主張

国連・核廃絶決議案

問われる被爆国日本の外交

 国連総会の第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)で2日、日本政府が提案した決議案「核兵器廃絶に向けた統一行動」が156カ国の賛成で採択されました。しかし、昨年まで賛成してきたアメリカ、イギリス、フランスが棄権に転じました。昨年棄権したロシアと中国は反対しました。決議案は今後、総会で採択にふされます。

非人道性が焦点に

 日本政府は2000年から毎年、国連総会に「核兵器廃絶」を掲げた決議案を提出してきました。しかし、その中身は、核兵器の禁止、廃絶を直ちに求めたものではなく、「段階的」にすすむとして、核兵器廃絶を実際には先送りするものでした。このように核保有国の主張に沿ったものだったので、米英仏も賛成してきたのです。

 今回これらの国が棄権に変わったのは、核兵器の非人道性についての表現が理由だといわれます。

 残虐な核兵器の使用を禁止し、廃絶すべきであるとする主張は国際政治の大きな潮流となっています。12年に始まった核兵器の非人道性についての共同声明は、今年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議では159カ国が賛同するまでに広がりました。日本は当初アメリカの「核の傘」を理由に、共同声明に加わりませんでしたが、内外の批判に押されて13年から賛同するようになりました。

 今回の日本の決議案は、核兵器がもたらす「人道的結果への深い懸念は『核兵器のない世界』をめざすすべての国の努力の基礎」と強調しました。「(国家)指導者や青年などが核兵器で破壊された都市を訪問すること」「原子爆弾生存者(被爆者)の証言」に触れることも訴えました。被爆国として当然の主張であり、意義あることです。被爆は「侵略戦争の直接の結果だ」(中国)と、これらに反対することは正しくありません。

 ヒロシマ・ナガサキの惨禍をみれば、核兵器使用はいかなる理由からも許されず、直ちに禁止すべきことは明らかです。核保有国は非人道性の議論が発展し、核兵器禁止を求める流れが広がり、追い詰められるのを恐れています。それだけに日本の決議案にすら「危険」を感じたといえるでしょう。

 今回の日本の決議案も、核兵器廃絶への実効力の弱さでは、昨年と本質的変化はありません。核戦力を維持したい核保有国に配慮し、核兵器禁止条約の交渉開始や、拘束力のある法的措置や実行の期限には一切触れていません。第1委員会に日本以外から提案された核軍縮をめぐる四つの決議案のうち、加盟国の約3分の2が賛成した核廃絶条約の交渉開始を求めるなど三つの決議案に日本は棄権しました。核兵器の非人道性を訴える一方で、核保有国に歩調をあわせて、「核抑止力」論を認めるということは、けっして両立しません。

核兵器禁止の先頭にこそ

 日本政府は「核保有国と非核保有国の橋渡し役をする」などと主張してきましたが、核保有国の賛成がえられなかったことは、矛盾と破綻を露呈したといえます。

 日本政府は、「核抑止力」論をきっぱりとしりぞけ、被爆国にふさわしい外交へと舵(かじ)を切るべきです。日本が被爆者とともに核兵器の残虐性を訴え、核兵器禁止条約の交渉開始を求める流れの先頭に立ってこそ、被爆国としての国際的責務を果たすことができます。