主張

深まる国保の危機

命を守る公的医療へ再生急げ

 国民の約3割が加入する国民健康保険の危機が深まっています。高すぎる保険料(税)が払えない世帯が約2割にのぼり、保険証を取り上げられて医療機関にかかれない人が後を絶ちません。

 全国民に公的医療を保障する「国民皆保険」の中心的な仕組みである国保が機能不全に陥り、国民の命と健康を脅かしている事態を放置することは許されません。

差し押さえは過去最多

 厚生労働省が1月末に発表した2011年度の国保財政状況は、国保制度が“空洞化”している深刻な実態を浮き彫りにしました。

 滞納世帯は12年6月時点で約389万世帯と加入世帯の約2割を占めます。年間所得200万円の世帯に30万円を超える保険料を強いるなど、全国各地の高すぎる保険料が、住民の支払い能力の限界を超えていることは明らかです。

 “滞納”を理由に正規の保険証を取り上げ、有効期間が短い短期保険証や資格証明書が交付された世帯は、合計153万世帯以上にのぼっています。全国集計数では前年度より微減しましたが、交付世帯数を約4万増やした自治体もあります。保険料を払えない人への厳しい“制裁”が依然として横行していることを示すものです。

 資格証明書を発行されると、医療機関窓口での支払いは全額自己負担です。保険料を納付できない低所得者がとても負担できる金額ではありません。そのため具合が悪くても受診せずに、我慢に我慢を重ねた結果、手遅れとなって命を落とす人が相次ぐ異常事態を各地で生み出しています。自宅で死後発見される「孤独死」につながるケースも少なくありません。

 「国民皆保険」の原則を掘り崩し、生活困窮者の健康と生命を危機にさらす非情な保険証取り上げはただちに中止すべきです。

 重大なのは、保険料取り立てのための財産差し押さえ強化が住民を苦しめていることです。厚労省の強い指導で差し押さえを実施した自治体は初めて9割を突破し、全国の差し押さえ件数は前年より2万5千件以上も増え21万2千件余と過去最多となりました。命をつなぐ給与や年金などの生計費相当額を差し押さえる法律違反のやり方までまかりとおっています。営業のための自動車を差し押さえられ商売ができなくなるなどは本末転倒です。

 “国保の危機”を引き起こした最大の要因は、歴代政権が市区町村の国保財政への国庫負担を大幅に削減したことです。大企業の雇用破壊などによって急増した非正規労働者や無業者などが国保加入者の多数を占めるようになったことも国保の貧困化に拍車をかけています。国庫負担の引き上げ、国の責任による保険料引き下げなどを通じて国保制度を再生させる改革こそが急務です。

改革求める声を広げ

 社会保障の基本原則に「自助・自立」を掲げる安倍晋三政権は公的医療から国の責任の後退を狙っていますが、許されません。

 国民に負担増を強いる政治をやめさせ、国民の所得を増やし日本経済を健全な成長に乗せる改革が国保制度を抜本的に改革する道です。各地で取り組まれている制度改善を求める運動とあわせ、国保を安心できる公的医療保障制度として再建・拡充するたたかいの発展が急がれます。