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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第72号(2015/8/28号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第72号(2015/8/28号/月2回発行)

2015-08-29 05:46

     少し前に配信番組「5分でわかるVガンダム」に出演しましたが、今日はまた別作品の配信番組に出演してきました。台本的なものもこちらで用意して、某作品の徹底解説みたいな内容になっています。10分ぐらいで全6回の予定です。MCがタレントさんで、以前TVでご一緒したことがあったので、久々のお仕事となりました。作品のことがストレートにお好きな感じで、話しやすかったです。  では、いってみましょうか。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.お蔵出し原稿


    最近のお仕事

    1.朝カル講座「アニメを読む」(東京)
     9月は次のようなラインナップです。10月以降の予定も決まりました。
     9月19日:『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』  10月以降は次のラインナップです。
     10月17日:『機動戦士Vガンダム』
     11月21日:『ゴルゴ13』
     12月19日:現代アニメのターニング・ポイント ポスト『涼宮ハルヒの憂鬱』の10年間
     https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/25963ded-7f56-7c17-5f4f-559a10b99a70

    2.NHK文化センター青山教室「アニメを読む」
     10月から新たにNHK文化センター青山教室で講座を担当することにしました。開講日は第二金曜日19:00~です。
     10月9日:『機動戦士ガンダム』歴史編
     11月13日:『機動戦士ガンダム』表現編
     12月18日:『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
     ※12月だけ第三金曜日です。
     https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html
     NHK文化センター青山教室では11月29日の原恵一監督トークの聞き役も務めます。
     https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1051651.html

    3.SBS学苑「アニメ映画を読む」
     10月25日10:30~のSBS学苑パルシェ校での講座は『耳をすませば』を取り上げます。こちらも公開から20年ですね。
     http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=169676

    4.『「アニメージュ」が見つめたTMSアニメ50年の軌跡』(徳間書店)
     同書で劇場版『ゴルゴ13』を題材に、出崎監督の演出術について考察しました。同書にはDVD『ゴルゴ13』も同梱されています。
     同書はライターの宮昌太朗さんが編集、デザインが内古閑智之さんです。
     http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198640026

    5.「あにつく2015」
     9月19日11:00から始まる「あにつく2015」で、神山健治監督の基調講演で聞き役を務めます。アニメと技術について「変わるところ/変わらないところ」をうかがう予定です。
     イベント全体の趣旨はこんな感じ。「これからのアニメ制作を目指す次世代、アニメファンの方々までを対象に、アニメを作る楽しさと、その手法として2D作画ソフトの運用や3Dアニメーション技術の紹介から、作品のメインキングとマーケットアピール、人材発掘、育成までを目的としたアニメ制作技術に関する総合イベントです。」
     3DCGアニメーター志望のひとたちが作った動画を講評するという「アニメータードラフト会議」はおもしろそうだなと思っています。朝カルでもお世話になっている演出・アニメーターの数井浩子さんも関わっているとか。
     http://www.too.com/atsuc2015/atsuc.html


    Q&A

     「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
     あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
     よろしくお願いします。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第4回『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』

     今回の原画集は、『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』。
     この本には、1979年に放映された『機動戦士ガンダム』のTVシリーズから「劇場版3部作」までの制作資料が収められている。ざっと36年前からのアニメ資料が見られるわけである。出版物として出ている原画集の中では、思いつく限り、もっとも古い作品内容のものを扱っている。
     現在では数多く発売されるようになってきた「原画集」という特殊なジャンルの本。その大部分は、放映・上映からそれほど時間を置かずに出るもので、この本のようなケースは稀である。
     以前に紹介した『新世界より』の原画集の記事でも触れたように、アニメの制作資料はその多くが保存されずに廃棄されていく。そうした中で、何十年もの時間を経てこの本が発売されたことは奇跡に近い。安彦良和さん、それに『機動戦士ガンダム』という作品の存在の大きさが産んだことだと思う。とてもありがたい。

     さて、本の内容としては、これまで触れてきた「原画集」とは、またいろいろと異なった1冊となっている。
     まず、「安彦良和」という人名が作品名より前に出ている点。これは、以前に紹介した『井上俊之 有頂天家族 原画集』とも同じだが、『ガンダム』の安彦さんと『有頂天家族』の井上さんではアニメーターとしての作品への関わり方が違う。
     『有頂天家族』での井上さんの役割は、一原画マンとしての参加である。その上で井上さん個人を特集した原画集が出版されたことには、改めて井上さんの存在の凄さを感じる。
     一方、『ガンダム』での安彦さんの役職はキャラクターデザイン、作画監督、そしてアニメーションディレクターと多岐に渡る。この本は、そうした安彦さんの『ガンダム』における実作業の一部を見ることによって、具体的にどのような役割を果たしたのかを知ることができる。

     それは、例えば、この本に多く掲載されている「レイアウト」の中に見ることができる。「レイアウト」という単語は一般的によく聞く言葉だが、アニメの作業工程においては独特の意味を持っている。アニメにおけるレイアウトとは、「フレーム」と呼ばれる何種類かの画面サイズを表した枠とフレーム内を十字に分割する線が印刷された紙(主に「レイアウト用紙」と呼ばれる)の中に、キャラクターと背景の描き分け、カメラワークの指示などを書き込んだものである。これは作画工程だけでなく、美術、撮影などの作業に必要な情報を伝えるものであり、画面全体の完成形がこの段階で形作られているとも言える重要なものである。
     そして、手描きアニメで、例えば右に2フレーム分カメラが動く場合、通常の2倍の長さの絵の素材が必要となる。「左右」「上下」「前後」と画面の動きをカメラワークで処理しようとした場合、手書きアニメでは基本的にカメラが動く分だけ、背景やセル画などに単純計算で倍々に大きな素材が必要となり、カメラワークの指示によってそれぞれ異なったフレームの指定が必要となる。
     実際に存在している対象物をカメラで撮影する実写作品とは違って、手描きアニメのカメラの動きは「紙の中に存在している」。存在しない世界を絵で表現している手描きアニメの世界では、「カメラが動くこと」は、実写の映像とは全く違った労力のかかる作業であり、映像表現としてのアニメ独特の面白さが表れる部分でもある。
     そういった視点でこの原画集を見ると、あえて大きな素材を用意することはせずに、通常の紙の大きさの中にフレーム指示を書き込むだけでカメラワークをつけているカットも多く、当時の現場の工夫が伝わってくるのが面白いところである。

     それは一例だが、つまり、この本では安彦さんのレイアウトをまとめて見ることによって、『ガンダム』の完成画面がどのようにしてアニメーターの立場でディレクションされていたのかが分かる作りになっているのだ。
     中には、安彦さんが描いたレイアウト上の原画(この本では「第一原画」と表記されているもの)を、第二原画として清書した板野一郎さんの原画も一部掲載されており、有名アニメーターの当時の作業工程を実際に見ることができる貴重な資料ともなっている。
     また、レイアウトやそこから派生する工程の作業、素材、分業の仕方などは、現在と『ガンダム』の時代では様々に変化しており、そうした歴史的な資料としての価値も感じられる。
     ただ、資料的価値を重要視した場合、「レイアウト」や「第一原画」といった後世に確立した単語で当時の仕事を解説したりしている部分は、巻末のインタビューで、当時日常的に使われていた単語とは微妙に違うという話題があるだけに、逆に少しややこしい気がしてしまった。

     以上いろいろ書いてきたが、一番の見どころは、やはり安彦良和さんの鉛筆画が見られるところだろう。どの原画集にも言えることだけれど、原画集の一番の見どころはアニメーター本人の描いた線がそのまま見られるところだ。安彦さんは現在では漫画家として活躍されているので、マンガ原稿で安彦さん自身の清書した絵を目にする機会は多いが、鉛筆で描かれた線を見られるのは楽しい。色鉛筆やマジックで影が付けられた安彦さんのアニメの絵は、他の原画集で見るものとはまた違った絵としての良さが感じられて良いです。

     この本の中にあるのは、安彦さんが『ガンダム』という作品に関わり続けた時間そのもの。最初と最後ではアムロやシャアたちの顔が成長しているように、安彦さんの絵もまた変化している。その成長をこの1冊の中で感じられるところに特別な体験を感じます。
     『ガンダム』という作品をアニメとして見直すも良し、最近のアニメの原画集と見比べて研究するも良し、安彦良和の絵を堪能するも良し。そして、読者にはそこにあるアニメーターの人生の記録から何かを見つけてほしい。この本だけでなく、これからも時代を超えて、いろいろな作品の原画集が世に出ていってほしいものである。

    (『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』/角川書店/3780円)
    http://www.kadokawa.co.jp/product/201009000582/


    お蔵出し原稿

     久々のお蔵出し原稿です。10年前に毎日中学生新聞で連載していた「空も飛べるはず」から韓国アニメ『ワンダフルデイズ』を取り上げた回を掲載します。
     「空も飛べるはず」は、アニメの中に出てくる「空を飛ぶシーン」を取り上げながら、話題のアニメを紹介する――という趣旨の連載でした。
     そして『ワンダフルデイズ』は2D+3D+ミニチュア特撮という尖ったスタイルで制作されたアニメで、ガイナックス配給というかたちで日本公開されました(アニメスタイルの記事)。エモーショナルに直球で盛り上げる作品で嫌いになれない魅力があったわけですが、本国では大コケしたとかしないとか。
     実は10年前に、たまたま宴席で隣り合った人(さほどアニメは見ない方)と「おもしろかった!」と意気投合したのですが、先日その方が朝カル講座に受講に見えて、久々に『ワンダフルデイズ』の話をしたのです。そんな思い出話込みでの再録です。

    空も飛べるはず『ワンダフルデイズ』

     
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