主張

自衛隊の内部文書

国民と国会を欺く危険な暴走

 戦争法案が国会で審議されているさなかにもかかわらず、自衛隊が法案の成立を前提に、今後の海外派兵や日米共同訓練などの計画を詳細に検討していることを、日本共産党の小池晃副委員長(参院議員)が明らかにしました。国民多数の反対世論や国会での審議をないがしろにし、法案の施行をあらかじめ周到に準備しておこうとする、許し難い暴走に他なりません。「国民の意見に耳を傾け、法案審議でも丁寧な説明を心掛ける」などと繰り返す安倍晋三首相の言明が国民と国会を欺くものであることを浮き彫りにしています。

法案成立を既定事実に

 小池氏は11日の参院安保法制特別委員会で、陸・海・空自衛隊を束ねる統合幕僚監部が5月末に作成したとみられる内部文書を暴露しました。とりわけ小池氏が重大問題として指摘したのが、「ガイドライン及び平和安全法制関連法案を受けた今後の方向性」と題する、「取扱厳重注意」の文書です。

 同文書には、日米両政府が4月末に合意した新たな「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」と戦争法案の成立を既定事実にして、自衛隊の「今後の方向性」に関する「主要検討事項」が書かれています。戦争法案は5月26日の衆院本会議で審議入りしました。その前後にはすでに、自衛隊は法案の成立を前提に検討を進めていたことになります。

 小池氏の追及に、中谷防衛相は「法案の内容を十分に分析、研究しつつ、現場の(自衛)隊員にもよりよく理解してもらう」ためなどと弁明しました。しかし、自衛隊が検討しているのは法案の成立を受けての「今後の方向性」であり、防衛相の言い訳は通用するものではありません。

 検討されている中身そのものも、非常に重大です。

 文書には、「今後の進め方」と題する日程表も付いています。5月末のところに「現時点」と書かれ、「最も早いパターン」として、8月に「法案成立」、来年2月に「法施行」が想定されています。

 5月末時点では8月末に派遣期限が切れることになっていた南スーダンPKO(国連平和維持活動)について、12月に陸自中部方面隊から部隊(第9次隊)を派遣し、来年3月からは「新法制に基づく運用」を始めるというスケジュールまで書かれています。派遣される部隊には、戦争法に基づいて「(他国部隊との)宿営地での共同防衛」や「駆け付け警護」などの新たな任務が追加される可能性があるとし、その準備のための事前訓練の必要まで指摘しています。

 文書が、新ガイドラインにさえ書かれていない、米軍と自衛隊の統合司令部である「軍軍間の調整所」が設置されるとしているのも重大です。小池氏が「自衛隊はいつから軍になったのか」と、その違憲性を批判したのは当然です。

安倍政権の責任は重大

 小池氏の追及に中谷防衛相も「国会の審議中に法案の内容を先取りするようなことは控えなければならない」と述べざるを得ませんでした。自衛隊に「戦前の軍部の独走」と同じような行為を許してきた責任は、中谷防衛相はじめ安倍政権にあります。「戦争する国」づくりを加速する安倍政権下での自衛隊の暴走は、戦争法案の恐ろしさを改めて示すものです。戦争法案は廃案以外ありません。