主張
金融経済分析会合
消費税増税の断念は免れない
安倍晋三政権が内外の経済学者らを招いて開催する国際金融経済分析会合が始まり、初日のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授の世界経済の厳しい見通しや日本に消費税増税の見送りを求める発言が注目されました。会合は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け開かれたものですが、安倍政権が来年4月からの消費税増税の実施の是非を判断するために開いたという見方もあり、今後の議論に関心が集まります。日本経済は消費の落ち込みが長引き、経済が低迷しており、安倍政権に失政の責任と消費税増税中止の決断が迫られています。
長引く消費の落ち込み
「世界経済は低迷している。現在のタイミングで消費税を引き上げるべきではない」(スティグリッツ教授)―国際金融経済分析会合では、初日(16日)は1人、2日目(17日)は2人が発言しましたが、注目されたのは、消費税の増税延期を求める発言です。今後も22日の第3回会合で、消費税増税に消極的といわれるポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授が発言するなど、注目される報告が続きます。
本来、伊勢志摩サミットを前にサミットの議長を務める安倍首相が国際金融・経済情勢について意見を聞くために開いた会合で、日本の消費税増税が議論になるのは、国際的な金融・経済不安の高まりに加え、日本経済の低迷が深まっているからです。サミットが開かれる5月には、ことし1~3月期の国内総生産(GDP)統計が発表され、来年4月からの消費税増税についての判断が求められるとみられることからも、首相が会合を布石にしようとしているという見方も強まっています。
大企業減税と一体で消費税増税につながる食料品など一部品目の税率を据え置くなど、来年度予算案と税制改定案の国会審議が続いているさなかに、増税の見直しにもつながる動きが始まること自体、異常です。一昨年4月の消費税増税の悪影響が長引き、安倍政権の経済政策「アベノミクス」でも日本経済の立て直しが実現できていないからで、安倍首相は経済運営の破綻を認めるべきです。
消費税増税による消費の低迷が長引いて、日本経済は昨年10~12月期にもマイナス成長になりました。個人消費は前期比0・9%減と大きく落ち込んでいます。消費の低迷は企業の売り上げなどにも悪影響を及ぼしつつあります。春闘で大企業が賃上げを抑制していることも消費に悪影響を及ぼしています。一部の経済人や安倍首相の経済ブレーンからも、消費税増税見送りの声が上がっています。消費税増税断念が首相に迫られているのは明らかです。
増税延期ではなく中止を
来年4月からの消費税率の10%への引き上げは、もともと一昨年の5%から8%への増税に続いて昨年10月から実施予定だったのを、延期したものです。首相はリーマン・ショックや大震災のような事態が起きない限り増税するといい続けてきました。
消費が低迷するなかで合計5%もの増税を強行すれば、経済が破綻するのは明らかです。安倍首相は失政の責任をはっきり認め、消費税増税は延期ではなくきっぱり中止すべきです。消費税に頼らない政治への転換が求められます。