主張

最低賃金目安改定

格差解消に地域の引き上げを

 法律で定められた最低賃金の「目安」を、全国平均では18円引き上げ時給798円とする国の中央最低賃金審議会の答申が出され、今後は各都道府県などの審議会での検討が始まります。時給798円では生活できる賃金とは呼べません。都道府県ごとの最低賃金を決める地方の最低賃金審議会でさらに上積みすることが、賃金の低い非正規労働者などの賃金の底上げにとっても、地域ごとの格差の是正にとっても不可欠です。

物価上昇分にも達せず

 時給798円では1日8時間で月20日間働いても12万7680円にしかなりません。とても生計費を賄う賃金には足りず、働いてもまともに暮らせない「ワーキングプア」や異常な長時間労働を抜け出すことはできません。引き上げ幅の18円は率にしてわずか2・31%です。昨年1年間の消費者物価上昇率の2・7%にも達せず、このままでは「賃上げ」どころか、実質的な賃下げになります。

 最低賃金は賃金の最低額を保証し、国民経済を健全に発展させるために法律で求められているものです。違反すれば罰則もあります。にもかかわらず最低賃金どおりではまともに暮らせず、収入を確保するためには長時間労働で心身がすり減らされるというのはまったく異常です。

 低すぎる最低賃金を引き上げるために、政府も経団連や連合との間で、「できるだけ早期に全国最低800円、2020年までに平均1000円」との目標を掲げています。ところが今回の「目安」改定でも平均でさえ800円に届かず、2020年までに平均1000円を達成するには、毎年40円上げなければなりません。自らかかげた目標達成のメドさえ示さない姿勢はまったく無責任です。

 派遣労働者やパートタイマーなど非正規雇用の労働者の賃金は、最低賃金ぎりぎりというところが少なくありません。労働者全体の賃金の底上げに最低賃金の大幅な引き上げは欠かせません。最低でも時給1000円以上という労働者の要求は当然です。昨年の消費税増税以降、消費の低迷が続いており、最低賃金の引き上げによる賃金の底上げは、消費の回復にとっても不可欠です。

 最低賃金は、低いだけでなく都道府県ごとに大きな格差があるのも問題です。国が示す「目安」自体、全国平均では18円の引き上げですが、東京などAランクは19円、Bランクは18円、CランクとDランクは16円と差があります。そのため「目安」通り引き上げられても、東京は907円なのに、沖縄は693円にしかなりません。東京と千葉、愛知と静岡など隣り合った県でも大きな格差があり、地域格差の是正は喫緊の課題です。

全国一律の制度目指して

 政府は地域ごとの経済格差があるなどといいますが、同じ国内で生活費にそれほど大きな差があるわけではありません。最低賃金が低い県から高い県に労働者が移動するなど、地域格差の弊害は現実化しています。本来最低賃金は、全国どこで働いても生活できるよう全国一律にすべきです。それが実現していない以上、地方の審議会での上積みは不可欠です。

 大企業が大もうけしためこんだ分を賃金と下請け単価の引き上げに回せば、最低賃金の引き上げによる賃金底上げは実現可能です。