外務省は「日本の案件に加え、中国の案件の審査もあったために、民間の方として同行してもらった」と述べ、高橋氏の同行を認めました。
外務省は公式ホームページの歴史問題Q&Aで、「南京大虐殺」について、「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています」としています。こうした見解を示しながら、「南京大虐殺」に関する記述や展示を「自虐的」と批判してきた研究者を国際会議に同行させる政府の見識が問われています。
ユネスコ同行教授/「南京大虐殺」記述を攻撃
日本政府がユネスコの会合に同行させた高橋史朗・明星大教授は、南京大虐殺の事実を否定する「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長。「南京大虐殺」にかかわる記述に対し「自虐的」「反日的」との発言を繰り返してきました。「南京大虐殺」を否定する研究者らが10月14日に発足させた「『南京大虐殺』の歴史捏造(ねつぞう)を正す国民会議」の呼びかけ人の一人でもあります。10月に開かれた自民党「国際情報検討委員会・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同会議」で示した資料の中で、「南京大虐殺」自体を否定し東京地裁から「学問研究の成果というに値しない」と断罪された亜細亜大学の東中野修道教授らの共同研究を紹介。中国が提出した16枚の写真を捏造写真と断定し、「信ぴょう性に乏しい」などとしています。
アブダビでのユネスコ会合では、世界記憶遺産に登録された「南京大虐殺」関連の資料などの審査が行われました。日本政府は、昨年6月に中国政府が「南京大虐殺」関連資料の審査をユネスコに申請して以降、「資料の『真正性』に問題がある」などの点から、「登録されるべきではない」との日本の立場を主張してきました。外務省は、「この過程で、民間の方から意見を聞き、ユネスコ事務局に意見を伝えてきた」ことも明らかにしています。