主張
来年度税制論議
大企業バラマキ政治の極みだ
来年度(2016年度)以降の税制についての安倍晋三政権の検討が大詰めです。自民党と公明党が協議してきた17年4月からの消費税増税に合わせた軽減税率導入は対象や規模をめぐって両党幹事長や安倍首相が調整に乗り出しました。法人の実効税率引き下げの拡大も財源問題で調整が続いていますが、一部には財源は棚上げし減税先行をとの声も出ています。消費税はごまかしの「軽減」で増税を強行しながら、大企業向けの法人減税は財源のめどが立たなくても強行する、大企業本位、国民後回しの政治があらわです。
軽減税率は低く抑える
安倍首相は24日、自民党の谷垣禎一幹事長や宮沢洋一税制調査会長らと会談し、軽減税率導入に伴う財源について「社会保障と税の一体改革」の枠内で手当てするよう指示しました。消費税の増税分の一部は社会保障財源に充てられていることを口実に、軽減税率導入は、廃止する低所得者対策の4000億円以内に抑えるよう求めたものといわれます。公明党は反発していますが、自民党は「ない袖はふれない」と強硬です。
軽減税率導入は現在8%の消費税を10%に引き上げた際に一部の品目の税率を8%にとどめるだけで、現在より負担を軽くするわけではありません。それでも消費税増税による負担増を多少ごまかせるというので自民・公明両党が検討を重ねてきたものです。
昨年4月からの消費税の8%への増税は国民の暮らしを直撃し、いまだに「マイナス成長」が続くほど経済も破壊しています。本来消費税増税の負担を軽くするなら再増税そのものを中止すべきなのに、軽減税率導入でお茶を濁そうというのは全く不誠実です。
安倍首相が示した方針は、「生鮮食品」だけなら3400億円、外食も含め「酒を除く飲食料品」とすれば1兆3000億円の財源が必要だといわれるのに、生鮮食品に一部の加工品を加えただけでごまかそうというものです。税率を2%引き上げれば5兆円以上も国民の負担が増えるのに、すずめの涙ほどの効果にもなりません。
国民に対しては「社会保障に回す財源がなくなる」と脅して消費税増税を強行する一方、大企業の恩恵にしかならない法人実効税率の引き下げは、財源がなければ「減税先行でも」と言い出している安倍政権は、まさに大企業向けバラマキ政治の極みです。
法人税は黒字企業しか負担していないので、減税で恩恵を受けるのは大企業です。安倍政権は国税の法人税と地方税の法人事業税などを合わせた実効税率を16年度には31・33%に引き下げるとなっているのをさらに拡大、20%台にしようとしています。「減税先行」のツケは結局、国民の負担に回されることになります。
大企業優先政治の転換を
安倍政権発足以来、「トリクルダウン」(したたり落ち)を狙った経済政策で大企業の利益は増え続けているのに賃金にも雇用にも回っていません。このうえ消費税を増税し大企業に減税すれば、国民の暮らしを破壊し、大企業のため込みを増やすだけです。
暮らしも経済も悪化させる大企業優先政治の転換が急務です。消費税の増税は中止し、社会保障に必要な財源は消費税に頼らない経済運営で確保すべきです。