横浜市都筑区のマンション傾斜を発端にした杭(くい)打ちデータ偽装問題は、国民の不安を広げています。問題の背景の一つに、工法を「大臣認定」することで「試験」を省略する規制緩和を指摘する声が上がっています。 (遠藤寿人)

 偽装が発覚した横浜のマンションの杭は、旭化成建材のダイナウィング工法で打設されました。杭先端部の鋼製羽根により支持力(杭が支えることができる荷重)が大きく、排出残土量が少ないとされる工法。2004年、国土交通大臣の認定を取得していました。

 大臣認定制度は00年の建築基準法の改悪に伴い新しく設けられました。大臣に代わり技術の妥当性を検証するのが、国が指定する指定性能評価機関です。

 杭の支持力の算定は01年の国土交通省告示で「それぞれ基礎ぐいを用いた載荷(さいか)試験の結果に基づき求めたもの」と規定しています。

 「載荷試験」とは杭に荷重を加え耐力を調べる試験。そのデータを一般財団法人・日本建築センター(東京)などの指定性能評価機関が審査、杭の性能を記載した評価書に基づき、大臣が認定する手順です。

 この制度の一番の特徴は、大臣認定を一度取得すると、対象土壌など適用範囲が同じであれば、おのおのの現場で載荷試験とその図書(書類)を省略することができることです。大臣が認定することで、「試験」を省略する安全軽視の規制緩和です。

 日本建築センターは本紙の取材に、大臣認定を取得すれば「(先端支持力、周面摩擦力などの)係数をこうして決めたという設定の根拠を建築確認申請の時に説明する必要がなくなる。手続き上だいぶ楽になる。大臣認定書の写しをチェックすればいいだけで資料が不要になる」と話します。

 しかし、杭の支持力は各現場の土壌によって異なるのが一般的です。同一の地盤など存在しません。

 「杭打ち工法」やその適用地盤、杭を打つ実際の地盤を適正に判断し、適正に設計されているかなどを行政がきちんとチェックする体制の充実が求められます。