安倍晋三首相が14日に発表した「戦後70年談話」に内外から厳しい批判の声があがっています。中国政府は同日夜、張業遂・筆頭外務次官が木寺昌人駐中国大使を外務省に呼び「厳しい立場」を伝達する異例の対応。戦後50年に談話を発表した村山富市元首相は同日、「安倍談話」が「村山談話」を引き継いでいる印象は「ない」と断言し、「植民地支配や侵略をしたことが大変悪かったと率直に謝る文になっていない」と批判しました。
自らの言葉で語らず
批判の焦点は、首相が「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」などの言葉を、自らの言葉として語らず、主体を明確にしなかったことに向けられています。
戦後50年の「村山談話」と戦後60年の「小泉談話」は、ともに「わが国は、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々にたいする多大の損害と苦痛を与えた」と明確に述べていました。「安倍談話」との違いが明瞭です。
「巧妙に避けようと」
中国の華春瑩外務省副報道局長は、「日本はあの軍国主義侵略戦争の性質と責任に対してはっきりかつ明確な説明をおこない、被害国国民に真摯(しんし)なおわびを行い、重大な原則的問題でごまかしをすべきでない」とコメントを発表。朴(パク)槿(ク)恵(ネ)韓国大統領は15日の演説で、「安倍談話」に触れ、「今後、日本政府は歴代内閣の歴史認識を継承すると公言したことを、一貫して、誠意ある行動で裏づけ、近隣諸国と国際社会の信頼を得なければならない」とくぎを刺しました。
15日付韓国各紙社説は、「村山談話の表現を使いつつも、誠意ある謝罪を巧妙に避けようとした」(朝鮮日報)などと論評。中国紙も「『村山談話』と比べて明らかに後退」(国営新華社、15日配信の論評)と断じています。
日本の民放各局が14日夜の番組で指摘したのも、侵略や植民地支配を日本がやったこととしてとらえることも、これにたいする反省とおわびも語らない首相の姿勢でした。
TBS系「NEWS23」では岸井成格キャスターが、「談話」が触れた「侵略」などのキーワードは、「主語をあえてぼかした」と批判。「日本だけが悪いのではないという自民党保守派の認識を全面に打ち出した印象が強い」と断じました。
テレビ朝日系「報道ステーション」では、作家・評論家の保阪正康氏が「談話」について、「失望した」と明言。「全体として歴史の問題をとらえるときに、どこか傍観的で地に足が付いていない」と語りました。
「朝日」15日付社説は「それ(=歴史認識)を私物化しようとした迷走の果てに、侵略の責任も、おわびの意思もあいまいな談話を出す体たらくである」と批判しました。