け取った利用者が頭を抱え、不安を募らせています。
利用料の本人負担は2000年に介護保険が始まってから、ずっと1割負担でした。2割負担への引き上げは、制度発足以来の原則を初めて突き崩すものです。
今回の負担増の対象は、1人世帯で年金収入だけなら年280万円以上の人たちなど(65歳以上の5人に1人)です。財務省は対象者の拡大を要求しています。
月約1万5000円の利用料だった場合、今後約3万円にはね上がります。年金収入は実質的に減る一方なのに、大変な負担増です。ほかに医療費負担などもある人がほとんどです。「もう暮らしは成り立たない」とやむなく必要なサービスをやめたり、減らしたりする人も生まれています。“負担増の対象は余裕のある人”などと実態と異なるデータを「捏造(ねつぞう)」して負担増を強行した、安倍政権の責任がきびしく問われます。
非課税の低所得の人で特養など施設利用者は、利用料が1割負担のままでも食費や部屋代の補助が8月から打ち切られる人が少なくありません。一定の資産(単身で預貯金1000万円超など)がある人たちが補助から外されるためです。現在補助を受けている人は施設利用者の約7割といわれており、その影響は計り知れません。
しかも補助申請の手続きで、預金通帳のコピー提出を義務付けるなどとしたため、認知症の人の家族らから「通帳の場所がわからず申請できない」と批判が噴出し、大混乱を引き起こしました。介護・医療関係者や日本共産党の追及で、書類未提出でも支給できるように一部改善はしたものの、罰則付きの厳しい資産調査自体は、あらためません。利用者の心理的抵抗を強め、申請をためらわせる“水際作戦”はやめるべきです。
これらの負担増は、昨年の国会で自民、公明などが成立を強行した「医療・介護総合法」の一環です。同法にもとづき、4月から要支援1と同2の人の訪問・通所介護の「保険給付外し」、特養の入所要件を「要介護3以上」に限る厳格化なども実行されています。介護の質を支える介護報酬も過去最大規模で引き下げられました。かつてない改悪を次々と強行する安倍政権の「介護破壊」は、歴代政権のなかでも突出しています。
安心の公的仕組みこそ
介護保険発足から15年、当初平均2000円台だった介護保険料はいまや5000円台です。負担ばかり増え、いざ必要なとき使えない―。「公的保険」としての存在そのものが問われる事態です。
国民に犠牲を強いる改悪は中止・撤回し、国の責任で公的介護保障の拡充に転じるべきです。